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59話
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お父様が眠りについたのでわたし達は部屋から出て客間に案内された。
そこにはお兄様の奥様と8歳の娘であるアリーちゃんがいた。
奥様……マーシャリ様はわたしの事情を全て聞いているようだった。
ケビン君はマーシャリ様の膝の上に座りアリーちゃんはその横に座っていた。
わたしとキリアン君とエマ様は横に並んで座った。
「アイシャ様、初めまして。主人も急ぎこちらに向かっております、もう少しお待ちください。
そして、お義父様の体調……ありがとうございました。本人があまり治療を受けようとしなくて薬も最低限しか飲まないのでかなり衰弱しておりました。アイシャ様に会って少しでも生きたいと思ってくれたらと思っております」
「お姉ちゃんがお祖父様の手を握ったら、お祖父様の顔色が良くなったの、凄いよね?」
ケビン君が誇らしげにマーシャリ様に説明をしている姿が可愛くてわたしはにっこりと微笑んだ。
その横に座っているアリーちゃんはわたしに対して黙って見ている。
「………お家にある絵姿と同じ……お父様の妹のアイシャ様?……」
ぽつりとアリーちゃんがつぶやいた。
だから8歳のアリーちゃんに誤魔化さずに話した。
わかってもらえたのかははっきりと分からないけど、わたしがお兄様と再会した時に不審に思われない程度には理解してもらえた気はする。
マーシャリ様にわたしが死んでからの公爵家の話を聞いた。
お父様がどうやって過ごしてきたのか、お兄様が公爵家を継いでからの日々……
二人はわたしのせいで良心の呵責に苛まれて過ごしてきたのだ。
わたしのことなんか忘れて幸せに暮らしていると思っていた。
キリアン君に話は聞いてはいたけど、そこまで後悔の中で過ごしたなんて思っていなかった。
だってわたしが知っている二人はいつもわたしに背を向けてわたしのことなど見ていなかったから。
もちろんわたしが亡くなって後悔したとは聞いていたしその時は辛く悲しんでくれたと思う。
でももう10年以上前のことなのに、未だに後悔して苦しんでいたなんて……
「お父様とお兄様……生前にもっと話をしていればよかったのですね。わたしは誰にも頼ることができませんでした。自分から助けてと言えるはずなのにそれすらしようとしませんでした……」
「いいえ、アイシャ様は極限まで精神を追い詰められておりました。助けを求めるなんてできなかったと思います。それでも亡くなる前にキリアン様やエマ様が手を差し伸べられて心穏やかに過ごせた…それだけでも良かったと思います」
「はい、わたしはキリアン君達のおかげで人の優しさを知りました。今前世の記憶を取り戻してここに会いに来られたのもキリアン君のおかげです。わたしが消える前にみんなに会えて良かったと思います」
わたしの笑みをなんと言って返していいのか悩みながらも、マーシャリ様は答えた。
「アイシャ様、消えるのではなくてもう一人のアイシャ様と融合してそのまま一緒に生きていくのだと思いますわ、貴女の記憶と共に」
「……そうですね、アイシャちゃんの邪魔にならなければいいのですが」
わたしの辛い記憶がアイシャちゃんのこれからの人生の邪魔になりたくない。
だからわたしは消えてなくなりたい。
そしてわたしはアイシャちゃんの幸せを願っている。
◇ ◇ ◇
「帰ってきたみたいです」
使用人の動きが慌ただしくなった。
マーシャリ様達親子はお出迎えのため部屋を出た。
わたし達は三人残された。
「アイシャお姉ちゃん、大丈夫?」
少し緊張して顔色が悪いようだ。
「うん、大丈夫」
静かに出されたお茶をいただきながらお兄様を待った。
「アイシャ?」
その声はあまりにも時が経ち忘れていたはずの声だった。
