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29話 転移の先
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玉座の間中央に、両手首を後ろで拘束され、左右に立つ騎士二名に圧をかけられながら膝をついて座っている男が居た。ジルファーだ。
さらに貴族達が玉座の間の両側に立ち並んでいる。片方はゼーファ様に付いている貴族、もう片方はジルファーに付いていた貴族だ。そして中立の貴族は両側に散らばっていた。
「ジルファーよ。お前は魔法使い達を使い、召喚魔法にて《悪魔族》を呼び出した。これは重罪に値する。さらにはその罪をゼーファとリエラ殿に押し付けた。相違はないな?」
「ち、父上…いえ、陛下!私は決してそのようなことは行っておりません!全てはゼーファの策略なのです!」
「…ほう?」
陛下は真実を知っていても尚、ジルファーの話を聞くようだ。私としては、あのような者の話など聞く価値が無いと思うのだが…。
「ならば、魔法使いを集めたのは何故だ?」
「そ、それは……、リエラが召喚した魔物を、被害が拡大する前に討伐する為で…。私は国を守る為に、魔法使いを集めただけなのです…!」
ジルファーは罪を逃れる為に、必死に弁解している。
私とゼーファ様は、そんなジルファーを呆れながら見ていた。
「見苦しい言い訳じゃな…。」
「ええ…。陛下が真実を知らないと、本気で思っているのでしょう。」
ジルファーが言い訳を並べ始めて、三分ほど経った。馬鹿の話を聞いている所為か、三分がとても長く感じる。一から丁寧に説明しているが、全て虚言であることは分かりきっていた。
それはそうと、馬鹿王子は何かを待っている気がした。これは時間稼ぎではないかと…。
その時、ヴィーレから頭に直接報告があった。
【ジルファーの下に付く貴族に金で雇われた五名の魔法使いが、転移魔法を発動させようとしている】
とのこと。
ジルファーを逃がす為に、玉座の間の真下から転移魔法を発動させるつもりなのだろう。ジルファーの居る位置を魔力感知で探り、玉座の間の下階に居る魔法使い達が、ジルファーの真下、つまりは天井に魔法陣を描き、転移魔法を発動させるようだ。それなりに頭の賢い貴族が加担していると見るべきだろう。
闇魔法の使えない者は、影間での移動など当然できない。故に、通常は大量の魔力を消費する転移魔法を、魔法使いが最低三人以上で発動させるのだ。しかしそれによって発動された魔法で転移できる対象は、たったの一人のみ。
便利ではあるが、かなり利便性が悪い魔法でもあった。
使い魔として繋がっているからこそ、【念話】のような魔法がヴィーレとのみ可能となっている。しかしルーヴィルとは不可能だった。おそらく私自身が召喚した訳では無いからだろう。
とはいえ、ヴィーレのおかげで逃亡を図っていることが解った。その為の時間稼ぎだったのだ。
【──という感じにできないかしら。】
【できるけど、こういうのはルーヴィルの方が得意だね。ボクは攻撃魔法、もう一人は付与魔法、そしてルーヴィルは転移魔法などの無属性魔法が得意だからね。】
【なら伝えておいて欲しいわ。】
【了解だよー。】
私はヴィーレに頼み事をし、陛下とジルファーの会話に再度集中する。
そこでふと気が付いた。陛下がジルファーの企みに、気付いていない訳が無い……と。つまり全て分かっている上で、ジルファーの無駄なあがきに付き合っているのだ。
甘いと思ったが、これは陛下の親としての行動なのだろう。できる限り自由に生きて欲しい、そう考えているのかもしれない。
だが私はジルファーを逃すつもりは毛頭ない。監視下に無ければ、またゼーファ様の命を狙う可能性があるのだから。そうでなくとも、あの馬鹿王子には自身が行ってきた数々の悪行を、償う必要があるだろう。
死刑では生ぬるい。終身刑とし、毎日拷問でも良いくらいだ。
「──故に、私は無実です…!」
「それらの証拠はあるのか?」
「し、証拠なら……っ!」
その瞬間、ジルファーの足元に魔法陣が現れると、周囲が眩く光った後に姿を消した。
貴族達がざわつき始めたが、陛下は表情を変えていない。やはり知っていたようだ。
さらに、貴族の中にも一人だけ顔色一つ変えていない者がいた。おそらく手引きした貴族だろう。その者の顔をしっかりと覚えてから、私はゼーファ様の方に向き直った。
「ゼーファ様、彼を追っても?」
「構わぬ。妾としては、寧ろ頼みたいところじゃ。陛下には申し訳ないが、あやつを野放しにすれば妾の身の安全が保証されぬであろう。」
「同意見よ。では許可も得られたことだから、こちらはヴィーレに任せておくわ。」
「了解じゃ。」
私は誰にも気付かれぬようにしつつ、影で王城の外に移動した。正確には、ルーヴィルが居る場所だ。王城の裏側、人気の全く無い場所だった。
「ルーヴィル、首尾はどうかしら。」
「命令通りに完了しているぜ。奴をどうするかは、主次第だ。」
「さすがね。ありがとう。」
ルーヴィルが指を鳴らすと、何も無い場所にゲートのようなものが現れた。禍々しいオーラを放っているが、これを通り抜ければあの男の居る空間へと繋がっているという。
