【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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離縁してあげますわ!

【18】

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 目が覚めたら外は真っ暗だった。

 薄暗い部屋の中は医務室だった。

 消毒の匂いと何もない部屋。

 わたしはあのまままた眠ってしまったみたい。

 殿下の優しい手が触れるたび、安心した。

 キョロキョロと辺りを見回す。だけど誰もいなかった。静かな病室、ベッド脇のサイドテーブルに水差しとコップが置いてあった。

 飲んでもいいかしら?

 震える手を伸ばしコップに水を注いでゴクゴク飲んだ。

 ーー美味しい……

 切れた口の中が沁みて痛いけど、それ以上に喉が水分を欲していた。

 王城内で公爵に襲われた。

 かなり大きな問題になっているのもわかってる。もうここで働くことはできない。
 貴族にとっても文官にとっても、襲われたわたしの醜聞は王城では過ごしにくい。

 どんなに今まで頑張ってきたとしても、仕事は認めてもらえても、醜聞のせいでわたしの立場は追われるだろう。

 被害者なんて関係ない。離縁しただけでも十分話題性があったのに、公爵に襲われた。それも幼い頃と今回、2回も。

 運良く未遂で終わったけど、未遂だとかそんなの世間は関係ない。面白おかしくわたしのことを好奇な目で見て愉しむだろうな。



 ぼんやりとそんなことを考えていると誰かが部屋に入ってきた。

「誰?」

 眼鏡をかけていないわたしは声が聞こえないと誰が入ってきたのかわからない。恐怖で一瞬体がこわばった。

「アリア?」

「殿下?」

「うん、僕だよ。ごめんな、助けるのが遅くなって。怖い思いをしたよね?」

「……悪いのは公爵であってあなたじゃない。あなたは何も悪いことなどしていないわ」

 ーー殿下には関係ないことだもの。偶然助けてくれた、それだけでも感謝しないといけないんだもの。

「王城内であんなことがあったんだ。僕たちの管理が行き届いていなかったからだ。公爵やその周りにいたもの達は皆今牢に入っている。一人も見逃すつもりはない。罪はしっかり償わせるつもりだ」

「そうですか………」

 ハンクスは最後、わたしを助けようとしてくれた。主人である公爵よりわたしを助けようとして、公爵を殴った。
 でもわたしが犯されようとしても最初は見て見ぬ振りをしたのも事実。あの時のことを思い出すと、気分が悪くて吐きそうになる。

「殿下……元夫のハンクスはわたしを助けようとしてくれました」

「うん、聞いたよ。でも君が襲われている時助けようとはしなかったんだろう?」

「確かにそうですが、主人に逆らうことはできなかったのだと思います。他の使用人達も……公爵という立場のお方に誰も逆らえませんわ……逆らえるのは王族くらいだわ」

「あの男には何かと問題があった。もう少し早く動いていればよかったのに、先に調査を急いで公爵を泳がせて自由にさせていたのが間違いだった」

「殿下が謝ることではありません………」

 それに、そんなしょんぼりした殿下を見ればいつものわたしなら喜んだかもしれないけど、今のわたしは逆に苛立ちを覚えた。

 ーーあなたには関係ないことじゃない。

 本当はそんな言葉が喉まで出かかっていた。

 助けてもらえたことは感謝しているのに、彼の今の同情的な姿を見ると、自分がとても惨めで、なんだか悔しい。

 これ以上喋ると殿下に八つ当たりしそうなわたしは押し黙ってしまった。

 それを不機嫌だと取られたようで「アリア?」と心配そうにわたしの顔を覗き込んできた。

 眼鏡がないわたしにも殿下の顔がよくわかった。

 とても辛そうな顔をしていた。

 心配かけたのに、助けてくれたのに、素直に感謝できないわたしは学生の頃のまま、まだ大人にすらなれていない。
 何故か殿下のそばにいると大人になった自分を見せつけたいのに学生の頃から成長できない自分しか見せられない。

 それが悔しい。

「アリア……君を傷つけたかった訳じゃないんだ。君のことが心配なんだ……あんな男に傷つけられてあんな男に命令されてハンクスは君を騙して結婚した……君を傷つけるあいつらを許せないし、それに一番は僕………だ。
 いつも君の感情を逆撫ですることばかり言って素直になれなかった」

 ーーえっ?

「アリア………僕の立場では君に愛を乞うことはできなかった……だけどずっと君だけを見てきた。婚約者がいて君に気持ちを伝えることはできなかった。解消してやっと君に気持ちを伝えられると思い、父上に君の優秀さをひたすら伝えて、なんとか認めてもらえそうだと思ったら……君は他の男と結婚してしまったんだ……」

 ーーわたしのことが好き……?絶対うそ!!

「はっ……信じられないって顔してる……一度も感じなかった?アリアって鈍感だから、こんなにわかりやすく君にいつも絡んでいたのに。
 元婚約者だって僕の気持ちに気がついていたくらいに。
 学生の時、僕の気持ちに気がついていた同級生も多かったと思うよ。今だって職場の人達、気がついてると思う」

わたしは首を横に振った。

「絶対、あの態度はわたしのことを嫌っていると思っていたわ!!」





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