152 / 156
出て行け!
もう二度と。
しおりを挟む
妻がいなくなった。
どこを探してもいない。
何度となく妻の実家にも足を運んだ。
その度に追い返された。
「もう二度とここに顔を出さないでください」
何度もそう言われた。
それでも……妻がどこに行ったのかわからず探し回って……]もう探す場所はない。
妻の学生時代の友人を探し出し、会えるように頼み込む。俺は平民で妻の友人達は貴族。
なかなか会ってもらえない。面会の許可すらもらえない。
そんな中やっとの思いで一人の妻の友人に会うことができた。
「あなたが彼女の元夫?確か王宮騎士よね?殿下の覚えもあると訊いているわ」
ジロリと俺を睨む。
「………はぁ」
俺は伯爵夫人である妻の友人の高圧的な物言いにたじろぐ。
女性なのに貴族とはこんなに強烈で手ごわく一筋縄ではいかないとは思わなかった。
何を訊いても「妻のことなのに貴方はそんなことも知らないの?」と冷めた目で俺に問い返す。
知らないから訊いているんだ。そう言いたいけど、貴族様には何も言えない。
妻は貴族だったのに、俺のために平民になり、俺と同じ目線で生活をしてくれた。こんな酷い態度を取る妻ではなかった。
優しくていつも笑って、とても可愛らしい愛情あふれる人だった。
使用人くらい俺の稼ぎなら雇えた。馬車だって小さな屋敷だって買えた。
でも俺は平民の暮らしが好きだった。金は貧しい人のために使っていた。
ただそれが困っている母子家庭に主に使っていたので周りには女好きだとか浮気をしているだとか誤解をされた。
俺は自分が苦労してきた。母親の大変さも見てきた。だからつい母子家庭に手を差し伸べたくなる。
行き過ぎた行動だった。
妻を大切にしてこそ、他人にも優しくできるのに。妻を蔑ろにして他人に優しくしていた。
そして妻の友人からは「諦めなさい。貴方は捨てられたの」そう言ってなんの質問にも答えてもらえず追い返された。
それからも仕事をしながら妻を探した。
俺は親切心で母子家庭や困っている人に手を差し伸べるのはやめた。
本当に必要なら街にある教会に駆け込めばいい。俺はそこに寄付をすることにした。
それ以上のことはしないと決めた。妻がいなくなり家に何人かの女が「寂しいでしょう?」と体を擦り寄せてきたが全て追い返した。
今更だが、やっぱり愛しているのは妻だけ。
俺はまだ離婚届は提出していない。
妻を見つけ出し、せめて話し合ってからきちんと慰謝料を払って離婚しようと思っていた。
本当はもう一度……やり直したいから。
そんなある日、職場の同僚が妻に似た女を遠い街で見たと言ってきた。
「妻が?」
「ここから2日ほど行ったところにあるハバード領だ」
「ああ、あそこはそれなりに栄えた街があって活気のあるところだよね?」
ドゥールが俺の隣にいて話に入ってきた。
「ハバード伯爵夫妻って確かお前の嫁と同級生じゃなかったかな?」
男爵家子息のドゥールは学年は違うが同じ学園を卒業している。
「じゃあもしかして……妻は友人を頼ってそこで暮らしているのか?」
「俺が見たお前の嫁さんは街を子供と歩いていたぞ」
「……子供?再婚したのか……」
「お前、まだ離婚届出していないだろう?」
「ああ、そうだった……もう6年も経つのに……まだそのままにしてある」
「じゃあ再婚はできないだろう。内縁の妻?なんじゃないか。或いはお前の子供だったりして」
ドゥールがとんでもないことを言った。
「俺の子供かもしれない?」
「ばぁか!想像だ!本気にすんな」
俺は長期休暇を願い出た。
この6年間、妻探し以外はひたすら働いた。何もすることがない俺には働いて金を貯めるしかなかった。
妻に少しでも慰謝料を多く払いたい。本当は元に戻りたいが、その言葉は口に出してはいけない。
だから妻のために。そう思うことで苦痛な毎日をなんとか誤魔化して過ごすことしか出来なかった。
その金を持ってハバード領にある伯爵邸へとやってきた。
門番に伯爵に会えないかと身分証を見せて声をかけた。
『王宮騎士』という身分はしっかりと保証されているため信用がある。
しかし忙しいと断られた。
それでも何か少しでも妻の情報が知りたくて屋敷周辺を歩いて回った。
そんな時、伯爵邸の隣に建つ小さな家から男の子が出てくるのをたまたま見て俺は固まった。
俺によく似た男の子。
もう二度と妻に会えないと思っていたのに、……やっと見つけた妻の居場所……俺の子供を産んでいたのか?
