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大切な恋心 side J
しおりを挟む彼女とのデートを母に邪魔されたのは面白くなかった。直接彼女に接触することはなかったけど、それでも不快だ。
僕はロブに会うため、店の支配人室に向かう。ロブはこの店では接客することは殆どない。扉を開けたのが僕だと気づくと、椅子から立ち上がり、この間と同じように眉尻を下げた。
「彼女が店に来ることロブが母上に伝えたの?」
「坊っちゃま、申し訳ありませんでした。その、嬉しくて、つい……」
ロブと母も長い付き合いだ。きっと何気ない会話のひとつだったんだろう。ロブは子供の頃から僕をとてもよく世話してくれたから。
「……別にもう構わない。あの後、何もないし」
そう伝えてもロブは眉尻を下げたままだ。鍵のついた棚から小さな箱を取り出してきた。
「お約束より遅れてしまいましたが……」
手渡されたその箱には金と青の細いリボンが掛けられていた。僕の髪と瞳の色。中にはきっと彼女に渡すはずだった指輪が入っている。
「これは、もういらないかも知れない。伯爵家のご令嬢に渡すのには、少し物足りないかなとも思うし」
普段慎ましい彼女が受け取ってくれそうな物をと選んでしまったけど、やっぱり伯爵令嬢への贈り物としては相応しくないと思う。
「そうですか…………。確かにご令嬢への求婚の品としては心許無いかも知れませんが、あの方に、坊っちゃまの恋心をお伝えするには良いものかと存じます」
「恋心!?」
その言葉に顔が熱くなる。ロブは目尻に皺を寄せて微笑んだ。
「はい。どうか、大切になさってください」
僕は何も答えられずに、顔を赤くしたまま、小箱をジャケットのポケットに仕舞い込んだ。
次の日、朝から彼女は何だかそわそわしていた。ランチに誘ってみようと思ったけど、昼休みには兄君が教室までやって来て、あっという間に連れて行ってしまった。
取り残された僕は、声を掛けてくれた友人達とランチをとることにした。
しばらくして、戻ってきた彼女は頬がほんのりと染まって見えた。気になって声を掛けると、昼はハムウェイス侯爵令嬢と一緒だったそうだ。相手が女性であったことにほっとした。
それにしても、生徒会への勧誘か……。彼女が表舞台に立つことに少しだけ不安を感じた。
「先輩方もいるし、来年には第三王子殿下を会長としてのお迎えするから、裏方のような役目だと言われたけど……。やっぱり私には荷が重いのかも……」
彼女は優秀だけど、自己肯定感がたまに低くなる。こういう時は応援しないと。
「大変かもしれないけど、君なら大丈夫だと思ったから、ハムウェイス様も推薦してくれたんだと思うよ。それに、王宮事務官を目指すなら受けた方がいいんじゃないかな。第三王子も生徒会に加わるなら、きっと損はないと思うよ」
僕の言葉に、彼女の俯せられてた瞳に光が戻ってくる。活力が漲るようだ。以前も感じたけど、彼女は応援するととても喜んでくれる。
「そうよね……。とにかく精一杯やってみることにするわ!ありがとう!」
元気になってくれたみたいだ。可愛い。
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