王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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再会と真実の共有

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再会と真実の共有
足早にアラリックの部屋へ向かっていると隣の部屋から解放されたクシェルとかち合った。
「殿下、ご無事で……!」
「ああ。お前も何ともないか。」
「はい。……何かあったのですか?」
「……セラだ。真相を暴いたのは。そしてそのことをアンツェルーシュは知っている。」
「な……!早く王に文を……って差し止められてるんでしたっけ。本当にやることなすこと腹立たしいですね……。とにかくアラリック王子の元へ向かいましょう。」
王宮の広さがこう言う時は憎らしい。苛立っていることも、焦っていることも悟らせてはいけない。
「レオポルトだ。入れてくれるか。」
ドアが開いた。開けてくれたのはエルナだった。
「解放されたか……なんだその顔は。アンツェルーシュに嫌味でも言われたか?」
「……セラを連れて来たのはお前か?」
「ああ。最初は保護名目だったんだが、セラの方も王命でこちらへ潜入したいと言う。利害が一致した。」
「王命?」
「いいから中に入れ。その辺りは本人から直接聞いた方がいいだろう。」
中に入ればアラリックの世話をしている侍女が1人。会話に気づいた女がこちらを向いた。会ってない日なんて10日にも満たない。それなのに―――
会えた喜びと、彼女がここに来てしまったことへの後悔に会いたかったその人を思わず抱きしめた。
「レオ様……?お熱でも?」
「いや、ない。無事か?」
「私は無事ですがアラリック王子が危険な状態です。ここ2日は最低でも目を離せないでしょう。」
「やれやれ、見せつけてくれるじゃないか、レオ。」
「……保護は頼んだがこんなことになるとは思ってなかったんだ。そもそも王命とはどう言う意味だ?」
「舞踏会の後、王が私に謁見を命じられました。その中でレオ様からの連絡が途絶えていること、アイルデール家への証拠を手に入れることなどを話し、コアルシオンへの潜伏を命じられました。」
「……兄王に初めて恨みがましい気持ちが湧いた。しかも舞踏会……何もなかったんだろうな。」
「……ありませんでしたよ。」
「その間はなんだ。」
「ああもう、今その話をしている場合ではないでしょう。私たちの置かれている状況は喜ばしいものではありません。」
「……その通りだ。お前の存在もアンツェルーシュ……ここの宰相にバレた。」
「ああ、あの蛇男ですか。」
「蛇男?」
「なんか蛇っぽくないですか。目が。」
「……ふっ。お前たまに面白いこと言うよな。」
「コホン。」
 エルナの咳払いが部屋に響いた。
「お前たちが仲がいいのはよく分かった。だが手早く情報共有、そして今後の行動を考えるべきだ。」
「全くです。私の方で分かっていることですが、アイルデール……仮面の男の目的、それからコアルシオンの宰相と手を組んでいてそれぞれ目的が違うことでしょうか。」
「その仮面の男の目的とは何なんだ?蘇り狐が目的だそうだが……」
「それは俺から説明する。仮面の男……アイルデールの妻は10年前何らかの形で死んだ、もしくは意識不明のまま生き延びている。アイルデールは錬金術を使い、妻を蘇らせるつもりだ。」
「錬金術だと?それはまた昔のものを掘り返して来たな……」
「万策尽きたんだろう。そして魂の蘇りに必要な材料が3つ。それがエイマールの葉……麻薬に使われた葉だな。それからコアルシオンの宝石。そして最後が蘇り狐。」
「なるほどな。つまりこういうことか。アンツェルーシュは材料集めに協力する。その代わりに開戦のために手を貸すというのが奴らの取引なのだろう。」
「そのようですね。しかしアンツェルーシュは何故そこまでして開戦したがるのでしょうか?正直自国もアラリック王子の派閥も大きく、その中でカルディアとの戦争はリスクが高い気がするのですが……」
「それは私も考えていたことだ。正直勝てても失うものは大きい。」
「そのことだがエイマールが軍を出してくるのだそうだ。」
「エイマールが?レオ様の妹様が嫁がれたはずでは……」
「ああ。だがどうやらエイマールの王子には特殊な性癖があり、それを弱味に握られたらしい。俺の妹シャッツェルとの関係は至極良好で、シャッツェルと引き離されることを恐れたそうだ。」
「なるほど。それは厄介な……」
「もう一つ気になるのがあの立ち入り禁止の塔だな。エルナ、何か知っているのか?アラリックは偽の宝石を作ろうとしていると言っていたが……」
「恐らくそうだろうな。そしてそこにアマリエル様が噛んでいるのも間違い無い。」
「アマリエル様というのは?」
「父を溺れさせた舞姫出身の側妃だ。初日にレオを誘い込もうとしたらしい。」
「それはまた……」
「何も起きてないぞ。勘違いするなよ。」
「何か起きていたら引っ叩いています。」
「ははっ最高だ。引っ叩いてやれ。」
「お前は黙れエルナ……」
「だがアマリエルには迷いがあった。何故こんなことをしているのか聞けばただ自分と娘が生涯不安なく暮らしたいだけだと……」
「……これは真実かは分からんがアマリエル様は最初側妃になることに対して乗り気ではなかったらしい。だが父があまりにも溺れ無理矢理側妃にしたとか。」
「であれば……付け入る隙はあるかもしれないな。」
「急いだ方が良いと思います。私が敵ならばアラリック様が弱っている今を狙います。」
「その通りだ。だがしかしお前はどうするんだ?ここにいても危険だろう。」
「それですが……」
 セラの話す内容にレオは到底賛成する気にはならなかった。
「……お前正気か?」
「綺麗に正気です。恐らくアンツェルーシュはアラリック王子の完全回復前の戦争を狙っている……。その前に私を捕まえて引き渡してしまいたいはずです。まずは今夜、アマリエル様から始めましょう。」
「……俺は、もう2度とお前を失いたく無い。」
「今回は消えていかないための作戦です。弱気にならないでください。敵に気づかれます。」
「……分かった。」
「お前がこんなに女に弱いとは知らなかった。惚れた女が強い女でよかったな。」
「……腹立たしいが認めよう。なら俺は部屋に戻る。」
「はい、ご武運を。」
「お前がな。」
 
 
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