王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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小悪魔は先に眠る

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小悪魔は先に眠る
緊張し通しの晩餐会。
戴冠式の後、開かれる晩餐会でセラは1人硬くなっていた。隣にレオがいるし向かいにはエルナがいる。そう硬くなる必要もないのだが話しかけてくる相手と言えば侍従長など形式的な挨拶をする者くらいのもので、エルナやレオは他の客の相手に忙しい。最初、アラリック王が言ったことも気になっていた。
「本日は来てくれたこと、感謝している。」
その後耳元で囁かれた言葉。
「明日の朝、人をやります。個人的に礼と詫びがしたいのです。」
断ることはできなかった。レオは他の客と話していて見ていなかったらしい。何となく後ろめたさを残しながら食事に手をつけていた。普段あまり食べないセラだがどうにも手持ち無沙汰だと食べたり飲んだりするぐらいしかなく、もぐもぐとチーズや香草焼き、デザートに手を出していた。どれも派手ではないが味は確かでとても美味しい。
ワインもこの国特有のもののようで深みのあるまろやかな味が美味しく、ついつい飲んでいた。
お酒には強い方だと思っていたのだがなんだか少しふわらっとしてきた。これは少し回ってしまったかもしれない。
ふと、こちらを見たレオが青ざめている。
「おい、お前……どれだけ飲んだ。」
「え?3杯くらいでしょうか。」
「お前……この国の酒の強さを分かってるのか」
「いえ、その、美味しかったのでつい……」
 小声で小さくなるセラにエルナが笑っている。
「ははっ美味しかったのはいいことだが3は飲み過ぎだな。レオ、連れ出してやれ。」
「そうさせてもらう。」
外に連れ出され外の冷気にあたると火照った身体が少し浮いているような感覚。隣のレオがあまり顔を合わさないようにしている気がする。なんでだろう。
「……レオ様?」
袖を引いても反応がない。何かしたんだろうか。
「レオ様、私何かしましたか……?」
酷く困った顔のレオがこちらを向いた。 
「はぁ……お前、自分がどんな状態か自覚ないだろ。」
「少し酔っているのは分かります。」
「酔って、顔赤くして緩んだ目でこっち見て。俺の理性は焼き切れそうだ。」
「でも、レオ様がこちらを向いてくれないのは寂しいです……」
「お前……いい加減に……ああもう、部屋行くぞ。」
レオの部屋に着くと水を飲まされる。
「少しは冷めたか?」
「……うーん?冷めたんでしょうか。」
レオの部屋。いつもは何とも思わないけど今日は何だか緩んでしまう。レオしかいないなら、甘えてもいいのかな。
「レオ様。」
「どうした……っておい!」
その胸に抱きついてみる。落ち着く、レオの匂い。張り詰めていたものがするりと抜けていくみたい。
「レオ様……落ち着く。」
「お前は猫か……」
「レオ様、キスはしてくださらないのですか?」
「は?」
「いつもしてくださるのに……」
「……この酔っ払いめ。」
欲しかったキス。今日は恥じらいも不思議なくらい感じない。自分から舌を絡めて。もっと、欲しくなる。
「……っ……このっ……はぁ」
「んっ……あ……やぁ……」
「お前、俺を試してるのか?」
「レオ様は、嫌なのですか……?」
「嫌なんて言ってないだろう。」
「なら、いいではないですか。もっと、ね?」
「おまっちょっ……ん……」
気づけば押し倒されているベッドの上。やっと、抱いてもらえるの?だけどベッドの上は柔らかくて心地いい。なんだか疲れが一気に押し寄せてきたみたい。
「お前いい加減にしろ……っては?」
セラの頬をつついてみる。
「寝やがった……この小悪魔め……」
人を散々弄んでおいてベッドに倒したら疲れて眠ってしまったらしい。
「はぁ……」
仕方なくセラを抱いて部屋まで運ぶと侍女たちが慌てて出てきた。
「王弟殿下!一体何が……」
「この酔っ払いを何とかしろ。飲みすぎないようちゃんと教育しておけ。いいな。」
「かしこまりました。」
ベルシュタインの侍女はしっかりしている。置いてきても大丈夫だろう。
それにしても……
「また眠れんかもな……」
苦虫を噛み潰したように呟くレオに、救済の手はなかった。
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