どこを探してもいない。
何度となく妻の実家にも足を運んだ。
その度に追い返された。
「もう二度とここに顔を出さないでください」
何度もそう言われた。
それでも……妻がどこに行ったのかわからず探し回って……]もう探す場所はない。
妻の学生時代の友人を探し出し、会えるように頼み込む。俺は平民で妻の友人達は貴族。
なかなか会ってもらえない。面会の許可すらもらえない。
そんな中やっとの思いで一人の妻の友人に会うことができた。
「あなたが彼女の元夫?確か王宮騎士よね?殿下の覚えもあると訊いているわ」
ジロリと俺を睨む。
「………はぁ」
俺は伯爵夫人である妻の友人の高圧的な物言いにたじろぐ。
女性なのに貴族とはこんなに強烈で手ごわく一筋縄ではいかないとは思わなかった。
何を訊いても「妻のことなのに貴方はそんなことも知らないの?」と冷めた目で俺に問い返す。
知らないから訊いているんだ。そう言いたいけど、貴族様には何も言えない。
妻は貴族だったのに、俺のために平民になり、俺と同じ目線で生活をしてくれた。こんな酷い態度を取る妻ではなかった。
優しくていつも笑って、とても可愛らしい愛情あふれる人だった。
使用人くらい俺の稼ぎなら雇えた。馬車だって小さな屋敷だって買えた。
でも俺は平民の暮らしが好きだった。金は貧しい人のために使っていた。
ただそれが困っている母子家庭に主に使っていたので周りには女好きだとか浮気をしているだとか誤解をされた。
俺は自分が苦労してきた。母親の大変さも見てきた。だからつい母子家庭に手を差し伸べたくなる。
行き過ぎた行動だった。
妻を大切にしてこそ、他人にも優しくできるのに。妻を蔑ろにして他人に優しくしていた。
そして妻の友人からは「諦めなさい。貴方は捨てられたの」そう言ってなんの質問にも答えてもらえず追い返された。
それからも仕事をしながら妻を探した。
俺は親切心で母子家庭や困っている人に手を差し伸べるのはやめた。
本当に必要なら街にある教会に駆け込めばいい。俺はそこに寄付をすることにした。
それ以上のことはしないと決めた。妻がいなくなり家に何人かの女が「寂しいでしょう?」と体を擦り寄せてきたが全て追い返した。
今更だが、やっぱり愛しているのは妻だけ。
俺はまだ離婚届は提出していない。
妻を見つけ出し、せめて話し合ってからきちんと慰謝料を払って離婚しようと思っていた。
本当はもう一度……やり直したいから。
そんなある日、職場の同僚が妻に似た女を遠い街で見たと言ってきた。
「妻が?」
「ここから2日ほど行ったところにあるハバード領だ」
「ああ、あそこはそれなりに栄えた街があって活気のあるところだよね?」
ドゥールが俺の隣にいて話に入ってきた。
「ハバード伯爵夫妻って確かお前の嫁と同級生じゃなかったかな?」
男爵家子息のドゥールは学年は違うが同じ学園を卒業している。
「じゃあもしかして……妻は友人を頼ってそこで暮らしているのか?」
「俺が見たお前の嫁さんは街を子供と歩いていたぞ」
「……子供?再婚したのか……」
「お前、まだ離婚届出していないだろう?」
「ああ、そうだった……もう6年も経つのに……まだそのままにしてある」
「じゃあ再婚はできないだろう。内縁の妻?なんじゃないか。或いはお前の子供だったりして」
ドゥールがとんでもないことを言った。
「俺の子供かもしれない?」
「ばぁか!想像だ!本気にすんな」
俺は長期休暇を願い出た。
この6年間、妻探し以外はひたすら働いた。何もすることがない俺には働いて金を貯めるしかなかった。
妻に少しでも慰謝料を多く払いたい。本当は元に戻りたいが、その言葉は口に出してはいけない。
だから妻のために。そう思うことで苦痛な毎日をなんとか誤魔化して過ごすことしか出来なかった。
その金を持ってハバード領にある伯爵邸へとやってきた。
門番に伯爵に会えないかと身分証を見せて声をかけた。
『王宮騎士』という身分はしっかりと保証されているため信用がある。
しかし忙しいと断られた。
それでも何か少しでも妻の情報が知りたくて屋敷周辺を歩いて回った。
そんな時、伯爵邸の隣に建つ小さな家から男の子が出てくるのをたまたま見て俺は固まった。
俺によく似た男の子。
もう二度と妻に会えないと思っていたのに、……やっと見つけた妻の居場所……俺の子供を産んでいたのか?
853
あなたにおすすめの小説
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる