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王立学園入学の出会い side J
しおりを挟む僕はそこそこ裕福な男爵家の嫡男として生まれた。
領地は持たないけど、当主である父はいくつも事業を興していて、我が家はずいぶん潤ってる。そのため父は忙しく、ほとんど本邸には帰って来ない。と言っても、多忙の原因は仕事だけじゃない。幼い頃に仕事仲間だと紹介された若い女性が父の愛人なのは知っている。今では二人目のもっと若い愛人もいるらしい。仕事ができて家族に不自由の無い暮らしをさせているのだから、この程度は許されるのだろう。
隣国から嫁いできた母は、波打って輝く金の髪と蒼い瞳の美しい人だ。歳を重ねてもその美貌はまったく衰えない。父の愛人達のこともとやかく口にすることも無く、自分の時間を謳歌している。賢く魅力溢れる女性。
僕の見た目はそんな母によく似ている。幼い頃は天使のようだと可愛がられたし、外に出ればいつも誰かの視線を感じてきた。少し窮屈さを感じた時もあったけど今ではそんなものだと受け容れている。
身につける物は、父の経営する商会で扱う最新の物ばかりだ。父曰く僕が身につけることでいい宣伝になるらしい。
そんな僕が15になる年、王立学園に入学した。入学式で僕は生まれて初めて他人に見惚れた。
アリシア・ノーステリア伯爵令嬢。
サラサラと輝く白銀の髪に晴れた日の海のような瞳。女性としては高めの身長は背筋が伸び、凛とした雰囲気だが、隣にいる女子生徒と話すときに浮かべた笑顔は柔らかだった。もっと近くで見てみたい。
式の後、自分のクラスに彼女の姿を見つけた時は嬉しかった。
声を掛けようと思ったけど、まったく彼女と目が合わなくてきっかけが掴めない。他の令嬢達とは目が合うのに、彼女が僕を見ることはなかった。
次の日には、生徒会主催の新入生歓迎パーティーが開かれた。
僕は父の商会の新商品のタキシードを着て参加した。少しボリュームのあるタイと片襟に凝った刺繍のあるタイトなデザインはやはり注目され、多くの人に声を掛けられた。
しばらくすると会場に彼女の姿を見つけた。彼女と同じ色合いの髪の男子生徒にエスコートされている。きっと血縁の誰かなのだろうと思い、ほっとした。
彼女は落ち着いたラベンダー色のベルラインのドレスを着ていた。白銀の髪に似合っているけど、もう少し華やかな方が好みだな。けど制服とは違い、露になってる肩や腰のラインは綺麗だった。
近くに行きたかったけど、僕の周りには人が途切れる事が無くてかなわなかった。
授業が始まってからも、彼女は目立っていた。教師に指名されて、難しい問題を皆に丁寧に説明する。そんな姿も美しく、他の男達が見惚れているのを感じた。やっぱりすぐにでも声を掛けないと駄目だ。
授業後、彼女の背後に近づいた。適当に話題をひねり出す。
「さっきの授業で君が答えていた問題が理解ができなかったんだ……。良かったら教えてもらえないかな?」
振り向いた彼女の瞳が僅かに見開き、初めて僕のことを見た時、嬉しくて胸がきゅっとした。正面から見た彼女はやっぱり綺麗だし可愛かった。
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