【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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出て行け!

もう二度と。

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 妻がいなくなった。

 どこを探してもいない。

 何度となく妻の実家にも足を運んだ。

 その度に追い返された。

「もう二度とここに顔を出さないでください」

 何度もそう言われた。

 それでも……妻がどこに行ったのかわからず探し回って……]もう探す場所はない。

 妻の学生時代の友人を探し出し、会えるように頼み込む。俺は平民で妻の友人達は貴族。

 なかなか会ってもらえない。面会の許可すらもらえない。

 そんな中やっとの思いで一人の妻の友人に会うことができた。

「あなたが彼女の元夫?確か王宮騎士よね?殿下の覚えもあると訊いているわ」
 ジロリと俺を睨む。
「………はぁ」

 俺は伯爵夫人である妻の友人の高圧的な物言いにたじろぐ。

 女性なのに貴族とはこんなに強烈で手ごわく一筋縄ではいかないとは思わなかった。

 何を訊いても「妻のことなのに貴方はそんなことも知らないの?」と冷めた目で俺に問い返す。

 知らないから訊いているんだ。そう言いたいけど、貴族様には何も言えない。

 妻は貴族だったのに、俺のために平民になり、俺と同じ目線で生活をしてくれた。こんな酷い態度を取る妻ではなかった。
 優しくていつも笑って、とても可愛らしい愛情あふれる人だった。

 使用人くらい俺の稼ぎなら雇えた。馬車だって小さな屋敷だって買えた。

 でも俺は平民の暮らしが好きだった。金は貧しい人のために使っていた。

 ただそれが困っている母子家庭に主に使っていたので周りには女好きだとか浮気をしているだとか誤解をされた。

 俺は自分が苦労してきた。母親の大変さも見てきた。だからつい母子家庭に手を差し伸べたくなる。

 行き過ぎた行動だった。

 妻を大切にしてこそ、他人にも優しくできるのに。妻を蔑ろにして他人に優しくしていた。

 そして妻の友人からは「諦めなさい。貴方は捨てられたの」そう言ってなんの質問にも答えてもらえず追い返された。

 それからも仕事をしながら妻を探した。

 俺は親切心で母子家庭や困っている人に手を差し伸べるのはやめた。

 本当に必要なら街にある教会に駆け込めばいい。俺はそこに寄付をすることにした。

 それ以上のことはしないと決めた。妻がいなくなり家に何人かの女が「寂しいでしょう?」と体を擦り寄せてきたが全て追い返した。

 今更だが、やっぱり愛しているのは妻だけ。

 俺はまだ離婚届は提出していない。

 妻を見つけ出し、せめて話し合ってからきちんと慰謝料を払って離婚しようと思っていた。

 本当はもう一度……やり直したいから。







 そんなある日、職場の同僚が妻に似た女を遠い街で見たと言ってきた。

「妻が?」

「ここから2日ほど行ったところにあるハバード領だ」

「ああ、あそこはそれなりに栄えた街があって活気のあるところだよね?」

 ドゥールが俺の隣にいて話に入ってきた。

「ハバード伯爵夫妻って確かお前の嫁と同級生じゃなかったかな?」

 男爵家子息のドゥールは学年は違うが同じ学園を卒業している。

「じゃあもしかして……妻は友人を頼ってそこで暮らしているのか?」

「俺が見たお前の嫁さんは街を子供と歩いていたぞ」

「……子供?再婚したのか……」

「お前、まだ離婚届出していないだろう?」

「ああ、そうだった……もう6年も経つのに……まだそのままにしてある」

「じゃあ再婚はできないだろう。内縁の妻?なんじゃないか。或いはお前の子供だったりして」
 ドゥールがとんでもないことを言った。

「俺の子供かもしれない?」

「ばぁか!想像だ!本気にすんな」







 俺は長期休暇を願い出た。

 この6年間、妻探し以外はひたすら働いた。何もすることがない俺には働いて金を貯めるしかなかった。

 妻に少しでも慰謝料を多く払いたい。本当は元に戻りたいが、その言葉は口に出してはいけない。

 だから妻のために。そう思うことで苦痛な毎日をなんとか誤魔化して過ごすことしか出来なかった。


 その金を持ってハバード領にある伯爵邸へとやってきた。

 門番に伯爵に会えないかと身分証を見せて声をかけた。

『王宮騎士』という身分はしっかりと保証されているため信用がある。

 しかし忙しいと断られた。

 それでも何か少しでも妻の情報が知りたくて屋敷周辺を歩いて回った。

 そんな時、伯爵邸の隣に建つ小さな家から男の子が出てくるのをたまたま見て俺は固まった。


 俺によく似た男の子。

 もう二度と妻に会えないと思っていたのに、……やっと見つけた妻の居場所……俺の子供を産んでいたのか?

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