【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

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1章

第7話

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「それで、話とは何かしら。」


お母様は部屋に入って早々、少しきつい口調でそう聞いてきた。ライラのことで苛立っているのでしょう…。これに関してはお父様も悪いと思うわ。
いくら反対されると分かっていても、少しはお母様にも相談すべき重要事項。仮に反対されようともお父様の方が権力が強いのだから、押し切ってしまえば良いだけのこと。おそらくお母様の機嫌を損ねたくない気持ちと、叱られたくない思いがあったのでしょう。結局は自分の為ね…。

一先ず私は、ライラをお母様がどのように思っているのかを確かめる為に、直球で聞いてみることにした。


「ライラのことを、お母様はどう思っているのですか?」
「……あの子が美しくも愛らしいことは認めるわ。誰もが振り向く天使のような子。けれど私は気に入らないわ。伯爵家当主であるヴァーヌが決めた事だから、私は何も言えない…。あの人もそれを分かっていて私に何も言わなかったのでしょうね。それでも、元平民が義娘なのは私にとって許せない事よ。」


やはり良くは思っていないようね。
しかし、だからこそ最悪の事態にならないようにする必要がある。お母様には申し訳ないけれど、少しばかり我慢してもらわなければ…。


「……お母様の気持ちは私も理解出来ます。ですが少しだけで良いので、ライラに優しくは出来ませんか?」
「何?貴女も何処かのお馬鹿さんと同じように、あの子に魅せられたのかしら。」


お父様の方が権力が上だと理解していて、この物言い…。お母様らしいわね。互いの性格を知った上で結婚しているからこそ、両親は上手くいっているのでしょう。
それにしても、まさか私が魅せられたと勘違いされるとは。実際は真逆なのだけれど…。
誤解は早めに解いておいた方がいい、そう考えた私だったが、続くお母様の言葉に驚いてしまった。


「確かに不思議な力を持っているわ。守ってあげたくなるような、目には見えない雰囲気を纏っているもの。でもそれと同時に、私には不気味さも感じるわ。まるで演技をしているかのような…ね。」
「…!」
「だからこそ、あえて強く当たっているのよ。いずれ本性が出ると思ってね。まぁ娘として認めていないからというのもあるけれど。」


後者の方が意味が強いのでは……とは言わないでおきましょう…。
しかしお母様は本当に人をよく見ている。社交界にて、伯爵夫人なのに公爵夫人と同等の扱いを受けるのも頷けるというものね。
気丈で人を見る目があり、判断・行動力も優れている、それが私の尊敬しているお母様だ。

私はこの数日間の行動の真意が、ライラの本性を引き出す為だったとは思わなかった。そもそも、少し会っただけで彼女が演技をしているかなど分かるはずがないもの。
けれどお母様は見抜いていた。私よりもライラと顔を合わせている時間が少ないというのに…。


「そういう訳だから、私は優しくするつもりなんて無いわ。」
「……誤解されては困ります。」
「誤解ですって?…ああ、魅せられた事がかしら?」
「そうです。私は決して、ライラの為に言っているのではありません。その逆であり、ライラを危険視しています。」
「危険視?」


私は適当な口実を述べることにした。


「彼女の魅力は秀でています。それこそ、老若男女問わず惹かれてしまうでしょう。ですが、だからこそ注意が必要なのです。彼女の味方についた者達に『ライラにとって邪魔な存在』と思われては、一瞬で陥れられる事になりかねません。」
「…私のやり方では、いずれ自滅してしまうと…?」
「その通りです。」


ライラの手帳に書かれていたことや、メリーア様から知り得た情報は伏せておいた。
お母様は賢くはあるけれど極端なところもある。『転生者』や『乙女ゲーム』について教えてしまえば、どのような行動を取るか予想出来なかったわ…。なので必要最低限のみを伝え、納得してもらう他に無いと考えた。


「はぁ……分かったわよ…。私よりも聡いへレアがそう言うのだから、きっとそうなのでしょうね。あの子への態度は改めるわ。」
「よろしくお願いします。」
「でもただ優しくするなんて絶対に嫌なのだけれど。」


お母様は不満ありげな表情をしている。それだけライラを嫌っているのでしょう。


「先ずは礼儀作法の実技や講義での対応を、少しずつ変えてください。一気に変えてしまっては、何かあるのではと察される可能性がありますから。」
「なるほど…。言い換えれば、彼女の手に落ちたと思わせるということね。」
「はい。何か動きがある際は、私が対処します。」
「了解よ。でも手伝えることがあれば何時でも言って頂戴。私はへレアの味方だから。」
「ありがとうございます…!」


優しい笑顔を向けてくるお母様の目には、ライラが敵だという意思があった。これならば、何事も信頼して任せることが出来るわね。お母様という時点で信頼はしているのだけれど、ライラが関わってしまうと誰であろうと気を付けなければならなくなる。

今後は誰を信じるべきか、見定めていく必要があるわね。
冬期休暇は残り少ない。しかし建国祭や魔法大会はこれから開催される。ライラやメリーア様が知るような『イベント』と呼ばれるものも多く発生するらしい。より一層気を引き締めなければ……。
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