【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
60 / 97

60話

しおりを挟む
「それは良かった……わたしはこの国に来て良かった……今やっとそう思えました」

わたしが会いたいと思っていた人たちに出会うことが出来た。

ーーああ、わたしが転生したのはこの人達にもう一度出会い、心残りを全て終わらせるためだったのかしら?

キリアン君が優しくわたしに微笑んだ。

「アイシャお姉ちゃん、お姉ちゃんは消えたりしないよ。アイシャの中でアイシャとして過ごすんだ。アイシャはまだ眠っているけど必ず目覚めてアイシャお姉ちゃんと共に生きるはずなんだ」

「……そうね、そうかもしれない……わたしが目覚めたこの数ヶ月、新しい記憶がアイシャちゃんの中で幸せな記憶として残っていければ嬉しい」

わたしは実家でしばらく過ごさせてもらうことになった。
お父様はずっと領地に引きこもり一人で寂しく暮らしていたそうだ。
そして無理がたたり体を壊して病気になった。
衰弱していても医者にかかろうとしなかったらしい。

「アイシャはもっと辛い思いをしたんだ」
お父様はそう言って治療を拒み、お兄様は無理やりお父様を領地からこの屋敷に連れ帰ってきたらしい。

それなのにここでもまともに薬を飲まず、体が衰弱していったそうだ。



「お父様、お薬を飲みましょう」
わたしはベッドで横になっているお父様をそっと起こして薬を手渡した。

コップを受け取り薬を飲むところをジッと見つめる。
飲み終わるまで目を離さない。

「アイシャ、そんなに見つめなくても薬を飲むから大丈夫だ。お前が救ってくれたこの命を粗末にしたらまたお前の顔をまともに見ることが出来なくなる。
アイシャ、わたしはお前に背を向けて暮らし続けた。すまなかった、辛い思いをさせた、悲しい思いをさせた。どんなに後悔しても遅過ぎたんだ。だからわたしもお前と同じように苦しい思いをして死ぬしかないと思い込んでいた。
それもまたわたしの傲慢な考えだった。周りに心配かけて迷惑をかけて……」


「本当にそう思います。でもお父様のおかげでわたしもどんなに周りに辛い思いをさせたかわかりました」

お父様を見つめると、お父様もわたしを見つめ返した。

「生きることを諦めて死んでいくなんて……たとえ助からない命でも最後まで抗い続けなければいけなかったのですね、わたしは諦めることに慣れ過ぎていました……そんなわたしの性格が今のアイシャちゃんにも伝わって、アイシャちゃんも傷ついて眠り続けているんです」

「アイシャをそんな風に追い込んだのはわたしだ」

「………お父様……もうこうして過去を悔やむのはやめましょう。わたしはみんなにもう一度会えて嬉しかったです、あと少しわたしを…そばに居させてもらえませんか?」

「そうだな、もうすぐ国へ帰ってしまうんだ。少しでもアイシャとの時間を大切に過ごさないといけないな」

「……はい」

わたしはお父様とお兄様、そしてマーシャリ様、アリーちゃん、ケビン君と家族として数週間を過ごすことが出来た。

お父様の体も癒しの魔法のおかげで、順調に回復していき、庭を散歩することが出来るようになった。

ケビン君とわたしとアリーちゃんとお父様、四人で歩くのがとても楽しい。

綺麗なお花を見るのも青い空を見るのも、みんなで見るだけで鮮やかで生き生きとして違って見える。

最近はミケランもこっちの屋敷で過ごしている。

ケビン君と仲良しになっていつも寝る時はケビン君のベッドに潜り込んでいるみたい。
ケビン君もミケランが大好きで追いかけ回している。

少しだけ……ミケランが疲れて見えるんだけど、そこは気が付かなかったことにしている。

こうしてわたしの新しい幸せな時間が過ぎて行った。




◇ ◇ ◇

「アイシャお姉ちゃん、そろそろカイザ様との約束の日が近づいてきたよ」

「うん、帰らないといけないわね」

約束の二月が経った。

この国にずっといるわけにはいかない。
だってアイシャちゃんはルビラ王国の公爵令嬢なのだから。

リサ様とターナ様、それからクリス殿下の話はキリアン君、そしてカイザ様からの手紙で聞いていた。

そして……エレン夫人はまさかのバナッシユ国の前王妃だったなんて……

わたしにとって前王妃の思い出は………とても厳しい怖い人だった。
逆らうことなど出来ない、いつも怒られ鞭で打たれる人。

思い出すだけで体が震えてしまう。

エレン夫人としてルビラ王国でクリス殿下やターナ様の教育係として過ごしていたと聞いて驚いた。

それもアイシャちゃんを虐め貶めるために、二人にいろんなことを吹き込んでいたと聞いた。

わたしの中ではクリス殿下の記憶はアイシャちゃんの中でもしかないのであまりよくわからない。
でもターナちゃんのアイシャちゃんへ向ける感情は、蔑み、見下し、嫌悪しているように見えた。

実の姉にあそこまで酷く向ける感情を、アイシャちゃんは我慢して受け、耐えていたのかと思うとわたしまで辛くなる。

リサ様は……わたしを娘として受け入れることが難しかったのかもしれない。

アイシャちゃんに辛い思いをさせたのは前世であるわたし。
リサ様はわたしを娘として思えない感情がアイシャちゃんへの言葉の暴力、ああいう冷たい態度になってしまったのだろうか。

これからまたルビラ王国へ帰ることを考えると気が重い。
でもアイシャちゃんのためにも帰るしかない……のか。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...