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その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。
第一話 突然の婚約破棄
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「キャメロン、きみとの婚約は破棄させてもらう」
レイモンドは幼馴染で許嫁であるキャメロンにそう言い放った。
「レイモンド様、突然何をおっしゃっているのですか? 訳をお聞かせください」
キャメロンは動揺している。前髪で完全に隠れた顔からは表情は読み取れないが、彼女の声は震えている。
「最高の女性と出会った。ただそれだけだ。きみのように地味で面白みのない令嬢では僕は駄目なんだ。今後の人生がつまらないものになってしまう」
レイモンドは言葉を詰まらせたキャメロンに構わずに淡々と続けた。
「許嫁と言ったって親が勝手に決めたことだ。きみも本意ではないだろう? きみと僕では絶望的に合わないんだよ。その点彼女は違う」
「その女性はわたくしとどのように違うのですか?」
「すべてだ。彼女は特別なんだ。きみと違って彼女との会話は本当に楽しい。彼女と話すと僕は幸せな気持ちになれるんだ。その長い前髪で表情がまったく見えないきみと違って彼女は表情がコロコロ変わる、笑顔がとても素敵なんだ。あぁ、彼女は本当に特別だ」
「そうですか。そのお言葉だけで彼女への愛が伝わってまいりました。レイモンド様は本当に彼女のことを良くわかっておいでなのですね」
「ああ、まだ知り合って日は浅いが彼女のことはなんだってわかるさ」
「彼女のお名前をうかがってもよろしいですか? わたくしその素敵な方がとても気になってまいりました」
「ベラだ。中央広場にある劇場で主演を務めている。僕はそこのオーナーと知り合いでね。何度か通ううちにベラと仲良くなったんだ。一緒に食事をし、彼女の魔法だって見せてもらったのだ。美人で歌も演技も上手く魔法も使える。あぁ、彼女は本当に特別だ」
(あらあら、本当に何も見ていない愚かな男……)
その女性の名前を聞いた瞬間、キャメロンの口元が笑っているように見えた。
「いつかその素敵な女性と会ってみたいですわ」
キャメロンとレイモンドの婚約はその数日後に正式に破棄された。
レイモンドは幼馴染で許嫁であるキャメロンにそう言い放った。
「レイモンド様、突然何をおっしゃっているのですか? 訳をお聞かせください」
キャメロンは動揺している。前髪で完全に隠れた顔からは表情は読み取れないが、彼女の声は震えている。
「最高の女性と出会った。ただそれだけだ。きみのように地味で面白みのない令嬢では僕は駄目なんだ。今後の人生がつまらないものになってしまう」
レイモンドは言葉を詰まらせたキャメロンに構わずに淡々と続けた。
「許嫁と言ったって親が勝手に決めたことだ。きみも本意ではないだろう? きみと僕では絶望的に合わないんだよ。その点彼女は違う」
「その女性はわたくしとどのように違うのですか?」
「すべてだ。彼女は特別なんだ。きみと違って彼女との会話は本当に楽しい。彼女と話すと僕は幸せな気持ちになれるんだ。その長い前髪で表情がまったく見えないきみと違って彼女は表情がコロコロ変わる、笑顔がとても素敵なんだ。あぁ、彼女は本当に特別だ」
「そうですか。そのお言葉だけで彼女への愛が伝わってまいりました。レイモンド様は本当に彼女のことを良くわかっておいでなのですね」
「ああ、まだ知り合って日は浅いが彼女のことはなんだってわかるさ」
「彼女のお名前をうかがってもよろしいですか? わたくしその素敵な方がとても気になってまいりました」
「ベラだ。中央広場にある劇場で主演を務めている。僕はそこのオーナーと知り合いでね。何度か通ううちにベラと仲良くなったんだ。一緒に食事をし、彼女の魔法だって見せてもらったのだ。美人で歌も演技も上手く魔法も使える。あぁ、彼女は本当に特別だ」
(あらあら、本当に何も見ていない愚かな男……)
その女性の名前を聞いた瞬間、キャメロンの口元が笑っているように見えた。
「いつかその素敵な女性と会ってみたいですわ」
キャメロンとレイモンドの婚約はその数日後に正式に破棄された。
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