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生徒会と憧れの方 side A
しおりを挟む昨日、兄の大学合格の知らせが届いた。
「明日からひとりで学園に行かないと行けないのね」と言うと、「婚約手続きはまだ先だ」と額を指で強めに弾かれた。
そういった訳で、今日も一緒の馬車で学園へと向かう。それも数日のことなのだと思うと不思議な気持ちになる。
「お兄様、改めましておめでとうございます」
心からの言葉を伝えると、兄はまた何とも言えない顔になる。私からのお祝いを素直に受けとる気はないのかしら……。
「ありがとう嬉しいよ」
流された。
「ところで、今日、ハムウェイス侯爵令嬢から一緒に昼食をとりたいと言われている」
「…………誰と?」
「私達と」
お兄様と同じクラスのハムウェイス様は、侯爵家のご令嬢で私の憧れの方だ。美しく聡明であるのは勿論、何より卒業後、王宮事務官になることが決まってらっしゃる。
ご一緒にランチだなんて、嬉しい。けど怖い。
「……何故でしょう?」
「お前に用があるみたいだ。だから私は別にいなくてもいいだろう」
「一緒に行ってください、お兄様」
命綱にしがみつくかのように兄の手を握りしめた。
その日の昼休み、兄が教室まで迎えに来てくれたので、一緒に高位貴族用のサロンに向かった。
サロンに入ると、ハムウェイス様がすでにいらっしゃった。慌ててご挨拶すると、「緊張しないで」と笑ってくださる。近くで見ると溢れ出る気品がとどまらない。
カチコチに固まっている私を、兄は隣で苦笑いを浮かべて見ている。役に立たない。
嫋やかな笑みを浮かべてハムウェイス様が話し出す。声も麗しい。
「来てもらったのはね、貴女をわたくしの卒業後の生徒会役員に推薦したいの」
「……………………はい?」
失礼ながらたっぷり時間をかけた上、気の抜けた返事をしてしまった。
生徒会役員の推薦ということは、ハムウェイス様のあとを引き継ぐということだ。私は試験の点数は良い方かもしれないけど、実力も存在感も到底足元にも及ばない。
驚きすぎて顔色が白くなる私を見かねてか、兄が口を挟んでくる。
「大丈夫だ。役員と言っても、一年後には第三王子が入学されるから、裏方みたいなものだ」
まったく大丈夫じゃない。
「そうね。今年は頼りになる3年生がいるし、来年には第三王子殿下が会長になるでしょうし、心配ないわ」
麗しい笑顔に思わず肯定したくなるけど、心配なくなくなくない。
「王宮事務官を目指しているなら、いい話だと思うのだけど……。学園長推薦も受けやすいですわよ」
「!」
「わたくしも戴きましたし」
ハムウェイス様が駄目押しのように言葉を添える。
王宮事務官は基本的には登用試験に合格する必要があるが、毎年数名、学園長の推薦を受けられる学生がいる。その枠に入れれば、私の夢はより現実的なものになる。
「……精一杯努めさせていただきます」
ハムウェイス様は満足そうに微笑んだ。
教室に戻るためひとりになると、急に不安になってきた。生徒会なんて大役、私にできるのかしら……。役員は王族以外は家格で選ばれることはなく、優秀な方ばかりだ。その中に名を連ねるなんて……怖い。要領のいい方ではないから、きっとこれまで以上に時間にも追われることになるだろう。せっかくできた友人達との時間も減ってしまうかも。なぜだか彼の顔が思い浮かんだ。
教室に入ると、すぐに彼が話しかけてきた。心配そうに顔を覗き込んでくる。私はハムウェイス様に会い、生徒会役員に推薦していただけたことを話した。
私の不安な気持ちを汲み取ってくれてるのか、彼も眉を寄せている。
「先輩方もいるし、来年には第三王子殿下を会長としてのお迎えするから、裏方のような役目だと言われたけど……。やっぱり私には荷が重いのかも……」
不安な気持ちが強くなって思わず俯いてしまう。そんな私を見て、彼は「うーん」と考えるように唸り声をあげた。
「大変かもしれないけど、君なら大丈夫だと思ったから、ハムウェイス様も推薦してくれたんだと思うよ。それに、王宮事務官を目指すなら受けた方がいいんじゃないかな。第三王子も生徒会に加わるなら、きっと損はないと思うよ」
明るくて優しく声だった。
そうよね、ハムウェイス様がせっかく私を見つけてくださったのだから、期待に応えないといけないわ。王宮事務官になるためにも良いことばかりなのだから、迷う必要だってないんだわ。
目の前が明るくなった気がした。
「そうよね……。とにかく精一杯やってみることにするわ!ありがとう!」
彼と話せてよかった。
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