「お兄様?」
そしてその横には……
「殿下?」
「違うよ、僕はもう王族ではないんだ。今は伯爵の地位を受けて国王の元で働かせてもらっているんだ」
「……申し訳ありません、わたしのせいでエリック様の人生を変えてしまったのでした。すみませんでした」
わたしはエリック殿下のその後を聞いていたのに、つい殿下と言ってしまった。
彼の人生を狂わせた張本人が目の前にいるのにエリック様は怒りもせずに会いにきてくれた。
わたしは深々と頭を下げ続けた。
「お願いだ、頭を上げてくれないか?」
「……はい」
「アイシャに会えるとは思わなかった。君が転生したことは聞いてはいたんだ。でも僕には会う資格はないと思っていた。でもルイズ殿に聞いてどうしても会いたくなったんだ」
「……わたしこそお会いできると思っておりませんでした」
「君にずっと謝りたかったんだ、僕が不甲斐ないせいで君を守ることができなかった。母上の悪意に君は傷つけられていたのに僕は知ろうともしなかった」
「それはわたしも同じです。
アイシャ、俺は妹の君を助けてあげられるはずだったのに全く君に関心すら示さなかった。すまない、一人で屋敷に居させて……俺がもっと屋敷に帰っていれば…アイシャとちゃんと会っていれば、あんな辛い日々を送らせなくてすんだのに…すまなかった」
二人からの謝罪に……
「もう過ぎたことです。わたしも誰にも助けを求めなかったのだから悪かったのです。それに死んだのはたまたま病気になったからです。誰かが何かをしたからではありません」
わたしはもう二人の申し訳なさそうに話す姿を見たくなかった。
「お兄様、エリック様、どうか昔の話は今は忘れて、出来ればお二人の今のお話を聞きたいです。お兄様の家族の会わせていただきました、とても幸せそうで安心しました。お父様も少しだけ体調が良くなったと思います。また顔を出させてもらう許可をいただきたいと思います。
そしてエリック様も今は幸せに過ごされていますか?」
「……今は妻と息子が二人いる。家族を大事にしているつもりだ」
「それは良かった……わたしはこの国に来て良かった……今やっとそう思えました」
そこにはお兄様の奥様と8歳の娘であるアリーちゃんがいた。
奥様……マーシャリ様はわたしの事情を全て聞いているようだった。
ケビン君はマーシャリ様の膝の上に座りアリーちゃんはその横に座っていた。
わたしとキリアン君とエマ様は横に並んで座った。
「アイシャ様、初めまして。主人も急ぎこちらに向かっております、もう少しお待ちください。
そして、お義父様の体調……ありがとうございました。本人があまり治療を受けようとしなくて薬も最低限しか飲まないのでかなり衰弱しておりました。アイシャ様に会って少しでも生きたいと思ってくれたらと思っております」
「お姉ちゃんがお祖父様の手を握ったら、お祖父様の顔色が良くなったの、凄いよね?」
ケビン君が誇らしげにマーシャリ様に説明をしている姿が可愛くてわたしはにっこりと微笑んだ。
その横に座っているアリーちゃんはわたしに対して黙って見ている。
「………お家にある絵姿と同じ……お父様の妹のアイシャ様?……」
ぽつりとアリーちゃんがつぶやいた。
だから8歳のアリーちゃんに誤魔化さずに話した。
わかってもらえたのかははっきりと分からないけど、わたしがお兄様と再会した時に不審に思われない程度には理解してもらえた気はする。
マーシャリ様にわたしが死んでからの公爵家の話を聞いた。
お父様がどうやって過ごしてきたのか、お兄様が公爵家を継いでからの日々……
二人はわたしのせいで良心の呵責に苛まれて過ごしてきたのだ。
わたしのことなんか忘れて幸せに暮らしていると思っていた。
キリアン君に話は聞いてはいたけど、そこまで後悔の中で過ごしたなんて思っていなかった。
だってわたしが知っている二人はいつもわたしに背を向けてわたしのことなど見ていなかったから。
