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15話 アーシャ
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大好きなシルヴァ殿下と婚約した。
お父様は公爵で宰相。そしてわたしを愛してくれているわ。
わたしは今この国で一番幸せな令嬢なのかもしれない。
大好きな王子様と婚約できて、笑い合う。
優しいお父様がお母様の分まで愛してくださる。
精霊達がいつもそばにいてくれるから寂しくても頑張れる。
苦手なダンスもピアノも殿下の隣に堂々と並べるように頑張る。
王宮に通い始めて先生から厳しく指導され、たまに鞭で手を叩かれるけど、そのことは誰にも言わない。
だってわたしができないだけ、不器用なだけ、先生は一生懸命教えてくださっているのに。
「アーシャ様は不器用なんだとお父上に聞いてはおりましたが、ここまでとは」
ため息を吐き呆れる先生。
いくら頑張っても上手にピアノが弾けない。
リズムに合わせてダンスを踊りたいのに、テンポが遅れる。
「音痴……なんでしょうけど……ここまでとは」
呆れる先生に「わたし、帰ってからも練習します。だから、辞めるなんて言わないでください」何度も頭を下げて教えて欲しいとお願いした。
それからは失敗するたびにスカートの裾をあげて、太ももを鞭で打たれた。
痛くて入浴するのも辛かった。
メイドが入浴や着替えを手伝ってくれる時、必ずミーナにお願いした。
ミーナなら「誰にも言わないで」とお願いすれば内緒にしてくれる。
わたしが劣等生で王子教育がなかなか進まないことをお父様に知られたくない。
心配かけたくないし……ううん、本当は、シルヴァ殿下に知られたくないし、本当は何もできない不器用で殿下には似合わない子だと思われたくない。
それにお父様に失望されたくない。
わたし……狡い子なんだわ。本当の自分を誰にも知られたくない。
『アーシャ様、もっと頑張らないとこのままではシルヴァ殿下の婚約者として横に並ぶことはできませんよ?』
『はああ~、とんでもない生徒を受け持ったわ。しっかりここまで覚えてくるように言いましたよね?どうしてわからないんですか?』
『恥ずかしくないのですか?そんな刺繍では誰も喜んでもらってはくれませんよ』
『ダンスは致命的ですね?そんなダンスを踊ってはパートナーの殿下がお可哀想ですわ』
何をしてもどんなに頑張っても先生方は褒めてはくださらない。
叱られ呆れられながら、鞭で打たれる。
わたしはどんどん自信をなくして、先生達の授業の時は俯いてばかりになってしまった。
それでも殿下に会うと元気をもらいまた頑張ろうと思ってしまう。
少しでも殿下に見合う人になりたい。
そして14歳、わたしは殿下の隣で幸せな婚約者として並ぶ権利を得た……つもりでいた。
ミランダ様がシルヴァ殿下の前に現れるまでは。
『アーシャ、僕の可愛い婚約者。愛してるよ』
あなたはいつもわたしを愛し慈しみ大切にしてくれた。わたしもあなただけを見てきた。
あなたの隣にずっといたくて。
あなたのことを愛していたから。
裏切られるなんて思わなかった。
あなたがわたしを愛することがなくなるなんて思わなかった。
青い薔薇の花言葉は『不可能』『存在しない』。
そうわたしは殿下の婚約者になるなんてあり得なかったのだ。
それを無理やりお父様の力で婚約者になったから……地獄へと落ちたのかもしれない。
青い薔薇を作り出してしまったわたしの……罰なのかもしれない。
お父様は公爵で宰相。そしてわたしを愛してくれているわ。
わたしは今この国で一番幸せな令嬢なのかもしれない。
大好きな王子様と婚約できて、笑い合う。
優しいお父様がお母様の分まで愛してくださる。
精霊達がいつもそばにいてくれるから寂しくても頑張れる。
苦手なダンスもピアノも殿下の隣に堂々と並べるように頑張る。
王宮に通い始めて先生から厳しく指導され、たまに鞭で手を叩かれるけど、そのことは誰にも言わない。
だってわたしができないだけ、不器用なだけ、先生は一生懸命教えてくださっているのに。
「アーシャ様は不器用なんだとお父上に聞いてはおりましたが、ここまでとは」
ため息を吐き呆れる先生。
いくら頑張っても上手にピアノが弾けない。
リズムに合わせてダンスを踊りたいのに、テンポが遅れる。
「音痴……なんでしょうけど……ここまでとは」
呆れる先生に「わたし、帰ってからも練習します。だから、辞めるなんて言わないでください」何度も頭を下げて教えて欲しいとお願いした。
それからは失敗するたびにスカートの裾をあげて、太ももを鞭で打たれた。
痛くて入浴するのも辛かった。
メイドが入浴や着替えを手伝ってくれる時、必ずミーナにお願いした。
ミーナなら「誰にも言わないで」とお願いすれば内緒にしてくれる。
わたしが劣等生で王子教育がなかなか進まないことをお父様に知られたくない。
心配かけたくないし……ううん、本当は、シルヴァ殿下に知られたくないし、本当は何もできない不器用で殿下には似合わない子だと思われたくない。
それにお父様に失望されたくない。
わたし……狡い子なんだわ。本当の自分を誰にも知られたくない。
『アーシャ様、もっと頑張らないとこのままではシルヴァ殿下の婚約者として横に並ぶことはできませんよ?』
『はああ~、とんでもない生徒を受け持ったわ。しっかりここまで覚えてくるように言いましたよね?どうしてわからないんですか?』
『恥ずかしくないのですか?そんな刺繍では誰も喜んでもらってはくれませんよ』
『ダンスは致命的ですね?そんなダンスを踊ってはパートナーの殿下がお可哀想ですわ』
何をしてもどんなに頑張っても先生方は褒めてはくださらない。
叱られ呆れられながら、鞭で打たれる。
わたしはどんどん自信をなくして、先生達の授業の時は俯いてばかりになってしまった。
それでも殿下に会うと元気をもらいまた頑張ろうと思ってしまう。
少しでも殿下に見合う人になりたい。
そして14歳、わたしは殿下の隣で幸せな婚約者として並ぶ権利を得た……つもりでいた。
ミランダ様がシルヴァ殿下の前に現れるまでは。
『アーシャ、僕の可愛い婚約者。愛してるよ』
あなたはいつもわたしを愛し慈しみ大切にしてくれた。わたしもあなただけを見てきた。
あなたの隣にずっといたくて。
あなたのことを愛していたから。
裏切られるなんて思わなかった。
あなたがわたしを愛することがなくなるなんて思わなかった。
青い薔薇の花言葉は『不可能』『存在しない』。
そうわたしは殿下の婚約者になるなんてあり得なかったのだ。
それを無理やりお父様の力で婚約者になったから……地獄へと落ちたのかもしれない。
青い薔薇を作り出してしまったわたしの……罰なのかもしれない。
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