【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

文字の大きさ
151 / 156
出て行け!

もう一度。

しおりを挟む
 もう一度だけ。

 妻にどうしても会いたかった。

 あのあと家に帰ったら離婚届に妻の名が書かれて置いてあった。

 前々から用意されていなければこの少しの時間の間に用意はできない。

 俺は離婚届の紙を握りしめそのまままた外に出た。

 どこに行ったのか?実家に帰ったのか?

 ジャックの言葉が頭の中に浮かぶ。


『お嬢様はもう家には帰って来ません。それをお伝えしたくて待っていました』

「はっ?あいつは俺に惚れてるんだ。何があっても最後まで俺と添い遂げると教会で誓ったんだ」

『浮気男にいい加減愛想を尽かしたんです』



 そんな……俺は……浮気は……していない。

 何度も妻にそう言った。

 だけど、浮気……だよな。

 だって彼女のキスを受け入れて抱きしめて胸を揉んで……

 確かに妻に拒否られてから俺はイライラしていた。

 周りの女は俺に頼ってくる。俺に愛想よく話しかけて撓垂れ掛かって胸を俺の腕にくっ付けて……

 はあぁ、馬鹿だ。失ってやっと気がつくなんて……

『愛してる』その言葉さえ彼女に伝えればいいと思って簡単にそんな言葉を吐いていた。

 俺の行動は……妻を蔑ろにしていた。

 外に出て足が動かず立ち尽くした。

 どれくらい外に立っていたのか……

 今夜は夜勤だ。仕事に行かなければ……

 妻を探しに行く事は諦めて王城へ向かう。詰所に寄って制服に着替えていると休みだったはずのドゥールが現れた。

「何かようか?」

 俺の横に来て話しかけようとしたのでこちらから先に声をかけた。

「………嫁さんは?」

「…………何がだ?」

「あんないい嫁を蔑ろにしたんだ。反省してるか?」

「………してる」

「代わりに俺が今夜は夜勤をするからお前は嫁さんを探しに行って来い。離縁されても仕方ない。だけどちゃんと話してこい」

「………すまない」

 俺は何度も頭を下げた。

「今度一杯奢れよ」

「わかった」

 俺は着替えの途中だったが、すぐにまた着ていた服を着直した。



 王城を出て向かうのは妻の実家の子爵家。
 外は暗くなり始めた。もうそろそろみんな帰宅している時間だ。

 子爵家の義両親は帰宅しているだろうか。お二人はいつも忙しく外出していることが多い。特に義父は、王城で文官としても働いている。

 財務省の上官である義父はいつも部下を連れて歩いているところを見かける。

 妻の兄はさらに優秀で宰相の補佐官候補として働いていた。

 あの二人の前に立つと騎士をしているくせに萎縮してしまう。二人の圧はかなりのものだ。


 屋敷に着くと何故か騒がしか使用人たちが動き回っていた。

 俺の姿を見た使用人が「今更何故ここに?」と冷たい声が返ってきた。

「何かあったんですか?妻は?ここに居ますよね?」

 なんだか嫌な予感がした俺は使用人の肩を掴んで揺するように訊いた。

「あなたのせいでしょう?お嬢様の行方がわからないのは!!」

 吐き捨てるように言われた。

「妻がいない?行方がわからない?」

 俺のことなど、どうでもいいと去っていく使用人。

 フラフラなりながらも屋敷の扉を叩いた。

 妻はここにいない。ならばどこに?

 俺は妻の交友関係も知らない。


「よくものうのうと顔を出せたな!!!」

 扉が開いた瞬間、拳が俺の頬を打つ。

「お前が女と遊んでいる間、僕の妹は苦しんでいたんだ」

 義兄は俺に「帰れ!」と怒鳴ると部屋の中へと。

 俺は玄関で呆然とまた立っているしかない。

 妻がここにいなければどこに?


「お嬢様の行方がわからないんです。本来ならここに帰ってくると思っていたのに」

 ジャックが俺の背に向かって怒気を含めた声で話しかけてきた。

「妻はどこに?」

「それを聞きたくてあなたに会いにきたんです。知らないんですか?あなたの妻でしょう?どこに行ったのか、何を思っていたのか、あなたが一番そばにいたんじゃないんですか?」

「………俺は……」
















 ◆ ◆ ◆

【裏切られた私はあなたを捨てます。】

 新作始めました。

 いつも いいね、感想、エールありがとうございます。

 のんびりと更新になると思いますがよかったら読んでみてくださいね。
しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...