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離縁してあげますわ!
【20】
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「アリアちゃん!そろそろ部屋から出てきて!夕飯だよ!」
扉をノックする寮母さん。
「おばちゃん、ありがとう」
結婚してからもたまに泊まりに来ていた寮。おばちゃんは『結婚しているのに大丈夫なのかい?』といつも心配して言ってくれていた。
『仕事が忙しくて屋敷に帰るのが大変なの』
『ちゃんと家に帰らないと旦那に浮気されてしまうよ』
『ハンクス……は、たぶん、大丈夫だと思う』
もうあの頃はハンクスとの関係もうまくいっていなかった。お互い形だけの夫婦だった。
話し合いすらしないでただお互い空気のような存在で。
ーーハンクス、まだ牢にいるのかしら?
悪いのは公爵だけなのに……
そうは思っても、彼らはわたしが怖がって助けを求めても助けてはくれなかった。
そのことを思い出すと、ちょっと許せなくて反省しろ!と思ってしまう。
今は職場に顔を出さず寮で仕事をしているけどこのままではいけないこともわかってる。
殿下のことはしばらく無視することに決めた。だって一度も恋愛対象として見ていなかった人に好きだの言われても正直困るとしか言えない。
おばちゃんが焼いたまだ出来立てのパンと野菜のたくさん入ったスープとチキンのソテーを美味しくいただく。
みんな顔見知りの女性ばかりなので居心地がとてもいい。
わたしの事件のことは知っていても誰も口に出したり嫌味なことを言ったりする人はここにはいない。
おかげで気を遣わずにここにいられる。
みんなで他愛無い話をしたり、笑い合ったりして、少しずつ心と身体があの事件を忘れていければと今は願うしかない。
そんな日々が2週間ほど過ぎたある日。
おばちゃんが「手紙が来ているよ」と手渡された。
差出人はギャザからだった。
まだ帰ってこない主人のハンクスのことを心配しているようだ。
あの事件から公爵家は今もゴタゴタしていて周囲は事情を把握することすらできないでいるみたい。
仕事もまだ休んでいるし、ハンクスがいないのなら顔を出してみよう。
ギャザやスレンなら大丈夫な気がする。ダメならファラと少し話をしよう。
粗方オズマンが運んできた仕事を終わらせておばちゃんに、オズマンが来たら渡して欲しいとお願いして出かける。
「アリアちゃん、久しぶりの外出なんだから気をつけるんだよ?」
「はい、慣れた場所なので大丈夫です。行ってきます」
うわっ、眩しい。
太陽の日差しを久しぶりに浴びた。
窓から外を眺めるのと、部屋から出て外を歩くのは全然違うわ。
とても気持ちがいい。
だけどやはり人とすれ違う時がたまに怖く感じる。今まで寮の建物の中で守られて生活していた。
はあ、やっぱり職場復帰は難しいかな……
「スレン、ただいま」
屋敷に着くとスレンが庭仕事をしていた。
「アリア様!」
数ヶ月ぶりに会うスレン、少し背も伸びていた。さすが13歳になって育ち盛りだわ。
「スレンの誕生日何もプレゼントあげられなかったから気になっていたの」
そう言うと持ってきた物を鞄から取り出した。
「はい、13歳の誕生日、遅くなったけどおめでとう」
スレンは学校に通っているので、筆箱とペン、インクのセットと懐中時計を贈ることにした。
仕事柄つい実用的な物を贈るのは仕方がないわよね。
「ありがとうございます」
スレンが嬉しそうにプレゼントの袋を開けて中身を取り出した。
プレゼントってあげる方もドキドキするんだよね。喜んでもらえるのか……
スレンが目をキラキラさせて「うわっ!」と喜んでくれたのは予想通り懐中時計だった。
まだ懐中時計は高価で庶民の子供には手が届かないため、周囲の子達も持っている子供は少ないはず。
「ありがとうございます!!!」
さっきの『ありがとう』とは声の高さも元気も全く違う、本当に嬉しそうな声だった。
「スレンはとてもよくお勉強もお屋敷の仕事も頑張ってるから、少しだけ奮発したの」
ーーそれにもうなかなか会うこともないから、こうしてプレゼントをあげることができないと思うの。
ハンクスとの離縁からわたしの生活は一変してしまった。
「ギャザとファラは?」
「アリア様が来られるからと屋敷の中でいろいろ準備をしています!早く中に入ってください!
