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おじちゃんとの生活。
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おじちゃんの家に辿り着いた。
出会ってすぐに食べ物をもらえたおかげでここまでなんとか歩いてこれた。
傷の手当てをしてくれるというのでマントを脱ぐと。
フードをかぶっていたので男の子だと思われていたらしく、わたしの顔を見て驚いていた。
「お、女の子?」
「はい……一人旅だったので……男の子に間違われた方が安全だと思って……」
「確かにそうだが……よく何事もなく生き延びたな」
呆れられながらも「あの馬は賢そうだ。ずっと守ってくれたんだろうな」と言われた。
うん、ルドルフがいなかったらわたしはどうなっていただろう?
何度か怪しい人が話しかけてきたり、ついてきたりしたけど、ルドルフが傍にいて威嚇して守ってくれたのは確かだった。
それから行く当てもないと知って、おじちゃんは家の隣にある小屋でしばらく暮らせばいいと貸してくれた。
小屋の二階にベッドがありそこを寝室にした。一階が馬小屋になっていた。
ルドルフと同じ小屋で暮らすようになった。わたしにとって一番安心で安全な場所。
宝石をおじちゃんに渡そうとしたら「こんな高価な物は要らん。それにこんな高価な宝石を換金してくれる店はないし、盗人と間違えられたら困る」と言われた。
確かに『姫」に与えられた宝石だ。いくら愛されていないとは言え価値はそれなりにあるだろう。
それにこれを売ればわたしの居場所はバレてしまうかもしれない。
「こんな田舎で暮らしてるんだ。大金なんて必要ないんじゃ」
おじちゃんはニカっと笑って言った。
それならともう一つの物を渡した。
「これなら大丈夫だと思います」
それは……金貨を一枚。
この金貨は姫様の部屋にあった。
記憶を思い起こせばよくお祖母様が「子供もお金の価値をわからないといけない」と会うたびに渡されたものだった。
でも買い物をしたこともないし、お金の使い方のわからない姫様はそのまま引き出しにしまっていた。
「金は必要ないと言っただろう」
「うん、だからこれはいざという時に持っていて欲しいの。これはお祖母様がくれたお金だからわたしのものなの」
「そんな大切なお金をなぜわしに?」
「わたしもそこまでお金は必要ではないんです。もちろん生きていくために多少は必要だけどこの村ならお金はなくても生きていけそうだし」
ここはお金よりも物々交換でみんな暮らしている。
おじちゃんは薬を作り食べ物などと交換している。
でも、いつかわたしのせいでおじちゃんに迷惑をかけてしまうかもしれない。
だからこそこの金貨は受け取っておいて欲しくて無理やり渡した。
わたしは……取り柄はないけどおじちゃんの紹介でこの村の役場で働き始めた。
数字や読み書きもできるし計算もできる。
こんな田舎では学べる場所はなく、みんな字が読めなくて困っていた。
暇な時間、子供達が遊びに来るようになった。
外に出て地面に棒で字を書いて数字や文字を教えている。
この村では紙やペンはまだとても高価でなかなか手に入らない。
親たちに喜ばれて小麦やとうもろこしなどをお礼にもらえる。
服は生地屋さんで買って近所の裁縫の得意なおばちゃんにお願いして縫ってもらう。
そんな時少しお金を使う。
刺繍やレース編みは手習いで教わっているけど、流石に自分で服を縫うことはできない。
なんでも自分たちで出来る村の人たちのおかげで、助けてもらいながら不自由なく楽しく暮らしていた。
みんな優しく、そして明るい。
わたしのこともすぐに受け入れてくれた。
親に虐げられて逃げてきたと言い訳したのがそのままみんなにも伝わっていた。
みんなから同情され、少し心苦しかったけど、作り話ではないので訂正することもなく、温かい人たちに囲まれて幸せに暮らしていた。
でもわたしも16歳。
おじちゃんはわたしが成人して、そろそろお嫁に行かなければならないことを心配してくれていた。
「わたし……ここがいい」
おじちゃんは、寂しそうに困った顔をしていた。
出会ってすぐに食べ物をもらえたおかげでここまでなんとか歩いてこれた。
傷の手当てをしてくれるというのでマントを脱ぐと。
フードをかぶっていたので男の子だと思われていたらしく、わたしの顔を見て驚いていた。
「お、女の子?」
「はい……一人旅だったので……男の子に間違われた方が安全だと思って……」
「確かにそうだが……よく何事もなく生き延びたな」
呆れられながらも「あの馬は賢そうだ。ずっと守ってくれたんだろうな」と言われた。
うん、ルドルフがいなかったらわたしはどうなっていただろう?
