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77話
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ああ、嫌だ。
なぜ放っておいてはくれないのかしら?
でもわたしは笑顔という仮面をしっかりと被っていた。
「お初にお目にかかります王女殿下」
わたしは綺麗なカーテシーを二人に披露する。
ーーうん、決まったわ!
「貴女がビアンカ様?ふうん」
ジロジロと舐め回すようにわたしを見つめるその目は少し小馬鹿にしているようだ。
もちろん気が付いていても顔にも態度にも出せない。
他国とはいえ王族。わたしが何か言える立場では無い。
ミリル様はクスクスと笑いながら、フェリックス様の腕に手を回し胸を彼の体にくっつけて甘えるように言った。
「フェリックス様、この方が貴方の親族だったかしら?」
「ああ、そうだ」
「ふうん、まぁ少し似ているかしら?」
またジロジロとわたしを見つめた。
「卒業したら婚約式があるの。貴女も親族だから招待して差しあげるわ。それまでにもう少し垢抜けていただかなければ、そのままでは、ねぇ?恥ずかしいと思わない、フェリックス様?」
「今夜社交界にデビューしたばかりだから仕方がないだろう?」
「でも、わたくしがデビューした時はもっと洗練されていたわ。こんな子が貴方の元恋人だったなんて知られたらわたくしが恥をかきそう」
「君の美しさには誰も敵わない」
「当たり前だわ」
なんの茶番を見せられているのだろう?
それでも何を言われても黙っているしかない。
フェリックス様まで一緒になって私を馬鹿にするなんて……
右手を強く握りしめて耐えるしかない。
早くこの場から二人が去ってほしい。
「フェリックス?久しぶりだな?ミリル殿下も元気だったか?」
アッシュの声が後ろから聞こえてきた。
「アッシュ?久しぶりね?」
ミリル様の声が突然変わった。
とても嬉しそうにアッシュに微笑んだ。
「うちの可愛いビアンカに何か用があった?」
「可愛いビアンカ?アッシュの知り合いなの?」
「俺の従妹だよ。今夜の舞踏会のパートナーなんだ」
「へぇ、アッシュがパートナーなの?」
「ああ、初めての舞踏会だからずっとそばに居てやると約束したんだ。なのに料理を取りに行ってしまっていたからビアンカを不安にさせてしまったみたいだな」
「あら?わたくしたちが何か不安なことをしたとでも言いたいの?」
「うん、もちろんそうだろ?大切なビアンカに二人して絡むなんて必要はないだろう?もう向こうに行ってもらってもいいかな?」
「貴方ってほんと失礼な方ね?」
アッシュの物言いにあまり怒っていないようで私は驚いた。
「ミリル殿下は、はっきり言わないとわからない人だからな」
え?そんなにはっきり言ったら大変なことになるのでは?
「貴方がわたくしの幼馴染でなかったら不敬で捕まえていたわ。フェリックス様、気分が悪いわ」
ミリルは私をキッと睨んで「行きましょう」とフェリックス様の腕を掴んで怒りながら去っていった。
フェリックス様は一度も私と目を合わせなかった。
「婚約式には喜んで出席させてもらうよ」
アッシュはわざと大きな声で二人の背中に向けて言った。
周囲は興味津々で見ていてザワっとした。
なのにアッシュは何もなかったかのように「これ美味いぞ、食べてみろ」と私の口に料理を運んできた。
思わずパクッと食べた。
「美味いだろう?」
「……うん」
「もっと食べろ。後で陛下に挨拶だ」
なぜ放っておいてはくれないのかしら?
でもわたしは笑顔という仮面をしっかりと被っていた。
「お初にお目にかかります王女殿下」
わたしは綺麗なカーテシーを二人に披露する。
ーーうん、決まったわ!
「貴女がビアンカ様?ふうん」
ジロジロと舐め回すようにわたしを見つめるその目は少し小馬鹿にしているようだ。
もちろん気が付いていても顔にも態度にも出せない。
他国とはいえ王族。わたしが何か言える立場では無い。
ミリル様はクスクスと笑いながら、フェリックス様の腕に手を回し胸を彼の体にくっつけて甘えるように言った。
「フェリックス様、この方が貴方の親族だったかしら?」
「ああ、そうだ」
「ふうん、まぁ少し似ているかしら?」
またジロジロとわたしを見つめた。
「卒業したら婚約式があるの。貴女も親族だから招待して差しあげるわ。それまでにもう少し垢抜けていただかなければ、そのままでは、ねぇ?恥ずかしいと思わない、フェリックス様?」
「今夜社交界にデビューしたばかりだから仕方がないだろう?」
「でも、わたくしがデビューした時はもっと洗練されていたわ。こんな子が貴方の元恋人だったなんて知られたらわたくしが恥をかきそう」
「君の美しさには誰も敵わない」
「当たり前だわ」
なんの茶番を見せられているのだろう?
それでも何を言われても黙っているしかない。
フェリックス様まで一緒になって私を馬鹿にするなんて……
右手を強く握りしめて耐えるしかない。
早くこの場から二人が去ってほしい。
「フェリックス?久しぶりだな?ミリル殿下も元気だったか?」
アッシュの声が後ろから聞こえてきた。
「アッシュ?久しぶりね?」
ミリル様の声が突然変わった。
とても嬉しそうにアッシュに微笑んだ。
「うちの可愛いビアンカに何か用があった?」
「可愛いビアンカ?アッシュの知り合いなの?」
「俺の従妹だよ。今夜の舞踏会のパートナーなんだ」
「へぇ、アッシュがパートナーなの?」
「ああ、初めての舞踏会だからずっとそばに居てやると約束したんだ。なのに料理を取りに行ってしまっていたからビアンカを不安にさせてしまったみたいだな」
「あら?わたくしたちが何か不安なことをしたとでも言いたいの?」
「うん、もちろんそうだろ?大切なビアンカに二人して絡むなんて必要はないだろう?もう向こうに行ってもらってもいいかな?」
「貴方ってほんと失礼な方ね?」
アッシュの物言いにあまり怒っていないようで私は驚いた。
「ミリル殿下は、はっきり言わないとわからない人だからな」
え?そんなにはっきり言ったら大変なことになるのでは?
「貴方がわたくしの幼馴染でなかったら不敬で捕まえていたわ。フェリックス様、気分が悪いわ」
ミリルは私をキッと睨んで「行きましょう」とフェリックス様の腕を掴んで怒りながら去っていった。
フェリックス様は一度も私と目を合わせなかった。
「婚約式には喜んで出席させてもらうよ」
アッシュはわざと大きな声で二人の背中に向けて言った。
周囲は興味津々で見ていてザワっとした。
なのにアッシュは何もなかったかのように「これ美味いぞ、食べてみろ」と私の口に料理を運んできた。
思わずパクッと食べた。
「美味いだろう?」
「……うん」
「もっと食べろ。後で陛下に挨拶だ」
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