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旅立ち。
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おじちゃんの泣きそうな顔を見てわたしも泣きそうになった。
「ソフィ……本当はずっとここに居てほしい」
「………うん」
「だがな、村の人達から言われたんじゃ。このままお前をこの村に置いておくことは難しいと……」
「………うん」
「ずっとわしの娘としてこの村にいてほしい……だがお前は………貴族の娘なんだろう?村人はみんなわかっていて16歳までは目をつぶってくれていた」
「………うん」
「でもな、成人したお前を嫁にもらってくれる者はこの村にはいない。ずっとお前が一人でこの村で暮らすわけにはいかない………田舎じゃそんなおなごは暮らしてはいけないんだ」
「………うん」
自然豊かな小国のリシャ。
まだまだ考え方は閉鎖的。特に田舎に行けば田舎に行くほど、村人達の考え方は昔ながらで、貴族と平民をしっかり区別している。
わたしがこの村で過ごせたのは奇跡的に近い。
おじちゃんが薬師でこの村で重宝されていたからわたしを除け者にできなかった。
そしてわたしが字を書けたり計算ができたのも、この村の人達にとってありがたかったから。
でも成人したわたしはもう邪魔者になってしまった。
いつわたしの親族が探し出してわたしを連れ帰るかわからない。
そんなわたしを嫁にもらおうなんて人はいない。
それに貴族令嬢をもし嫁にもらったことがその親族に知られれば、平民なんて簡単に罪を着せられ処罰を受ける。
「おじちゃん………わたし……村を出るね」
「…………ああ、お前ならちゃんとした貴族のところに嫁に行けるはずじゃ」
「………そうかな」
おじちゃんは、わたしがこの国の王と本当に血のつながった唯一の娘だなんて思ってもいない。
だって今この国にいる王女は、聖女様でもあるオリビア姫一人だけだもの。
わたしの存在はいつの間にか忘れられてしまった。
だから本当は誰も探しになんてこない。
探さないのだから見つかることもない。
「おじちゃん、会いにきてもいい?」
「ああ、いつでも会いに来い。本当はずっと………」
おじちゃんは俯いてそれ以上の言葉を言えずにいた。
一緒に暮らしていたかった。
だけど、この村でおじちゃんは暮らしていかないといけない。
多分、わたしがずっとここにいたいと泣きながら頼めばおじちゃんは「ここにいろ」と無理にでも居させてくれたと思う。たとえ村人達に白い目で見られても。
でもおじちゃんはわたしの幸せを考えてくれていた。
だっておじちゃんは、わたしがこの村を出ていけるように準備をしてくれていた。
「鞄にお前の荷物は準備してる。カインという町へ行け。そこに住むルバート伯爵は……俺の兄だ。手紙を書いてあるから助けてくれるだろう」
「ご迷惑では?」
「お前を助けるには本当はもっと力がいる。兄ならもっと高位貴族を紹介してくれる……まぁ国王陛下よりは力はないがな」
「………知っていたんですか?」
「この国のお姫様のことくらい知ってる。『哀れなお姫様』と言われているが本当はとても心の強い、そしてとても優しすぎるお姫様じゃ。わしの自慢の娘だ」
わたしはおじちゃんに抱きついて泣いた。
お父様なんかよりずっと愛情いっぱいにわたしを愛してくれたおじちゃん。
おじちゃんに出会わなければわたしはこんなに幸せに暮らせなかった。
おじちゃんは薬師をしていてとても賢い人なのはわかっていた。時折、誰かと手紙のやり取りもしていたし、字が読めることも所作がとても綺麗なことも知っていた。
でもお互いの秘密を知ろうとはしなかった。だって知らなければ幸せは続くかもしれないと思ったから。
「おじちゃん、行ってくるね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「ソフィ……本当はずっとここに居てほしい」
「………うん」
「だがな、村の人達から言われたんじゃ。このままお前をこの村に置いておくことは難しいと……」
「………うん」
「ずっとわしの娘としてこの村にいてほしい……だがお前は………貴族の娘なんだろう?村人はみんなわかっていて16歳までは目をつぶってくれていた」
「………うん」
「でもな、成人したお前を嫁にもらってくれる者はこの村にはいない。ずっとお前が一人でこの村で暮らすわけにはいかない………田舎じゃそんなおなごは暮らしてはいけないんだ」
「………うん」
自然豊かな小国のリシャ。
まだまだ考え方は閉鎖的。特に田舎に行けば田舎に行くほど、村人達の考え方は昔ながらで、貴族と平民をしっかり区別している。
わたしがこの村で過ごせたのは奇跡的に近い。
おじちゃんが薬師でこの村で重宝されていたからわたしを除け者にできなかった。
そしてわたしが字を書けたり計算ができたのも、この村の人達にとってありがたかったから。
でも成人したわたしはもう邪魔者になってしまった。
いつわたしの親族が探し出してわたしを連れ帰るかわからない。
そんなわたしを嫁にもらおうなんて人はいない。
それに貴族令嬢をもし嫁にもらったことがその親族に知られれば、平民なんて簡単に罪を着せられ処罰を受ける。
「おじちゃん………わたし……村を出るね」
「…………ああ、お前ならちゃんとした貴族のところに嫁に行けるはずじゃ」
「………そうかな」
おじちゃんは、わたしがこの国の王と本当に血のつながった唯一の娘だなんて思ってもいない。
だって今この国にいる王女は、聖女様でもあるオリビア姫一人だけだもの。
わたしの存在はいつの間にか忘れられてしまった。
だから本当は誰も探しになんてこない。
探さないのだから見つかることもない。
「おじちゃん、会いにきてもいい?」
「ああ、いつでも会いに来い。本当はずっと………」
おじちゃんは俯いてそれ以上の言葉を言えずにいた。
一緒に暮らしていたかった。
だけど、この村でおじちゃんは暮らしていかないといけない。
多分、わたしがずっとここにいたいと泣きながら頼めばおじちゃんは「ここにいろ」と無理にでも居させてくれたと思う。たとえ村人達に白い目で見られても。
でもおじちゃんはわたしの幸せを考えてくれていた。
だっておじちゃんは、わたしがこの村を出ていけるように準備をしてくれていた。
「鞄にお前の荷物は準備してる。カインという町へ行け。そこに住むルバート伯爵は……俺の兄だ。手紙を書いてあるから助けてくれるだろう」
「ご迷惑では?」
「お前を助けるには本当はもっと力がいる。兄ならもっと高位貴族を紹介してくれる……まぁ国王陛下よりは力はないがな」
「………知っていたんですか?」
「この国のお姫様のことくらい知ってる。『哀れなお姫様』と言われているが本当はとても心の強い、そしてとても優しすぎるお姫様じゃ。わしの自慢の娘だ」
わたしはおじちゃんに抱きついて泣いた。
お父様なんかよりずっと愛情いっぱいにわたしを愛してくれたおじちゃん。
おじちゃんに出会わなければわたしはこんなに幸せに暮らせなかった。
おじちゃんは薬師をしていてとても賢い人なのはわかっていた。時折、誰かと手紙のやり取りもしていたし、字が読めることも所作がとても綺麗なことも知っていた。
でもお互いの秘密を知ろうとはしなかった。だって知らなければ幸せは続くかもしれないと思ったから。
「おじちゃん、行ってくるね」
「ああ、行ってらっしゃい」
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