【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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離縁してあげますわ!

【7】

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 今日は迎えはきていない。初めから断っていた。

 いつ帰れるかわからないので王城内にある職員専用の乗合馬車に乗ることにした。

 この馬車は行き先さえ告げれば近くまで行ってくれる、特に家の近いわたしの場合、屋敷の前までほぼ送って貰える。

 歩いて帰っても大した距離ではないけど流石に疲れた。

 そろそろ眼鏡の度も合わなくなってきたみたい。眼鏡をかけているのにぼんやりとしている。作り直さないと……

 頭も体もフラフラしながらとりあえず馬車に乗り屋敷の前で降ろしてもらった。

「ありがとうございます」

 馬車を降り屋敷に入るとギャザが玄関に出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ」

「ただいま……すぐに湯浴みをしたいのだけどファラは居るかしら?」

「はい、そろそろアリア様が帰られる頃だろうと思い、湯の準備をして今は料理を作っております」

「ふふっ、すっごくお腹が空いているの。急いで湯浴みをするから食事の用意をお願いね?それから………」

 それから……言おうかと思ったのに、思わず言葉を飲み込んだ。
 でも……やっぱり聞こう。
「……ハンクス……は?」

 なんとなく聞きづらくて、それに彼を気にしていると思われたくなくて、どうしようか悩んだけど最後にやっと彼のことを口にした。

「ハンクス様はお仕事に行かれております。今夜は当直なので向こうのお屋敷に泊まられると思います」

 ギャザは申し訳なさそうに答えた。

 ーーよかった。

 ギャザの言葉に胸を撫で下ろした。今日は会わなくて済む。
 ギャザ!申し訳なくなんてないわ!ハンクスのことまだ忙し過ぎて考えられなかったの!これからゆっくり考えるわ!

「わかったわ」
 わたしは取り澄ました顔をして返事をした。

 公爵家の執事は数人いる。交代で屋敷に泊まり24時間体制で勤めている。
 だからハンクスも一月の三分の一は公爵家で過ごしていた。

 結婚して最初は寂しかったけど、すれ違いの日々で寂しいと言う気持ちはどこかに消え去ったようだ。

 でもだからと言ってわたしの部屋のベッドで抱き合っていたのは許せない。

 元々は夫婦の部屋だったわたしの寝室。確かにベッドには二人寝ても余裕はある。

 ハンクスの部屋のベッドはそれに比べると狭い。

 でも愛と性欲があればハンクスのベッドで十分事足りると思うのよね。

 わたしは美味しいファラの料理に舌鼓を打ちながら満腹になって幸せな気分で……あの忌々しいベッドで眠るのは気持ち悪いので、わたしの部屋にあるソファに毛布を持って行って眠った。

 体が小さくてよかった。体を丸めなくても十分ソファで気持ち良く眠れそうだわ。

 あの気持ち悪いとベッドを捨てるか、さっさと離縁するか……決めなくっちゃ。

 でも今は……ひたすら惰眠を貪りたい。

 まだ夕方にもなっていないのにわたしの瞼はとても重たくなってウトウトと眠ってしまった。




 ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎


「アリアは?」

「夜勤明けで疲れて眠られております」

 ギャザは俺を冷たい目で見ていた。

 この屋敷の当主は俺だぞ?

 確かにアリアの方が給金もいいし、ハンクス達もアリアのサッパリとした性格と明るさに俺以上に親しんで尽くしている。

 だけどハンクスは俺の幼い頃からの使用人でファラだって俺の世話をしてくれていたメイドだった。

 なのに二人は俺に対してなんて態度なんだ!

「ハンクス様の食事は本日は向こうにお泊まりだと思ってご用意しておりません」

 ファラはそう言うと台所の片付けに戻って行った。

 ギャザは「湯浴みの用意はできております」と言って自分達の部屋へと行ってしまった。

 俺が女を連れ込んだことをまだ根に待っている。

 アリアとの夫婦生活は破綻してる。互いにすれ違いもう修復不可能だ。

 その原因は全て俺にある。

 元々旦那様であるラーダン公爵に、アリアを落とすように命令されたことが始まりだった。


 財務省で事務官として働いていたアリア。彼女は学生の頃から優秀で第二王子であるユリウス殿下と首位を争っていたらしい。

 その話は陛下達の耳にとまり、アリアの噂は高位貴族や王城で働く官僚達にも知られていた。
 もちろんラーダン公爵の耳にも入っていた。

 そんな優秀なアリアは能力を認められすぐに昇進していき、気がつけば事務局長の二の腕となり補佐役にまでのぼり詰めていた。

 ラーダン様は、アリアと結婚して彼女から色々な情報を聞き出したかったらしい。

 特にこの国の予算の時に自領に対して優遇してもらうつもりだったし、おいしい情報を聞き出したかった。

 だけどアリアは俺と結婚する前もしてからも、絶対に仕事のことは話さない。

 共に食事をしていても仕事のことになると貝のように口を閉じて話そうとはしない。

 寝室で彼女に愛を囁いて気持ちよくさせても、仕事のことになると口を開かなくなる。

 いい加減仕事の話を振り続ける俺に対してアリアは不信感持つようになったようだった。

「ハンクスはわたしの仕事に興味があるのかしら?」

「えっ、いや、別に……」
 突然の質問に俺は口篭ってしまった。

「なぁ、そんなことより、今夜はいいだろう?」

 アリアに気持ちを逸らさせるように、アリアの唇にキスを落とした。
 そのまま何も言えずに朝まで過ごさせるため何度も丁寧にアリアを抱き潰した。

 そんな生活も一年半も経つと誤魔化せなくなってきた。
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