異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
181 / 184
第三部 暗殺者編

第181話 ダイナドー謝罪

しおりを挟む
ダイナドー 「ううぅっうスター! 痛い! 何をしている、早く、治癒師を呼べ!!」

だが侯爵の声に執事ウスターは反応しない。

ウスターは次の攻撃に警戒して周囲を伺っていたのだ。だが、攻撃はその一撃で終わりのようであった。

近くにクレイが居るのではないかと気配も探っていたのだが、気配はないようである…

ダイナドー 「ウスター!!」

ウスター 「はっ? は、はい、直ちに…」

すぐに治癒師が呼ばれ、千切れてしまった腕を繋ぎ合わせる。この治癒師は欠損の復元まではできないが、切断してしまった手足を接合する事は可能なレベルであったため、なんとか事なきを得たのだが…。

しかし、クレイが治癒師を用意しておけと書いたのは、ダイナドーのためを思ってなどではない。むしろお仕置きを長く続けるためである。

この日から、これが毎日続く事になったのだ。

今日は右腕であったが、翌日は左手の指三本であった。次の日は左膝、次の日は右耳と、撃たれる場所は毎回変わる。そして撃たれる時間も日によって変わる。

常に治癒師を傍に待機させ、その都度治療させているので大事にはなっていないが、ダイナドーはいつ撃たれるか、どこを撃たれるか、毎日怯えながら暮らすようになった。

これは、暗殺者に狙われる恐怖を味わってもらうというクレイの趣向である。

攻撃は、時に何も無い日もあれば、一日に二発三発攻撃がある日もあった。その気まぐれ具合が余計に恐怖感を増していった。

堪りかねた侯爵は屋敷を出て、別の場所へと身を隠したのであるが、それも無駄であった。リルディオンの補助を受けて、マップに目標人物をマーキングできるようになったからである。マークを着けた人間がどこに移動しても、マップを見れば居場所が一目瞭然なのであった。

そして、転移魔法陣を使い、弾丸を撃ち込むだけの簡単な仕事である。一度マークされたら逃げられない。

ダイナドーは全身に鎧を着てみたが、これも効果はなかった。出口側の転移魔法陣は鎧の内部に現れるからである。しかも弾丸は鎧の中で跳ね返り、撃たれた箇所の肉はジュース状になって、却って酷い結果になってしまった。

そしてついに、ダイナドーは音をあげる。ヴァレットのクレイの家に、早馬でダイナドーから詫び状が届いたのである。



  * * * *



ダイナドー侯爵からの詫び状は、暗殺者を雇った事を認める内容と、その事についての全面的な謝罪、そして賠償金を支払う、報復をやめてくれるなら何でもするという内容が書かれていた。

だが、クレイはお仕置きだけで済ませる気はなかった。宣言していたとおり、報復として苦しめた後、殺すつもりであった。あったのだが……

素直に罪を認めて謝られると、そこまでしなくてもいいかとも思ってしまう。

クレイ 「俺も甘いな…」

だが、自分が暗殺者に襲われた事を改めて思い返してみる。命を狙われたのである。自分が知らないところでも襲われていた事があったようだ(睡眠中の襲撃など)。相手は本気で自分を殺しに来ていたようだ。即死でおかしくないような攻撃や毒を、明確に殺す意図を持って仕掛けてきたのである。たまたまリルディオンの防御装備のお陰で全て回避できたが、普通人なら死んでいたところである。

それに……改めてダイナドー侯爵についての記録を引き出していて、ふと気になって、ダイナドー侯爵によって死んだ人間という検索キーワードを使ってみたところ、出てきた記録は目を覆うようなものだった。すべての記録を見たわけではないが、少し見ただけでも、侯爵の理不尽な命令によって死ぬことになった人間は多いようだ。さらに、死なないまでひどい目にあった人間、酷い目に合わされないために仕方なく従うしかなかった人間も、枚挙にいとまがないという状態であった。

さらには、言う事を聞かせたい者には、身内を人質にとったり身内に危害を加えると脅迫したりしていたケースも散見される。

クレイの暗殺には結局失敗していたが、暗殺がいよいよ難しいとなれば、今度はクレイの身の回りの者にターゲットが変更される可能性が高いという事である。

誘拐程度なら救い出す自信はあったが、もしいきなり暗殺という手段が周辺の人間に向けられたら……?

身内を人質にとって脅す。そんな卑劣な相手に対して、どう対処するか?

もちろん、完膚なきまでに叩き潰すしかないだろう。そして、自分に手を出したら、同じ目に遭うぞ? という事を周知徹底するしかない。コイツに手を出したら、絶対に報復される。絶対にヤバイ事になる。そう思わせる必要があるのだ。絶対にそれが起きると確信させる必要がある。そのためにも、やはり、ダイナドー侯爵は死んでもらう事にしようとクレイは結論付けたのであった。



  * * * *



再びダイナドー侯爵の居る部屋。王都ではない、ダイナドー侯爵が避難所として用意してあった別の街の別荘である。

その部屋のテーブルの上に一枚の紙がヒラリと落ちた。

いつのまにかテーブルの上にあった紙に気付き、広げて内容を読んだダイナドーは顔を顰めた。

その内容は、

『反省したようだからお仕置きは終了してやる。その代わり、速やかに爵位を誰かに譲り引退せよ。引き継ぎに一ヶ月だけ待ってやる』

というものであった。

もう身体を吹き飛ばされる恐怖に怯えなくて良くなったのは僥倖である。思わずホッとしたダイナドーであったが、引退を迫られるとは思っていなかった。

だが、その後の警告を見れば、従う以外の選択肢はなかった。従わなければ、お仕置きを再開する。それだけでなく、侯爵家そのものを消滅させる、と書かれていたのだ。

どうしてこうなった? ダイナドーは自問するが、答えは出ない。いや、自業自得なのであるが、得てしてこういう人間は、自分は間違っていないと本気で思い込んでいるモノなのである。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...