何度か怪しい人が話しかけてきたり、ついてきたりしたけど、ルドルフが傍にいて威嚇して守ってくれたのは確かだった。
それから行く当てもないと知って、おじちゃんは家の隣にある小屋でしばらく暮らせばいいと貸してくれた。
小屋の二階にベッドがありそこを寝室にした。一階が馬小屋になっていた。
ルドルフと同じ小屋で暮らすようになった。わたしにとって一番安心で安全な場所。
宝石をおじちゃんに渡そうとしたら「こんな高価な物は要らん。それにこんな高価な宝石を換金してくれる店はないし、盗人と間違えられたら困る」と言われた。
確かに『姫」に与えられた宝石だ。いくら愛されていないとは言え価値はそれなりにあるだろう。
それにこれを売ればわたしの居場所はバレてしまうかもしれない。
「こんな田舎で暮らしてるんだ。大金なんて必要ないんじゃ」
おじちゃんはニカっと笑って言った。
それならともう一つの物を渡した。
「これなら大丈夫だと思います」
それは……金貨を一枚。
この金貨は姫様の部屋にあった。
記憶を思い起こせばよくお祖母様が「子供もお金の価値をわからないといけない」と会うたびに渡されたものだった。
でも買い物をしたこともないし、お金の使い方のわからない姫様はそのまま引き出しにしまっていた。
「金は必要ないと言っただろう」
「うん、だからこれはいざという時に持っていて欲しいの。これはお祖母様がくれたお金だからわたしのものなの」
「そんな大切なお金をなぜわしに?」
「わたしもそこまでお金は必要ではないんです。もちろん生きていくために多少は必要だけどこの村ならお金はなくても生きていけそうだし」
ここはお金よりも物々交換でみんな暮らしている。
おじちゃんは薬を作り食べ物などと交換している。
でも、いつかわたしのせいでおじちゃんに迷惑をかけてしまうかもしれない。
だからこそこの金貨は受け取っておいて欲しくて無理やり渡した。
わたしは……取り柄はないけどおじちゃんの紹介でこの村の役場で働き始めた。
数字や読み書きもできるし計算もできる。
こんな田舎では学べる場所はなく、みんな字が読めなくて困っていた。
暇な時間、子供達が遊びに来るようになった。
外に出て地面に棒で字を書いて数字や文字を教えている。
この村では紙やペンはまだとても高価でなかなか手に入らない。
親たちに喜ばれて小麦やとうもろこしなどをお礼にもらえる。
服は生地屋さんで買って近所の裁縫の得意なおばちゃんにお願いして縫ってもらう。
そんな時少しお金を使う。
刺繍やレース編みは手習いで教わっているけど、流石に自分で服を縫うことはできない。
なんでも自分たちで出来る村の人たちのおかげで、助けてもらいながら不自由なく楽しく暮らしていた。
みんな優しく、そして明るい。
わたしのこともすぐに受け入れてくれた。
親に虐げられて逃げてきたと言い訳したのがそのままみんなにも伝わっていた。
みんなから同情され、少し心苦しかったけど、作り話ではないので訂正することもなく、温かい人たちに囲まれて幸せに暮らしていた。
でもわたしも16歳。
おじちゃんはわたしが成人して、そろそろお嫁に行かなければならないことを心配してくれていた。
「わたし……ここがいい」
おじちゃんは、寂しそうに困った顔をしていた。
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