【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
88 / 97

88話

しおりを挟む
せっかくキリアン様に会えたのに、また離れ離れになる。
それがとても寂しくて……

「アイシャ、もう一度だけ言わせて。俺と一緒に行かない?」

もう忘れようと思った恋なのに……

わたしは俯いたまま、何も言えずにいた。

「行きなさい」
お祖父様が部屋に入ってきて、わたしに優しく言った。

「お祖父様……」
突然、お祖父様が現れてわたしは驚いたけどキリアン様はニコッと笑った。
たぶんお祖父様が扉の外にいるのに気がついていたんだと思う。

「アイシャ、カイザ様から了承を得たんだから行こう!もうすぐ中等部は卒業だよね?
まだ勉強をしたいのならバナッシユ国で通えばいいよ。住むのもうちの母の屋敷でも君の向こうの父であるウィリアム様の屋敷でも好きなところを選んで!」

お祖父様のほうを見ると、お祖父様は少し苦笑いをした。
「アイシャ、イルマナからかなり高度な医術は学んだ。あとはキリアンが教えてくれるだろう。
そろそろお前の好きなことをしていいと思う。
周りに気を遣いながら生きる必要はない」

わたしは顔を上げることが出来なかった。俯いたまま、床にはたくさんの涙が落ちた。

わたしはこの国に生まれて幸せだった。
辛いこともあったけど、それ以上に前世では得られなかった友達もたくさんできたし、わたしのそばに居てくれる信頼できる人もたくさんいた。

「お祖父様、わたし………キリアン様についてバナッシユ国へ行ってもいいのですか?」

「たまにはわたしが会いにいくよ」

「絶対?会いにきてくれますか?」

「もちろんだ、お前もたまにはみんなに会いに帰ってきてくれるんだろう?」

「……はい」

「じゃあ、アイシャは俺がもらうね」

「悪いがキリアンにやるんじゃない。バナッシユ国へ行かせてあげるだけだ」

「違うよ、俺の婚約者として連れて帰るんだ。アイシャが15歳になるのを待っていたんだから!」

「え?ええ?」
キリアン様のどす黒い笑顔にわたしは少し後退りをしてしまった。

「カイザ様には頼んでいたんだ。アイシャには婚約者は作らないで欲しいと、俺が迎えに来るから」

「クソガキ、お前のためにアイシャに婚約者を作らなかったわけではない。
アイシャがまだお前のことを想っているのに無理矢理婚約者を作ったら可哀想だからだ」

「アイシャは俺のことちゃんと想ってくれてたんだ」

わたしは顔が真っ赤になってまた俯くしかなかった。

「クソガキ、アイシャを置いて帰ったくせに何を言ってるんだ」

「仕方ないでしょう?アイシャが幸せに暮らせるように向こうでいろいろ準備しないといけなかったんだから!もうこの国にアイシャを置いておきたくないしね。カイザ様はターナを壊してアイシャに尻拭いさせるし、ハイド様はリサ様の命乞いをするし、結局アイシャは、命を救うしかなかったんだ」


「………そのことは……アイシャ本当にすまなかった」

お祖父様は辛そうに何度も頭を下げた。

「お祖父様……ターナはお祖父様が治験を行わなくてもいずれは闇にのまれていました。それが早まっただけです……なんとかターナを助けることができた、もうそれだけで十分です」

「じゃあ、そういうことで、アイシャはもらって帰るから!」

「あ、あの、卒業まであとひと月あります。みんなときちんとお別れしてからバナッシユ国へ行きたいです」

「…………仕方ない……俺はさすがに向こうの仕事放ってきてるから一旦帰るね。アイシャすぐに迎えに来るからね」

キリアン様はそれから数日後バタバタとバナッシユ国へと帰国した。

ターナを助けるために無理やりルビラ王国に来てくれたから、もうこの国に留まるのは無理だったみたい。
それでも二月も居てくれた。
かなり無理をしていたみたい。

ーーーーー

卒業式までの間、学園に通うことはあまりない。
だからみんなで街に出かけたり、お茶会を開いたりして過ごした。

北の領地で仲良くなった友達も王都に遊びにきてくれた。
屋敷は広いので、男女10人が一人一部屋に泊まってもらった。

「アイシャが住んでた屋敷の何倍もここは広いのね」

「うわあ、凄いご馳走!」

「俺、騎士団で一緒に鍛錬やりたい!」
「俺も!」

「ふふ、ここにいる間は好き勝手にしてね、みんなに迷惑かけない程度で」

わたしはクスクス笑いながら言うと

「大丈夫、アイシャが困ることはしないさ」

平民も貴族の子も北の領地では仲がいい。
お祖父様は少し驚いていたけどみんな良い子なのですぐに使用人のみんなと仲良くなった。

魔力を待っている子には魔法の基礎を教えてくれたし、王都で社交デビューを来年する友達にはこちらでのマナーを教えた。

ひと月はあっという間に過ぎた。

「また会おう」

みんなと別れる時、涙が溢れた。

いつ次は会えるのだろう。
でもまた会いたい。
ううん、必ず会うと約束して別れた。

ーーーーー

卒業式。

わたしは最後になる制服に着替えた。

メリッサが「最後ですね、綺麗にしましょう」と言って綺麗に櫛で髪を梳かしてくれた。

何もせずに長い髪の毛を下ろしたままにしてもらった。

ブラウスの下には、キリアン様からもらったペンダントをこっそりと付けた。

ロウトは、「今日は馬車でお送りさせてもらいます」と言ってちゃっかりと馬車を用意していた。

「あら?最後だから二人で歩きたかったのに」

「いや、一人で最後にとぼとぼ帰るなんていやですよ」

ロウトは頭を横にぶるぶると振って、お断りされた。

卒業式の後、アリアとスピナ、クラスメイトと抱き合って泣いた。
みんなはこれから三年間一緒だけどわたしだけは離れてしまう。
今までのように会えなくなると思うと、寂しくて涙が止まらない。

ロウトの弟のヴィズは、ニヤッと笑った。

「俺、騎士になったらバナッシユ国で暮らすのも楽しそうだな」

「え?ついて来るの?」

「俺も一応アイシャの護衛だしね。兄貴もどうせついて行くんだろう?」

そう、ロウトとメリッサは夫婦でわたしについて来るとお祖父様に宣言した。

「いいのか?アイシャのためにそこまでしても?」

「わたし達にとってアイシャ様は大事な家族です。離れるなんて考えられません!ただし、給金は増しでお願いします」

ロウトはお祖父様に賃上げ要求をして、しっかり勝ち取っていた。

だからメリッサとロウトと離れることはない。
ヴィズは国外へ行ってみたかったらしく、わたしはダシでしかない。

寂しいけど、向こうでは賑やかな生活ができそうな予感。

そして、卒業パーティーの準備で一度屋敷に戻り急いでドレスアップを侍女たちが慌ただしく用意をしてくれた。

サラサラの長い髪を巻いてアップして髪飾りをつけてくれた。
化粧もドレスに負けないようにしっかりと。

ドレスはキリアン様が贈ってくれた。

わたしの瞳に合わせた淡いエメラルドグリーンのドレス。

フリルを減らして少し大人っぽいAラインのシンプルなドレス。

その代わり髪を華やかにして、大きめの金のネックレスを付けることにした。
いくつもの宝石が散りばめられていた。
エメラルドにダイヤ、ルビー、アメシスト、サファイア、色とりどりの宝石なのにシンプルなドレスのおかげで、とても合っていた。

「このネックレス、派手だと思ったけど、凄く合ってる気がするわ」

「さすがキリアン様ですね。こんな凄い宝石をプレゼントされて」
メリッサはわたしの姿を見ながら言った。
「今日一番美しいのはアイシャ様ですね」


「メリッサ、ありがとう。貴女の中ではわたしが一番ね」

そして馬車のところに行くと………

「キリアン様?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...