その男は真っ暗な空間に囚われていた。何が起きたのか分からず、とにかく声を張り上げている。
「誰か!誰かいないのか!?」
さらに貴族達が玉座の間の両側に立ち並んでいる。片方はゼーファ様に付いている貴族、もう片方はジルファーに付いていた貴族だ。そして中立の貴族は両側に散らばっていた。
「ジルファーよ。お前は魔法使い達を使い、召喚魔法にて《悪魔族》を呼び出した。これは重罪に値する。さらにはその罪をゼーファとリエラ殿に押し付けた。相違はないな?」
「ち、父上…いえ、陛下!私は決してそのようなことは行っておりません!全てはゼーファの策略なのです!」
「…ほう?」
陛下は真実を知っていても尚、ジルファーの話を聞くようだ。私としては、あのような者の話など聞く価値が無いと思うのだが…。
「ならば、魔法使いを集めたのは何故だ?」
「そ、それは……、リエラが召喚した魔物を、被害が拡大する前に討伐する為で…。私は国を守る為に、魔法使いを集めただけなのです…!」
ジルファーは罪を逃れる為に、必死に弁解している。
私とゼーファ様は、そんなジルファーを呆れながら見ていた。
「見苦しい言い訳じゃな…。」
「ええ…。陛下が真実を知らないと、本気で思っているのでしょう。」
ジルファーが言い訳を並べ始めて、三分ほど経った。馬鹿の話を聞いている所為か、三分がとても長く感じる。一から丁寧に説明しているが、全て虚言であることは分かりきっていた。
それはそうと、馬鹿王子は何かを待っている気がした。これは時間稼ぎではないかと…。
その時、ヴィーレから頭に直接報告があった。
【ジルファーの下に付く貴族に金で雇われた五名の魔法使いが、転移魔法を発動させようとしている】
とのこと。
ジルファーを逃がす為に、玉座の間の真下から転移魔法を発動させるつもりなのだろう。ジルファーの居る位置を魔力感知で探り、玉座の間の下階に居る魔法使い達が、ジルファーの真下、つまりは天井に魔法陣を描き、転移魔法を発動させるようだ。それなりに頭の賢い貴族が加担していると見るべきだろう。
闇魔法の使えない者は、影間での移動など当然できない。故に、通常は大量の魔力を消費する転移魔法を、魔法使いが最低三人以上で発動させるのだ。しかしそれによって発動された魔法で転移できる対象は、たったの一人のみ。
便利ではあるが、かなり利便性が悪い魔法でもあった。
使い魔として繋がっているからこそ、【念話】のような魔法がヴィーレとのみ可能となっている。しかしルーヴィルとは不可能だった。おそらく私自身が召喚した訳では無いからだろう。
とはいえ、ヴィーレのおかげで逃亡を図っていることが解った。その為の時間稼ぎだったのだ。
【──という感じにできないかしら。】
【できるけど、こういうのはルーヴィルの方が得意だね。ボクは攻撃魔法、もう一人は付与魔法、そしてルーヴィルは転移魔法などの無属性魔法が得意だからね。】
【なら伝えておいて欲しいわ。】
【了解だよー。】
私はヴィーレに頼み事をし、陛下とジルファーの会話に再度集中する。
そこでふと気が付いた。陛下がジルファーの企みに、気付いていない訳が無い……と。つまり全て分かっている上で、ジルファーの無駄なあがきに付き合っているのだ。
甘いと思ったが、これは陛下の親としての行動なのだろう。できる限り自由に生きて欲しい、そう考えているのかもしれない。
だが私はジルファーを逃すつもりは毛頭ない。監視下に無ければ、またゼーファ様の命を狙う可能性があるのだから。そうでなくとも、あの馬鹿王子には自身が行ってきた数々の悪行を、償う必要があるだろう。
死刑では生ぬるい。終身刑とし、毎日拷問でも良いくらいだ。
「──故に、私は無実です…!」
「それらの証拠はあるのか?」
「し、証拠なら……っ!」
その瞬間、ジルファーの足元に魔法陣が現れると、周囲が眩く光った後に姿を消した。
貴族達がざわつき始めたが、陛下は表情を変えていない。やはり知っていたようだ。
さらに、貴族の中にも一人だけ顔色一つ変えていない者がいた。おそらく手引きした貴族だろう。その者の顔をしっかりと覚えてから、私はゼーファ様の方に向き直った。
「ゼーファ様、彼を追っても?」
「構わぬ。妾としては、寧ろ頼みたいところじゃ。陛下には申し訳ないが、あやつを野放しにすれば妾の身の安全が保証されぬであろう。」
「同意見よ。では許可も得られたことだから、こちらはヴィーレに任せておくわ。」
「了解じゃ。」
私は誰にも気付かれぬようにしつつ、影で王城の外に移動した。正確には、ルーヴィルが居る場所だ。王城の裏側、人気の全く無い場所だった。
「ルーヴィル、首尾はどうかしら。」
「命令通りに完了しているぜ。奴をどうするかは、主次第だ。」
「さすがね。ありがとう。」
ルーヴィルが指を鳴らすと、何も無い場所にゲートのようなものが現れた。禍々しいオーラを放っているが、これを通り抜ければあの男の居る空間へと繋がっているという。
その男は真っ暗な空間に囚われていた。何が起きたのか分からず、とにかく声を張り上げている。
「誰か!誰かいないのか!?」
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