【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

文字の大きさ
92 / 156
(まだ)離縁しません

後編 (前)

しおりを挟む
「フラン!そろそろ先生がいらっしゃる時間よ!」

「わかってる!アンナは本当にうるさいな」

 フランが外で騎士達と剣術の稽古をして屋敷に戻ろうとしない。

 もう!剣術も大事だけど算術や語学の勉強もしないと!

 7歳になったフランは今もまだ天使。

 いや、ますます旦那様とシェリーゼ様の良いところだけをもらってますます綺麗なお顔がさらに整って、もう今ではいろんなところから婚約して欲しいと釣書が届き始めてるいるわ!

 わたしの天使はさらに輝きを増してる。

 顔よし!頭を良し!剣術も良し!

 ただ……性格は……以前にもまして人前ではとても良し!

 なのにわたしにだけは以前よりも態度が酷くなった。

「フラン!残さず食べなさい」
「宿題はしたの?」
「早く寝ないと大きくならないわよ」

 わたしの言葉は一切聞かなくなった。

 無視するか「うるさいな」と言って去っていく。

 天使に嫌われた。

 理由は旦那様との離縁。

 結婚してもうすぐ3年になる。わたしと旦那様の契約が切れてしまう。

 旦那様はわたしが旦那様を『愛していない』と発言してから『君との結婚の契約は守るから安心してくれ』と言われた。

 その前に『フランの母親にならないか』と言われた話はわたしのその発言で消えてしまったみたい。

 だからと言って居心地の悪い暮らしだったわけでもなく、二人とは良い関係を築いてきたつもりなのに。

 わたしなりに旦那様にも心を寄せてきた。旦那様には気づいてもらえなかったけど。

 少し前のこと。
 フランが寝ついたと思い、旦那様と二人でそろそろ離縁をする時期になったと隣の部屋で話をしているところを目覚めてしまったフランに聞かれてしまった。

 もうそれからのフランはわたしを嫌い、冷たい目で見るようになった。

 悲しい。せっかく良い関係を築いて笑ってさよならするつもりだったのに。

 フランはわたしと話すらしようとしない。

 声をかけても無視か、言い返されてしまう。

 でも気持ちはわかる。だって、わたしとフランと旦那様はもう家族なんだもの。

 旦那様と夫婦としての関係はなくても家族として互いに尊重し合い、伯爵家のために二人で話し合い領地の運営にも力を入れてきた。

 フランに関しては一度も『お母様』とは呼ばれたことはないけど、わたしなりにフランに寄り添い、いっぱいの愛情を注いだつもりだった。

 でもやっぱり離縁することがわかってからはわたしのことを嫌っている。

 ううん、傷ついているんだと思う。

 わたしだって契約じゃなかったらこのままフランのそばにずっといたい。

 でも旦那様から言われた。

『縛りつけてすまなかった。本当はもっと早く解放してあげようと思っていたんだが、フランの顔を見るとつい契約終了するまでと思ってしまったんだ』

 ずっと伯爵家で暮らしたい。

 そうは思っていても、旦那様もそろそろ本気で妻を娶った方がいいと思う。

 わたしももう22歳。
 旦那様も28歳。

 お互い新しい相手を探すならそろそろギリギリのお年頃だもの。

 わたしだって白い結婚が正式に認められればこの結婚は戸籍上なかったことになる。

 フランのことは大好きだけど、わたしのこれからのことを考えると仕方がない。

 でもなんだか食欲がなくて「リナ、今日はわたし、夕食はいらないわ。一人でゆっくり過ごしたいの」とお願いした。

 今日のわたしの仕事は終わらせたし、フランはわたしの顔を見るのも嫌みたいですぐに逃げていなくなるし、旦那様は今日もお忙しそうで王城へ出勤したまま帰ってこないし。

 部屋で一人ウジウジとしながら過ごした。

 最近、マーシャが結婚したのでマーシャとも会えないでいるし、アルバードも卒業に向けて勉強が大変みたいで会いにきてくれない。

「わたし、これからどうしよう」

 ため息を吐いているとリナがお茶を淹れながら声をかけてきた。

「アンナ様は好きな人がいらっしゃるんですか?」

「好きな人?うーん、わたしの実家はいつも生活が大変だったの。なのに両親は何も考えず自分よりも大変な人のために尽くす人だったから自分がしっかりしなきゃって思ってて、人を好きになる暇もなかったわ」

 敢えて言うなら旦那様が初恋だったのよね。
 絶対内緒だけど。

 でも旦那様から契約結婚を申し込まれて、『好き』にはならないと決めていたから、彼に恋心は抱くことはなかったわ。

 でもフランにだけは物凄く愛情を注いだの。

 なのに……嫌われてしまった。もう死にたくなる。

 あの冷たい目でフランに見られるだけで食欲も無くなるし、元気も出ない。

 うっ、考えただけで涙が溢れて……

「リナ~、わたし、フランに嫌われたの……フランに会えなくなるの……うっ……どうしよう……」

 リズがわたしの体話を抱きしめてくれた。いつもお世話をしてくれるリズはわたしよりお姉さんで頼りになって優しくて大好きで……


「リ、リナ…とも会えなくなるんだ………」

 リナに抱きしめられて胸の中で泣いた。

 こんなに泣いたのはお父様とお母様が死んだと聞かされた時だけだった。
 葬儀の時も屋敷を売り払ってアルバードと二人っきりでこれからどうしようと頭を抱えていた時も泣くことはなかった。
 泣く暇なんてなかったもの。

 わたしがしっかりしなきゃ。アルバードのために働かなきゃって思ったから。叔父さん達はずっと家にいてくれていいと言ってくれたけど甘えるなんて出来なかった。

 両親の借金は叔父様にも迷惑をかけてしまっていた。保証人になってもらっていたし、不足分は叔父様がわたしに内緒で支払ってくれていた。

 アルバードは『どうして身内なんだから甘えないのか』って言ってたけど、十分すぎるくらい守ってもらったからもうこれ以上甘えられなかった。

 わたしはお姉ちゃんだからしっかりしないといけなかった。だけど学校を卒業して叔父様のところでお手伝いをしてお駄賃を貰っているくらいしか働いたことがないわたしにはどうすればいいのか分からなかった。

 マーシャが「兄様」のところで働きなさい。と言ってくれたから、兄様のところならと不思議に働けるかもしれないと思った。

 契約結婚は、とっても悩んだけど、フランが可愛すぎて、わたしの天使で、辛いことがあった日々を忘れさせてくれたフランのおかげで泣くこともなかった。

 なのに……

「わたし、フランとさよなら出来ない!わたし、旦那様に……離縁したらここの使用人になってもいいか頼んでみるわ!」

「へっ?そこですか?」

「だって……」






しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...