アリア様の好きなマフィンをお母さんが焼いたんです」
「ほんとに?嬉しい!」
中に入るとギャザがすぐに顔を出して笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶりでございます。アリア様お帰りなさい」
「ええ、ただいま」
「アリア様!!」
ファラも台所から出てきてわたしに抱きついた。
「ファラ、久しぶりね?」
「良かったです、お元気そうで……とても心配しておりました」
「心配かけてごめんなさい。ハンクスのことも話しておきたかったの」
「思い出して辛いのでは?わたし達はハンクス様が捕まって何も連絡が来ないので心配しましたが、それ以上にアリア様のことが心配で手紙を出したのです。何も情報が入ってこないのでアリア様がどうされているのか全くわからなくて」
「ハンクスのことは今どうなっているのかよくわからないの。でも彼自身は主人の命令で動いただけだから……たぶん事件もだけど公爵自体に問題があったのだと思うわ……」
不正疑惑が元々公爵の周辺では噂があった。
官僚達とやたら親しくしていた。羽振の良い官僚も確かにいた。それなりの給料はもらっているのは知っている。わたしもそこそこいい収入を得て入るもの。
でもあの人たちの派手な使いっぷりは有名だった。絵画に宝石、パーティーなどもよく開いていたと聞いているもの。
地味で眼鏡のわたしはお呼ばれはされなかったけど。
たぶんハンクスは公爵家の執事だから色々取り調べを受けているのだと思う。公爵の裏の事情を把握しているだろうから。
ハンクス自身が関与していなければいいけど。
ファラやギャザにはそのことは話せない。だから、「公爵自身、あまり評判の良くない人だから、ついでに色々調べられているのだと思うわ」と誤魔化しつつ「ハンクスからはそのうち連絡が来ると思うから屋敷のことはお願いね」と言った。
久しぶりに三人と話していると話題は尽きずもう夕方になっていた。
ギャザが馬車で送ると言ってくれた。
不思議にギャザのことは怖くなくて鳥肌も立たないし、笑顔で話すことができた。
そう言えば殿下に対してもなんだかんだと彼には楯突いてばかりだけど、鳥肌も恐怖も感じなかった。
オズマンも指が触れるまでは平気だったわ。
もともと心を許していた人には平気なのかも。
わたしは事件から日にちが経ち少しだけ前に前進出来たのかもと嬉しく感じた。
扉をノックする寮母さん。
「おばちゃん、ありがとう」
結婚してからもたまに泊まりに来ていた寮。おばちゃんは『結婚しているのに大丈夫なのかい?』といつも心配して言ってくれていた。
『仕事が忙しくて屋敷に帰るのが大変なの』
『ちゃんと家に帰らないと旦那に浮気されてしまうよ』
『ハンクス……は、たぶん、大丈夫だと思う』
もうあの頃はハンクスとの関係もうまくいっていなかった。お互い形だけの夫婦だった。
話し合いすらしないでただお互い空気のような存在で。
ーーハンクス、まだ牢にいるのかしら?
悪いのは公爵だけなのに……
そうは思っても、彼らはわたしが怖がって助けを求めても助けてはくれなかった。
そのことを思い出すと、ちょっと許せなくて反省しろ!と思ってしまう。
今は職場に顔を出さず寮で仕事をしているけどこのままではいけないこともわかってる。
殿下のことはしばらく無視することに決めた。だって一度も恋愛対象として見ていなかった人に好きだの言われても正直困るとしか言えない。
おばちゃんが焼いたまだ出来立てのパンと野菜のたくさん入ったスープとチキンのソテーを美味しくいただく。
みんな顔見知りの女性ばかりなので居心地がとてもいい。
わたしの事件のことは知っていても誰も口に出したり嫌味なことを言ったりする人はここにはいない。
おかげで気を遣わずにここにいられる。
みんなで他愛無い話をしたり、笑い合ったりして、少しずつ心と身体があの事件を忘れていければと今は願うしかない。
そんな日々が2週間ほど過ぎたある日。
おばちゃんが「手紙が来ているよ」と手渡された。
差出人はギャザからだった。
まだ帰ってこない主人のハンクスのことを心配しているようだ。
あの事件から公爵家は今もゴタゴタしていて周囲は事情を把握することすらできないでいるみたい。
仕事もまだ休んでいるし、ハンクスがいないのなら顔を出してみよう。
ギャザやスレンなら大丈夫な気がする。ダメならファラと少し話をしよう。
