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21話
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唯一、学校が私の安心できる場所だった。
マリアナやリザ、アンジェラたちと過ごす時間が私にとって唯一の癒しの時間。家族がいない私の安心できる場所。
なのに最近耳にする自分の悪い噂。
『あのこ、クーパー侯爵家の使用人らしいわよ』
『ミラー伯爵に捨てられたと聞いたわ』
『使用人の分際でダイガット様に言い寄っているらしいわ』
ううん、違います!言い寄ってなんかない!でも……親に捨てられたと言うのは一概に間違いではないかな。
ダイガットが王太子殿下と親しく、学園でも美少女と言われているフランソア様と仲が良いこともあり、何かと注目されている。
そしてどうしてなのか私に悪意が飛んでくる。
まぁ薄々理由はわかってるんだけど。フランソア様がポツリと呟いた話が噂として流れているのだろう。
と、友人が教えてくれた。
だってクーパー侯爵家に住んでいることは、親しい友人以外では彼女しか知らないもの。
はああ、あと2年間、私を放っておいてくれないかしら。そしたら黙ってフランソア様の前から去っていくのに。
結婚したとはいえ白い結婚。離縁すればお互い結婚はなかったことになる。
手すら握ったことがない関係なんだもの。
フランソア様とダイガットの方がよっぽど親しい仲なんだから!
腕を組んだりお胸がダイガットに当たっていたり。
手を繋いで歩くのはいつものことだし。
顔を突き合わせて楽しそうに過ごしているのを何度見たことか。
別にヤキモチなんて妬いていません。
でもたまに羨ましい。
継母に虐げられているからと守ってくれる幼馴染。
バァズやブラッド兄様も私が虐げられているのを守ろうとしてくれたこともあった。でも私の方から彼らから離れていった。
だってあの辛辣な継母は、二人に何をするかわからないもの。大切な二人だからこそ離れようと思った。
………ま、会わせてもらえないようになったから、離れてしまったのもあるけど。
ぼんやりと外の景色を見ながらマックスおじさんの運転する馬車に乗り、屋敷へと帰っていると、突然激しい振動を感じた。
「どうしたの?」
「馬車の車輪が緩んでしまいました」
珍しい。きちんと手入れされた侯爵家の馬車なのに。
馬車から降りた。
マックスおじさんが急いで馬車を修理してくれる店へとお願いに行くと言ったので私は快く馬車のそばで留守番することにした。
のんびりと道ゆく人々を見ながらマックスおじさんを待つことにした。
すると一台の馬車が止まった。
一応馬車は邪魔にならないように端によけて止められていた。
「何このみすぼらしい馬車。邪魔だわ」
聞いたことがある声。
見たことがある馬車。
「お義母様……」
私の声が耳に入った途端眉を顰め睨みつけられた。
「あら?どうしてあなたがわたくしのことをお義母様なんて呼ぶのかしら?」
あ……そうだった。
伯爵家から追い出された時『もう二度とわたくしのことを母と呼ばないでちょうだい、気持ち悪い』と言われたのだった。
「申し訳ございません」
「その馬車目障りだし邪魔だわ。さっさと退けなさい!」
「………」
いや、無理でしょう?壊れているのがわかっていて私一人で退けろ?無理だわ。
「何を黙っているの?返事もできないの?」
「……申し訳ありません。私一人ではとても無理なのでもう少しお待ちください」
「はっ?あなたが一人で押せばいいじゃない!」
いや、無理です。
「申し訳ありません、それは流石に…」
「さっさとおやりなさい!」
仕方なく馬車を押してみた。
馬は道の傍に繋がれていて重たい馬車の車輪1個外れかかっている。
できるわけないじゃない!
マリアナやリザ、アンジェラたちと過ごす時間が私にとって唯一の癒しの時間。家族がいない私の安心できる場所。
なのに最近耳にする自分の悪い噂。
『あのこ、クーパー侯爵家の使用人らしいわよ』
『ミラー伯爵に捨てられたと聞いたわ』
『使用人の分際でダイガット様に言い寄っているらしいわ』
ううん、違います!言い寄ってなんかない!でも……親に捨てられたと言うのは一概に間違いではないかな。
ダイガットが王太子殿下と親しく、学園でも美少女と言われているフランソア様と仲が良いこともあり、何かと注目されている。
そしてどうしてなのか私に悪意が飛んでくる。
まぁ薄々理由はわかってるんだけど。フランソア様がポツリと呟いた話が噂として流れているのだろう。
と、友人が教えてくれた。
だってクーパー侯爵家に住んでいることは、親しい友人以外では彼女しか知らないもの。
はああ、あと2年間、私を放っておいてくれないかしら。そしたら黙ってフランソア様の前から去っていくのに。
結婚したとはいえ白い結婚。離縁すればお互い結婚はなかったことになる。
手すら握ったことがない関係なんだもの。
フランソア様とダイガットの方がよっぽど親しい仲なんだから!
腕を組んだりお胸がダイガットに当たっていたり。
手を繋いで歩くのはいつものことだし。
顔を突き合わせて楽しそうに過ごしているのを何度見たことか。
別にヤキモチなんて妬いていません。
でもたまに羨ましい。
継母に虐げられているからと守ってくれる幼馴染。
バァズやブラッド兄様も私が虐げられているのを守ろうとしてくれたこともあった。でも私の方から彼らから離れていった。
だってあの辛辣な継母は、二人に何をするかわからないもの。大切な二人だからこそ離れようと思った。
………ま、会わせてもらえないようになったから、離れてしまったのもあるけど。
ぼんやりと外の景色を見ながらマックスおじさんの運転する馬車に乗り、屋敷へと帰っていると、突然激しい振動を感じた。
「どうしたの?」
「馬車の車輪が緩んでしまいました」
珍しい。きちんと手入れされた侯爵家の馬車なのに。
馬車から降りた。
マックスおじさんが急いで馬車を修理してくれる店へとお願いに行くと言ったので私は快く馬車のそばで留守番することにした。
のんびりと道ゆく人々を見ながらマックスおじさんを待つことにした。
すると一台の馬車が止まった。
一応馬車は邪魔にならないように端によけて止められていた。
「何このみすぼらしい馬車。邪魔だわ」
聞いたことがある声。
見たことがある馬車。
「お義母様……」
私の声が耳に入った途端眉を顰め睨みつけられた。
「あら?どうしてあなたがわたくしのことをお義母様なんて呼ぶのかしら?」
あ……そうだった。
伯爵家から追い出された時『もう二度とわたくしのことを母と呼ばないでちょうだい、気持ち悪い』と言われたのだった。
「申し訳ございません」
「その馬車目障りだし邪魔だわ。さっさと退けなさい!」
「………」
いや、無理でしょう?壊れているのがわかっていて私一人で退けろ?無理だわ。
「何を黙っているの?返事もできないの?」
「……申し訳ありません。私一人ではとても無理なのでもう少しお待ちください」
「はっ?あなたが一人で押せばいいじゃない!」
いや、無理です。
「申し訳ありません、それは流石に…」
「さっさとおやりなさい!」
仕方なく馬車を押してみた。
馬は道の傍に繋がれていて重たい馬車の車輪1個外れかかっている。
できるわけないじゃない!
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