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出て行け!
幸せですよ。
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離縁したことを知った両親は私の行方を探し出して時々会いにきてくださる。
あれからジャックは子爵家の執事見習いとして働き出した。
ジャックは両親の付き添いで我が家にたまに一緒に顔を出す。息子とも仲良しになった。
「ジャック!あそぼ」
「なにしてあそびます?」
「きしさま、ごっこ!!」
「はい、では僕が悪い奴ですね?」
「うん!ぼく、かっこいいきしさまだね!」
息子はもう5歳になった。
もちろん元夫の子供。
離縁してしばらくして妊娠に気がついた。
わたしは家を出ると学生の頃から仲が良かった友人を頼り、伯爵家の領地へ向かった。
伯爵家の屋敷で少しだけお世話になる予定で、すぐに家を借りるつもりだったけど、妊娠がわかると友人が「ここで子供を産んでちょうだい」とお願いされた。
迷惑はかけたくないと断った。
でも、友人もその夫も学生のころからの友達で、二人とはとても仲が良かったため二人から押し切られる形で屋敷に滞在させてもらった。
そのあと産後の肥立が悪く、寝込むことになり二人にはとてもお世話になった。
その時のわたしと息子は友人の屋敷に隠され守られていた。両親はわたしの居場所がわからなくて必死で探し回っている時期でもあった。
なんとか一人で子供の世話ができるようになったのが息子が2歳になってからだった。
それから家を探し移り住んだ。
と言っても二人に屋敷の近くの家を当てがわれただけ。
「遠くで暮らすなんて絶対ダメよ!」
「君は目を離すと無理ばかりするからね」
そう言って屋敷の近くに真新しい家を建てて「ここで暮らしてね」と言われてしまった。
今も友人夫妻とは仲良くしてもらっている。
刺繍や裁縫が得意なわたしはお針子の仕事をしながらのんびりと子育てをしている。
友人の子供の服を縫ったり、屋敷の使用人達の服を縫ったりと、仕事もほぼ伯爵家から回ってきている。
生活に困らないのは両親がわたしのためにとお金を用意してくれていたから、親不孝なのに、ほんと感謝しかない。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
ある日のこと。
「おかあちゃん!」
「どうしたの?」
「ねぇ!あそこで、しらないおじちゃんがこっちを、みてるの」
「…………そう…知らない人には近づいてはダメよ?わかった?」
「………うん、でも、あのね、はなしかけちゃった」
私の顔を見て、ニコッと笑う息子。
「えっ?」
「だって、ずっとたってるんだ。さっきあめがふってたから、ぬれてるんだよ」
「そうね、通り雨が降ったものね」
「うん、しんばい、したの」
「そう」
「そしたらね、ありがとう、だいじょうぶって」
立っている男の人をチラチラと気にしながら息子が言った。
だけどわたしは……
「もう知らない人には話しかけないでね」
「………でも、おはなししたから、もうしらないひとじゃないよ?」
「そうね、でも、お母さんには知らない人だし、あなたに何かあったら心配だわ。さぁ、家の中に入って」
しゃがんで息子を抱っこする。
息子には気づかれないようにしていたけど、内心は焦っていた。
ーー早く、早く、家の中に入らなければ。
息子にはバレていないだろうけど、わたしの体は震えていた。
あの人が、なぜ?
家の扉をノックしてくることはなかった。
窓からそっと外を覗くも、彼はまだ立っている。
彼から怒りや悲憤のような感情は読み取れなかった。
話し合いもせずに離婚届だけを置いて出てきて6年。息子が生まれたのに一切知らせることはしなかった。
彼が……元夫がどうしているのかなんて考えたことも………ない…と言いたいのに……
いまだに消化できていない、この感情。
ジャックは我が家に顔を出しても、元夫のことは何も言わない。隣に住んでいたのに全く話に出てこない。
今頃わたし達の前に姿を現したのはなぜ?探し出したから?それとも以前から知っていたの?
再婚したのかしら?あの親子と暮らしているの?
