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夏休みと秋の収穫祭 side A
しおりを挟む美術館に行ってから、私と彼との関係が少し変わった気がする。
朝の挨拶の後、今まではその場にいる友人達と等しく会話していたのが、私の隣にとどまることが多くなった。話を振ってくれたり、視線が合うことも増えたと思う。
好きな本や音楽の話でも気があったし、彼の話す流行りの話題も楽しかった。話していると時間があっという間だった。
内心、人気のある彼と距離を縮めることで、他のご令嬢達に嫌われてしまうのではと心配していたけど、意外と気にする人は少ないようだった。私の気にしすぎだったのかな……。少しほっとした。
それから程なくして、夏休みに入った。兄は学園卒業後に大学進学を目指しているから王都に残ったけど、私は領地に帰ったので、休みの間、友人達や彼に会うことはなかった。
両親や領地の友達とたくさん話をしたし、何より領地ののんびりした雰囲気はホッとした。けど、新学期が少し待ち遠しかった。
長い休みが明け、久しぶりの学園。
「秋の収穫祭、よかったら一緒に行かない?」
彼が誘ってくれた。
秋の収穫祭は、王都の広場を中心に五日かけて催される。秋に収穫された野菜をふんだんに使った料理の出店や、品評会を兼ねた国中の物産店が並び、会場のあちこちで演奏や舞踊、大道芸などが見られる、貴族も平民も関係なく、一年で一番盛り上がるお祭り。
うちの領地も、収穫祭が始まった当初から代々欠かさず出店を続けている。
昨年までは家族と毎日のように行っていたけど、今年は兄もお友達と行くって言ってたし、一日くらいいいかな。
「もちろん行くわ。楽しそう!」
彼が嬉しそうに笑った。
収穫祭の日はよく晴れていた。
今日は領地の毛糸を使った編込み模様のカーディガンに町娘風のスカート、編み上げブーツ姿。髪は前髪を下ろして、毛先を巻いたツインテールにしてもらった。ちょっといつもより可愛らしい感じ。2つ年上のマリに、お祭りだしいつもとイメージを変えたほうがいいと力説されたから。
迎えに来てくれた彼も、シャツにジレ、シンプルなパンツ姿。いつもよりラフな感じだけど、何となくお洒落だ。キラキラは隠せず、平民にまじれる感じがしない。
「今日の姿も可愛いね。新鮮だ」
私の姿を見て破顔した。家の人達は大丈夫と言ってくれてたけど、似合わないと思われたらと不安だったから、よかった。
「せっかくだから、国中の美味しいもの食べつくそうよ。ちゃんとお腹空かせてきた?」
彼がイタズラっ子のように微笑む。
「もちろん!朝はスープだけにしたわ!」
「いいね!けど食べきれない分は僕がもらうから、無理しないで」
「ふふ。ありがとう」
会場に近づくにつれて人が増えてきた。お祭りだからか、街全体が浮き足立っている。歩いているだけで人とあたってしまいそう、と思ってたら、少し前を歩いていた彼が振り返って、手を差し出してきた。
「混雑してるから、離れないようにね」
エスコートして貰えるように彼の手にそっと手を乗せた。
「!」
指先だけ繋がれると思ってたのに、掌全体を包むようにしっかりと握られて、そのまま軽く引かれて歩き出した。驚いて胸がどきどきした。
人混みを縫うように進みながら、私の手を引く彼の背中を見上げた。
痩せ型だけどしっかりした肩ときらきらサラサラな金の髪。繋がれた手が思ったより力強くて、口元がなんだか緩みそうになるのを隠すため、そっと下を向いた。
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