【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。

【17】

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 いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

「さ、寒い」

 朝方の森の中は気温が下がり肌寒い。

 一応自分の身を守る保護魔法をかけてはいても体の温度調整まではできていない。
 ただ、わたしを追ってくる者はいなかった。

 ーーよかった。認識阻害魔法、初めてだったけど上手くいったみたい。

 もう真夜中。静かな森の中は少し怖いけどお腹をそっと触ると温かくて気持ちがほわっとして落ち着く。

 ふと気がつくとわたしの周りには小さな光。光がキラキラと動き回っている。

「妖精?」

 わたしの言葉に反応したのか周りに集まってきた。

 “イリアナ!”
 “迎えにきた!”
 “いこう!”

「迎えにきてくれたの?オーグは?オーグに会いたい」

 “……………”

 妖精達は黙ったまま返事をしてくれない。

 いつもあんなにおしゃべりで楽しそうにお話ししてくれるのに。

 ーー何がオーグにあったの?

 そう聞きたいけどわたしは妖精達に何も聞かずについて行くことにした。

 リンデの森にさえ行けばオーグに会える。

「妖精さん、わたしをリンデの森へ連れて行ってくれるかしら?」

 “うん”
 “早く行こう”

 立ち上がると妖精達がわたしの体に優しく触れてきた。

 そして…………


 ーーあっ………



「リンデの森?」

 “うん”
 “はやくはやく”

 妖精達に手を掴まれ引っ張られた。慌てて小走りでついて行くと、そこは懐かしいオーグと過ごした小屋があった。

 ーー帰ってきた。

「オーグ!!!」

 小屋の扉を叩いた。

 中から返事がない。

 まだ夜明け前だからオーグは寝ているのかしら?扉をそっと開けると中に入った。

 この小屋に鍵はない。リンデの森にオーグ以外の人は住んでいない。もちろんリンデの森に来る人間も滅多にいない。

「オーグ?」

 “こっち”
 “はやく”

 妖精達の後を追い奥の部屋に入ると……

「オーグ…………どうしたの?」

 ベッドに静かに横たわるオーグがいた。

 息はしている……だけど顔色は悪く呼吸が浅い。声をかけるのに反応がない。

 “オーグを助けて”
 “オーグ死んじゃう”
 “オーグ魔力がない”

 妖精達が心配でオーグのそばに近づいた。

「妖精さん達では助けられないの?」

 “ダメだった”
 “できないの”
 “イリアナの命助けるため自分の命捨てた”

 ーーえっ?

「オーグ……どういうことなの?」

 わたしはオーグの顔を見てつぶやいた。答えることなんて出来るわけがないのに。

 でもこの時間の巻き戻しはオーグなんだと確信した。わたしの命を助けてくれたオーグ。

 じゃあ今度はわたしが助ける番だよね?

 助けられるかわからないけど……魔力が強くなり、癒しの力が解放されたのはオーグのおかげ、そしてオーグを助けるためだったんだよね?

 オーグの顔にそっと触れる。

 どのくらい髭を剃っていなかったのだろう。

 熊さんのような顔、髪も伸び放題。

 死んだような寝顔。

 息をしていることに気が付かなければ動かないし死んでいるようにしか見えない。

 ーーオーグ、わたしを助けるために……ごめんなさい。親不孝な娘で。




 わたしとオーグはもちろん親子なので血が繋がっている。

 なのに王女?わたしは名ばかりの王女。

 わたしのお母様はマルワ国のお父様……国王陛下の婚約者だった。そして二人は結婚した。

 だけどお母様はオーグと愛し合っていて結婚から逃れるため駆け落ちをして逃げた。でも無理やり連れ戻され陛下と結婚をさせられた。
 お母様のお腹の中にはオーグとの子供であるわたしを妊娠していたことを知らずに。

 妊娠していることに気がついたのは連れ戻されすぐに結婚させられてからだったらしい。
 オーグの子なのか陛下の子なのか産まれるまでわからなかった。

 そして産まれたのはオーグの子であるわたしだった。わたしはお母様に似ていたけど、お父様には全く似ていなかった。

 それでも陛下は自分の子として一応籍を入れてくれた。醜聞になることを避けるためだけに。もちろん愛されることも大切にされることもなかった。

 だけど見殺しにされることもなく、わたしはなんとか生きてきた。

 体の弱い第一王女。癒しの力もほとんどない無能な王女として。

 お母様はマルワ国の聖女だった。そしてお父様とお母様の娘であるマルチナは聖女としての力を生まれながらに持って生まれてきた。

 お母様はわたしと接することを生まれた時から禁じられていた。わたしは乳母達に育てられお母様とお父様とお会いすることはあまりなかった。

 奥まったあまり人の来ない宮で数人のお世話係の人達とひっそりと暮らしてきた。

 無能の王女。

 それがわたしの立場。

 そんな見捨てられたわたしの楽しみは突然現れるオーグだった。オーグが父親だと知ったのもセデンに嫁ぐ前、妖精達が言った言葉だった。

 “イリアナにあえなくなるのさびしい”
 “オーグのむすめ”
 “しあわせになって”

 オーグのわたしを見る目がとても優しく会うと心がポカポカして幸せだったのはお父さんだったからなんだ。

 わたしは大好きなオーグがお父さんであることを嬉しく思ったはずなのに……

 なのに……ジョワンナ国に嫁いでセデンと暮らしていく中オーグのことをあまり思い出すことはなくなっていった。

 ーージョワンナ国でのわたしって……いつも頭の中に霧がかかったみたいでぼんやりとして記憶が朧気だった。

 あれは……なんだったのだろう。

 無能のわたしなのにセデンに大切にされていた。その幸せが一年くらい続いた……そしてアイリーン様が現れあっという間にわたしは……セデンに捨てられた……

 そして巻き戻ったわたしの前にアイリーン様が現れてからまた意識がぼんやりとして……死にたいと思った。

 あの声に……あの姿に……



 はっと我に返る。

 ーー今はオーグを助けなきゃ。

 アイリーン様のことは後で……



 ーーオーグ、わたしが助ける。









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