雨に濡れた体は冷えているんだろう。
気にはなりながらも玄関の扉を開けて外に出ることはしなかった。
息子はもう外の男の人のことは忘れて家の中でのんびりとホットミルクを飲んで「おいしい」と嬉しそうにしていた。
しばらくしてふと外を見ると元夫の姿は見えなくなっていた。
ーーよかった。
わたしはホッとして厚手のカーテンも閉めて外が見えないようにして、いつものように友人に頼まれたクッションカバーに刺繍を施していた。
その刺繍の図案は自分で考えて作ったもの。友人から客室の雰囲気に合わせてクッションを置きたいと頼まれて一から考えることにしたもの。
女性のお客様とのお茶会の時に使う客室なので、明るい色をたくさん使いカラフルな花をあしらったものにした。
かなり細かな図案にしたので一枚仕上げるのにとても時間がかかり息子が寝た後も薄明かりの中、刺繍ばかりして元夫のことなど忘れていた。……ううん、忘れようとした。
あれからジャックは子爵家の執事見習いとして働き出した。
ジャックは両親の付き添いで我が家にたまに一緒に顔を出す。息子とも仲良しになった。
「ジャック!あそぼ」
「なにしてあそびます?」
「きしさま、ごっこ!!」
「はい、では僕が悪い奴ですね?」
「うん!ぼく、かっこいいきしさまだね!」
息子はもう5歳になった。
もちろん元夫の子供。
離縁してしばらくして妊娠に気がついた。
わたしは家を出ると学生の頃から仲が良かった友人を頼り、伯爵家の領地へ向かった。
伯爵家の屋敷で少しだけお世話になる予定で、すぐに家を借りるつもりだったけど、妊娠がわかると友人が「ここで子供を産んでちょうだい」とお願いされた。
迷惑はかけたくないと断った。
でも、友人もその夫も学生のころからの友達で、二人とはとても仲が良かったため二人から押し切られる形で屋敷に滞在させてもらった。
そのあと産後の肥立が悪く、寝込むことになり二人にはとてもお世話になった。
その時のわたしと息子は友人の屋敷に隠され守られていた。両親はわたしの居場所がわからなくて必死で探し回っている時期でもあった。
なんとか一人で子供の世話ができるようになったのが息子が2歳になってからだった。
それから家を探し移り住んだ。
と言っても二人に屋敷の近くの家を当てがわれただけ。
「遠くで暮らすなんて絶対ダメよ!」
「君は目を離すと無理ばかりするからね」
そう言って屋敷の近くに真新しい家を建てて「ここで暮らしてね」と言われてしまった。
今も友人夫妻とは仲良くしてもらっている。
刺繍や裁縫が得意なわたしはお針子の仕事をしながらのんびりと子育てをしている。
友人の子供の服を縫ったり、屋敷の使用人達の服を縫ったりと、仕事もほぼ伯爵家から回ってきている。
生活に困らないのは両親がわたしのためにとお金を用意してくれていたから、親不孝なのに、ほんと感謝しかない。
✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎
ある日のこと。
「おかあちゃん!」
「どうしたの?」
「ねぇ!あそこで、しらないおじちゃんがこっちを、みてるの」
「…………そう…知らない人には近づいてはダメよ?わかった?」
「………うん、でも、あのね、はなしかけちゃった」
私の顔を見て、ニコッと笑う息子。
「えっ?」
「だって、ずっとたってるんだ。さっきあめがふってたから、ぬれてるんだよ」
「そうね、通り雨が降ったものね」
「うん、しんばい、したの」
「そう」
「そしたらね、ありがとう、だいじょうぶって」
立っている男の人をチラチラと気にしながら息子が言った。
だけどわたしは……
「もう知らない人には話しかけないでね」
「………でも、おはなししたから、もうしらないひとじゃないよ?」
「そうね、でも、お母さんには知らない人だし、あなたに何かあったら心配だわ。さぁ、家の中に入って」
しゃがんで息子を抱っこする。
息子には気づかれないようにしていたけど、内心は焦っていた。
ーー早く、早く、家の中に入らなければ。
息子にはバレていないだろうけど、わたしの体は震えていた。
あの人が、なぜ?
家の扉をノックしてくることはなかった。
窓からそっと外を覗くも、彼はまだ立っている。
彼から怒りや悲憤のような感情は読み取れなかった。
話し合いもせずに離婚届だけを置いて出てきて6年。息子が生まれたのに一切知らせることはしなかった。
彼が……元夫がどうしているのかなんて考えたことも………ない…と言いたいのに……
いまだに消化できていない、この感情。
ジャックは我が家に顔を出しても、元夫のことは何も言わない。隣に住んでいたのに全く話に出てこない。
今頃わたし達の前に姿を現したのはなぜ?探し出したから?それとも以前から知っていたの?
再婚したのかしら?あの親子と暮らしているの?
雨に濡れた体は冷えているんだろう。
気にはなりながらも玄関の扉を開けて外に出ることはしなかった。
息子はもう外の男の人のことは忘れて家の中でのんびりとホットミルクを飲んで「おいしい」と嬉しそうにしていた。
しばらくしてふと外を見ると元夫の姿は見えなくなっていた。
ーーよかった。
わたしはホッとして厚手のカーテンも閉めて外が見えないようにして、いつものように友人に頼まれたクッションカバーに刺繍を施していた。
その刺繍の図案は自分で考えて作ったもの。友人から客室の雰囲気に合わせてクッションを置きたいと頼まれて一から考えることにしたもの。
女性のお客様とのお茶会の時に使う客室なので、明るい色をたくさん使いカラフルな花をあしらったものにした。
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