もちろんわたしが亡くなって後悔したとは聞いていたしその時は辛く悲しんでくれたと思う。
でももう10年以上前のことなのに、未だに後悔して苦しんでいたなんて……
「お父様とお兄様……生前にもっと話をしていればよかったのですね。わたしは誰にも頼ることができませんでした。自分から助けてと言えるはずなのにそれすらしようとしませんでした……」
「いいえ、アイシャ様は極限まで精神を追い詰められておりました。助けを求めるなんてできなかったと思います。それでも亡くなる前にキリアン様やエマ様が手を差し伸べられて心穏やかに過ごせた…それだけでも良かったと思います」
「はい、わたしはキリアン君達のおかげで人の優しさを知りました。今前世の記憶を取り戻してここに会いに来られたのもキリアン君のおかげです。わたしが消える前にみんなに会えて良かったと思います」
わたしの笑みをなんと言って返していいのか悩みながらも、マーシャリ様は答えた。
「アイシャ様、消えるのではなくてもう一人のアイシャ様と融合してそのまま一緒に生きていくのだと思いますわ、貴女の記憶と共に」
「……そうですね、アイシャちゃんの邪魔にならなければいいのですが」
わたしの辛い記憶がアイシャちゃんのこれからの人生の邪魔になりたくない。
だからわたしは消えてなくなりたい。
そしてわたしはアイシャちゃんの幸せを願っている。
◇ ◇ ◇
「帰ってきたみたいです」
使用人の動きが慌ただしくなった。
マーシャリ様達親子はお出迎えのため部屋を出た。
わたし達は三人残された。
「アイシャお姉ちゃん、大丈夫?」
少し緊張して顔色が悪いようだ。
「うん、大丈夫」
静かに出されたお茶をいただきながらお兄様を待った。
「アイシャ?」
その声はあまりにも時が経ち忘れていたはずの声だった。
「お兄様?」
そしてその横には……
「殿下?」
「違うよ、僕はもう王族ではないんだ。今は伯爵の地位を受けて国王の元で働かせてもらっているんだ」
「……申し訳ありません、わたしのせいでエリック様の人生を変えてしまったのでした。すみませんでした」
わたしはエリック殿下のその後を聞いていたのに、つい殿下と言ってしまった。
彼の人生を狂わせた張本人が目の前にいるのにエリック様は怒りもせずに会いにきてくれた。
わたしは深々と頭を下げ続けた。
「お願いだ、頭を上げてくれないか?」
「……はい」
「アイシャに会えるとは思わなかった。君が転生したことは聞いてはいたんだ。でも僕には会う資格はないと思っていた。でもルイズ殿に聞いてどうしても会いたくなったんだ」
「……わたしこそお会いできると思っておりませんでした」
「君にずっと謝りたかったんだ、僕が不甲斐ないせいで君を守ることができなかった。母上の悪意に君は傷つけられていたのに僕は知ろうともしなかった」
「それはわたしも同じです。
アイシャ、俺は妹の君を助けてあげられるはずだったのに全く君に関心すら示さなかった。すまない、一人で屋敷に居させて……俺がもっと屋敷に帰っていれば…アイシャとちゃんと会っていれば、あんな辛い日々を送らせなくてすんだのに…すまなかった」
二人からの謝罪に……
「もう過ぎたことです。わたしも誰にも助けを求めなかったのだから悪かったのです。それに死んだのはたまたま病気になったからです。誰かが何かをしたからではありません」
わたしはもう二人の申し訳なさそうに話す姿を見たくなかった。
「お兄様、エリック様、どうか昔の話は今は忘れて、出来ればお二人の今のお話を聞きたいです。お兄様の家族の会わせていただきました、とても幸せそうで安心しました。お父様も少しだけ体調が良くなったと思います。また顔を出させてもらう許可をいただきたいと思います。
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