91 / 97
91話
しおりを挟む
バナッシユ国へ着いた。
お父様と屋敷の中に入ると頭の中の前世のアイシャの記憶がフラッシュバックされる。
悲しい記憶が蘇る。なのに不思議に心の中の悲しみや苦しみは消化されていった。
ルビラ王国を出る時も感じた。
わたしの中の家族へのわだかまりが消えていった。
そしてここでも。
魔力が体の中を巡り、それがとても心地良い。
ルビラ王国を出る時にわたしが出来ることをしてきた。
わたしやキリアン様がいなくなればこの国に災いや争いが起きた時に助ける人が減ってしまう。
だから、教会へ行きひと月毎日祈りを捧げてきた。
たくさんの魔法石に癒しの魔力を込めてきた、大好きな人たちを何かあった時守れるように。
わたしの力など微力なものだけど、大好きな人達が増えたルビラ王国に何かあったらわたしは全力で守りたい。でも遠い祖国に戻るまでには時間がかかるのでわたしは魔法石に力を貯めることにした。
お祖父様がわたしのこの遣り方を見て、災いに備えるには大事なことだと言って国全体で魔法の使える者達に魔法石に力を貯める活動を始めた。
キリアン様はそれを見てにっこりと笑った。
「アイシャは前もって準備してたんだね」
「わたしはこの国で多分一番魔力量があるから、少しでも役に立ちたいと思って。だからキリアン様がご心配してくださったことは起こってもなんとか対処できると思います」
「俺が心配?」
「はい『ビラ王国は君を大事にしなかった罰をこれから受けるかもね』と言われてたでしょう?罰など受けませんよ?だってわたしの愛する国だもの、キリアン様も何かあったら守ってくださるでしょう?」
「アイシャが守って欲しいと言うのならもちろん喜んで!」
「はい、ルビラ王国もバナッシユ国も守りたい。もちろんわたし一人では大したことはできないけどそれでもせっかくの魔法なんだもの。出来ることはしたいです」
「わかった、じゃあ、俺もバナッシユ国へ行くまでに少しでも協力するよ」
キリアン様はわたしを思ってルビラ王国での日々を怒ってくれている。
でも本当はこうして協力してくれる優しい人。
わたしはいざという時の準備をしてルビラ王国を去った。
そして今はお父様と屋敷の離れで暮らしている。
ケビン君とアリーちゃんは大きくなっていた。
アリーちゃんは12歳、ケビン君も9歳になっていた。
わたしのことは覚えていてくれた。わたしもこの屋敷に来て記憶が鮮明になったのでみんなと過ごす時に戸惑いはなかった。
バナッシユ国の高等部に入学してあと三年間は学生として過ごすことにした。
キリアン様との結婚は卒業と同時にすることになった。
「俺はアイシャと今日にでも籍を入れたい!」
とキリアン様が言ってくれたけど、心の準備も出来ていないので婚約者として過ごさせてもらうことにした。
キリアン様とは週末に、ゴードン様の屋敷へ行ってサラ様やエマ様にお会いする。
そして魔法の訓練をすることにした。
「ねえ、アイシャは陛下に会いたい?嫌なら断っておくよ」
キリアン様がなんでもないかのようにわたしにそんな爆弾発言をした。
ーー嫌なら断る?国王様にそんなこと出来るわけがないじゃない!
「い、いえ、お断りしないでください。ぜひお会いしたいです」
「アイシャは陛下のことを覚えているの?」
「ジャン様ですよね?亡くなる前はよくキリアン様のお家に来ていてわたしの看病をしてくださりました。医者を目指しておられましたよね?」
「そうだね、だからアイシャに会いたいんだって、断ってもしつこいんだよね」
「わたしもお会いしてみたいです」
「アイシャは俺のものだからね?愛してるんだから!陛下をあまり見ないように。わかった?」
「はい」
キリアン様は時々人前でも恥ずかしくてでも嬉しいことを言ってくれる。
キリアン様がわたしをいつも大好きだと言ってくれるたびにわたしの辛い過去は思い出へと変わっていく。
だからバナッシユ国に来てからのわたしは毎日が楽しい。
学校から屋敷に帰るとお父様がお茶の準備をして待っていてくださる。
アリーちゃんやケビン君、時には二人のお母様であるマーシャリ様もご一緒して楽しい時間を過ごした。
お兄様はやはり忙しい日々を送っていてあまり顔を合わせることはない。
ルビラ王国のお父様もいつも忙しそうだった。
でも違いは、お兄様はどんなに忙しくても子供達との時間を無理やり作っていた。
数分でも必ず会って二人を抱きしめた。
だから二人は父親をとても慕っていて大好きなのがわかる。
わたしの二人のお父様にはそれがなかった。
だから行き違い、相手の気持ちが見えなくなっていた。
離れた今ならルビラ王国のお父様のこともわかる。
器用にこなしているのに、肝心なところでハッキリと出来ないあやふやな態度、それが愛情だと感じたターナ、捨てられたと思ったわたし。
お父様の優しさはターナの心は満たされたけど、わたしにとっては偽物で残酷に感じた。
そしてバナッシユ国のお父様は、愛情すら表せない不器用な人なのだとわかった。それが今はとても愛おしく感じる。
今は二人に対してわだかまりはない。
ルビラ王国のお父様には伝えていないけど……
もうわたしのことは忘れて三人で幸せな家族でいて欲しいから。
お父様と屋敷の中に入ると頭の中の前世のアイシャの記憶がフラッシュバックされる。
