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65話
しおりを挟むお父様とお母様、ターナとの関係は壊れてしまった。
いつか元には戻れなくても、分かり合える日がくるのかしら?
今はなぜか気持ちがスッキリとしている。
わたしは家族に捨てられた?
なのに……
もう涙すら出ない。
泣くことすらなくなってしまっていた。
それからの日々は、前世のアイシャと今のわたしの記憶が完全に混ざっていなくて混乱することも多かった。
「キリアン君」と呼んだり「キリアン様」と呼んだり。
「カイザ様」「お祖父様」混乱の中でわたしの記憶もだんだんと落ち着いてきた。
前世のアイシャの間は使えなかった魔法も再び使えるようになった。
キリアン様にお願いして魔法の使い方をしっかり教わった。
学園にも再び通い出した。
アリアとスピナがとても喜んでくれた。
毎日が楽しかった。
友達と笑い、喧嘩して、仲直り。
一緒に買い物に行ったりお泊まり会もした。
もう、お父様達のことが話題に出ることもない。
わたしの魔法もかなり上達してきた。
そして2年以上が過ぎてわたしは14歳になり、キリアン様は18歳になっていた。
「アイシャ、もう俺より君の方が癒しの魔法は上をいっている。教えることなんてもうないよ」
屋敷でいつものように教わっていると、キリアン様からそう言われた。
「え?でもまだまだできないことは多いわ」
「君はまだ14歳だ。他の魔法はゆっくりと進めるべきだよ」
わたしは確かに何かに追われるように焦っていた。
だってわたしには何もない。
親に捨てられてお祖父様しか肉親がいない。
だから少しでも優秀でいないとわたしの存在価値がない気がする。
そんなわたしの気持ちを知っているのかキリアン様が溜息をついた。
「アイシャは頑張りすぎなんだよ、君の魔力は膨大だ、そして全ての属性が使える。だからゆっくりと全てのレベルを上げていくべきなんだ。そうしないと君はこの国の道具として使われてしまうかもしれない」
「道具?」
「だって君より優れた魔術師はこの国にはいない。今はカイザ様という後ろ盾があるから何もされないけど、カイザ様にもしものことがあれば……国に君はいいように利用されるかもしれない。だから、君は力だけではなくて知識をしっかり持って何事にも対応できるようにならなければいけないんだ。もちろん、俺がずっとそばにいてあげられるなら、守ることもできるんだけどね」
「え?キリアン様はずっとはいないの?」
ーーわたしが目覚めてからは週に何日かは屋敷に顔を出して魔力の制御や魔法を教えてくれた。
よく怒られるしよく馬鹿にされからかわれた。
前世のアイシャの時の可愛いキリアン君ではなくて、いつもクールで少し怖いキリアン様だ。
でも頑張って出来るようになると、たくさん褒めてくれた。
一緒にお茶を飲むときは笑いながらわたしの話を聞いてくれる。
ロウトやメリッサとはまた違う。
でも勝手にずっとわたしの近くにいる人だと思っていた。
わたしにとって、「人がそばからいなくなる……」
それはとても恐怖で辛いもの。
突然の言葉にわたしの体は固まったと思ったら震え出した。
「ダメだ!アイシャ!!」
キリアン様が大きな声を出してわたしを抱きしめた。
「………あ…」
わたしは無意識に魔力暴走を起こそうとしていた。
わたしの周りの家具が倒れて、窓のガラスが割れていた。
キリアン様の体にガラスが……
「あっ……い、いや……ご、ご、ごめ……」
わたしは震える手でキリアン様の体に手を近づけた。
キリアン様の体に刺さったガラスを手で抜く。
私の手も血だらけだけど、キリアン様の背中からは大量の血が溢れてきた。
わたしはその傷に血だらけの手で震えながらもそっと魔力を流した。
「アイシャ、俺のことより君の傷が!」
「ご、ごめんなさい……わ、わたし……人を……傷つけた」
ーーこ、怖い、自分が怖かった。
ちょっと寂しい、辛いと思っただけなのに……
キリアン様は自分の怪我よりわたしを心配してくれる。
どうみても痛いはず……なのに。
「アイシャ様、大丈夫ですか?」
ロウトが慌てて部屋に入ってきた。
わたしとキリアン様の血だらけの様子を見て驚きそばに近づいてきた。
「アイシャ様、血が……」
「わたしは大丈夫、キリアン様の血を今止めているの」
深い傷から溢れ出る血を魔力で止めた。
するとキリアン様はすぐにわたしの手を魔力で治してくれた。
わたし達の癒しの力は自分には効かない。
だからお互いが治療しあった。
キリアン様は先にわたしをと言ってくれたけどどうみてもキリアン様の傷は深く重傷だった。
本当はわたしの手を治癒するのも辛かったと思う。
傷は治っても、わたしの暴走を止めるときにキリアン様は膨大な魔力を使っていた。
だから自分の身を守ることができなかった。
わたしの体を守って自分は怪我をしたのだ。
だから、魔力も底をついていたはず。
なのにわたしの怪我まで治してくれた。
こんなわたしに……
どうして……わたしは……
いつも人に迷惑をかけてしまうのだろう。
お父様もお母様もターナも……人生を狂わせてしまった。
そしてキリアン様にも酷い怪我を負わせてしまった。
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