粗方オズマンが運んできた仕事を終わらせておばちゃんに、オズマンが来たら渡して欲しいとお願いして出かける。
「アリアちゃん、久しぶりの外出なんだから気をつけるんだよ?」
「はい、慣れた場所なので大丈夫です。行ってきます」
うわっ、眩しい。
太陽の日差しを久しぶりに浴びた。
窓から外を眺めるのと、部屋から出て外を歩くのは全然違うわ。
とても気持ちがいい。
だけどやはり人とすれ違う時がたまに怖く感じる。今まで寮の建物の中で守られて生活していた。
はあ、やっぱり職場復帰は難しいかな……
「スレン、ただいま」
屋敷に着くとスレンが庭仕事をしていた。
「アリア様!」
数ヶ月ぶりに会うスレン、少し背も伸びていた。さすが13歳になって育ち盛りだわ。
「スレンの誕生日何もプレゼントあげられなかったから気になっていたの」
そう言うと持ってきた物を鞄から取り出した。
「はい、13歳の誕生日、遅くなったけどおめでとう」
スレンは学校に通っているので、筆箱とペン、インクのセットと懐中時計を贈ることにした。
仕事柄つい実用的な物を贈るのは仕方がないわよね。
「ありがとうございます」
スレンが嬉しそうにプレゼントの袋を開けて中身を取り出した。
プレゼントってあげる方もドキドキするんだよね。喜んでもらえるのか……
スレンが目をキラキラさせて「うわっ!」と喜んでくれたのは予想通り懐中時計だった。
まだ懐中時計は高価で庶民の子供には手が届かないため、周囲の子達も持っている子供は少ないはず。
「ありがとうございます!!!」
さっきの『ありがとう』とは声の高さも元気も全く違う、本当に嬉しそうな声だった。
「スレンはとてもよくお勉強もお屋敷の仕事も頑張ってるから、少しだけ奮発したの」
ーーそれにもうなかなか会うこともないから、こうしてプレゼントをあげることができないと思うの。
ハンクスとの離縁からわたしの生活は一変してしまった。
「ギャザとファラは?」
「アリア様が来られるからと屋敷の中でいろいろ準備をしています!早く中に入ってください!
アリア様の好きなマフィンをお母さんが焼いたんです」
「ほんとに?嬉しい!」
中に入るとギャザがすぐに顔を出して笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶりでございます。アリア様お帰りなさい」
「ええ、ただいま」
「アリア様!!」
ファラも台所から出てきてわたしに抱きついた。
「ファラ、久しぶりね?」
「良かったです、お元気そうで……とても心配しておりました」
「心配かけてごめんなさい。ハンクスのことも話しておきたかったの」
「思い出して辛いのでは?わたし達はハンクス様が捕まって何も連絡が来ないので心配しましたが、それ以上にアリア様のことが心配で手紙を出したのです。何も情報が入ってこないのでアリア様がどうされているのか全くわからなくて」
「ハンクスのことは今どうなっているのかよくわからないの。でも彼自身は主人の命令で動いただけだから……たぶん事件もだけど公爵自体に問題があったのだと思うわ……」
不正疑惑が元々公爵の周辺では噂があった。
官僚達とやたら親しくしていた。羽振の良い官僚も確かにいた。それなりの給料はもらっているのは知っている。わたしもそこそこいい収入を得て入るもの。
でもあの人たちの派手な使いっぷりは有名だった。絵画に宝石、パーティーなどもよく開いていたと聞いているもの。
地味で眼鏡のわたしはお呼ばれはされなかったけど。
たぶんハンクスは公爵家の執事だから色々取り調べを受けているのだと思う。公爵の裏の事情を把握しているだろうから。
ハンクス自身が関与していなければいいけど。
ファラやギャザにはそのことは話せない。だから、「公爵自身、あまり評判の良くない人だから、ついでに色々調べられているのだと思うわ」と誤魔化しつつ「ハンクスからはそのうち連絡が来ると思うから屋敷のことはお願いね」と言った。
久しぶりに三人と話していると話題は尽きずもう夕方になっていた。
ギャザが馬車で送ると言ってくれた。
不思議にギャザのことは怖くなくて鳥肌も立たないし、笑顔で話すことができた。
そう言えば殿下に対してもなんだかんだと彼には楯突いてばかりだけど、鳥肌も恐怖も感じなかった。
オズマンも指が触れるまでは平気だったわ。
もともと心を許していた人には平気なのかも。
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