悲しい記憶が蘇る。なのに不思議に心の中の悲しみや苦しみは消化されていった。
ルビラ王国を出る時も感じた。
わたしの中の家族へのわだかまりが消えていった。
そしてここでも。
魔力が体の中を巡り、それがとても心地良い。
ルビラ王国を出る時にわたしが出来ることをしてきた。
わたしやキリアン様がいなくなればこの国に災いや争いが起きた時に助ける人が減ってしまう。
だから、教会へ行きひと月毎日祈りを捧げてきた。
たくさんの魔法石に癒しの魔力を込めてきた、大好きな人たちを何かあった時守れるように。
わたしの力など微力なものだけど、大好きな人達が増えたルビラ王国に何かあったらわたしは全力で守りたい。でも遠い祖国に戻るまでには時間がかかるのでわたしは魔法石に力を貯めることにした。
お祖父様がわたしのこの遣り方を見て、災いに備えるには大事なことだと言って国全体で魔法の使える者達に魔法石に力を貯める活動を始めた。
キリアン様はそれを見てにっこりと笑った。
「アイシャは前もって準備してたんだね」
「わたしはこの国で多分一番魔力量があるから、少しでも役に立ちたいと思って。だからキリアン様がご心配してくださったことは起こってもなんとか対処できると思います」
「俺が心配?」
「はい『ビラ王国は君を大事にしなかった罰をこれから受けるかもね』と言われてたでしょう?罰など受けませんよ?だってわたしの愛する国だもの、キリアン様も何かあったら守ってくださるでしょう?」
「アイシャが守って欲しいと言うのならもちろん喜んで!」
「はい、ルビラ王国もバナッシユ国も守りたい。もちろんわたし一人では大したことはできないけどそれでもせっかくの魔法なんだもの。出来ることはしたいです」
「わかった、じゃあ、俺もバナッシユ国へ行くまでに少しでも協力するよ」
キリアン様はわたしを思ってルビラ王国での日々を怒ってくれている。
でも本当はこうして協力してくれる優しい人。
わたしはいざという時の準備をしてルビラ王国を去った。
そして今はお父様と屋敷の離れで暮らしている。
ケビン君とアリーちゃんは大きくなっていた。
アリーちゃんは12歳、ケビン君も9歳になっていた。
わたしのことは覚えていてくれた。わたしもこの屋敷に来て記憶が鮮明になったのでみんなと過ごす時に戸惑いはなかった。
バナッシユ国の高等部に入学してあと三年間は学生として過ごすことにした。
キリアン様との結婚は卒業と同時にすることになった。
「俺はアイシャと今日にでも籍を入れたい!」
とキリアン様が言ってくれたけど、心の準備も出来ていないので婚約者として過ごさせてもらうことにした。
キリアン様とは週末に、ゴードン様の屋敷へ行ってサラ様やエマ様にお会いする。
そして魔法の訓練をすることにした。
「ねえ、アイシャは陛下に会いたい?嫌なら断っておくよ」
キリアン様がなんでもないかのようにわたしにそんな爆弾発言をした。
ーー嫌なら断る?国王様にそんなこと出来るわけがないじゃない!
「い、いえ、お断りしないでください。ぜひお会いしたいです」
「アイシャは陛下のことを覚えているの?」
「ジャン様ですよね?亡くなる前はよくキリアン様のお家に来ていてわたしの看病をしてくださりました。医者を目指しておられましたよね?」
「そうだね、だからアイシャに会いたいんだって、断ってもしつこいんだよね」
「わたしもお会いしてみたいです」
「アイシャは俺のものだからね?愛してるんだから!陛下をあまり見ないように。わかった?」
「はい」
キリアン様は時々人前でも恥ずかしくてでも嬉しいことを言ってくれる。
キリアン様がわたしをいつも大好きだと言ってくれるたびにわたしの辛い過去は思い出へと変わっていく。
だからバナッシユ国に来てからのわたしは毎日が楽しい。
学校から屋敷に帰るとお父様がお茶の準備をして待っていてくださる。
アリーちゃんやケビン君、時には二人のお母様であるマーシャリ様もご一緒して楽しい時間を過ごした。
お兄様はやはり忙しい日々を送っていてあまり顔を合わせることはない。
ルビラ王国のお父様もいつも忙しそうだった。
でも違いは、お兄様はどんなに忙しくても子供達との時間を無理やり作っていた。
数分でも必ず会って二人を抱きしめた。
だから二人は父親をとても慕っていて大好きなのがわかる。
わたしの二人のお父様にはそれがなかった。
だから行き違い、相手の気持ちが見えなくなっていた。
離れた今ならルビラ王国のお父様のこともわかる。
器用にこなしているのに、肝心なところでハッキリと出来ないあやふやな態度、それが愛情だと感じたターナ、捨てられたと思ったわたし。
お父様の優しさはターナの心は満たされたけど、わたしにとっては偽物で残酷に感じた。
そしてバナッシユ国のお父様は、愛情すら表せない不器用な人なのだとわかった。それが今はとても愛おしく感じる。
今は二人に対してわだかまりはない。
ルビラ王国のお父様には伝えていないけど……
もうわたしのことは忘れて三人で幸せな家族でいて欲しいから。
303
あなたにおすすめの小説
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
【書籍化決定】愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる