【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた

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ピンクが出る噂と夏休み side A

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「聞いてるか?最近学園に『ピンク』が出るらしいな」

 王宮の廊下を歩いていると、エイデンに突然話しかけられた。私に対しては相変わらず挨拶を省略するのね……。学園にいた頃は生徒会の仕事以外ではあまり関わることが無かったけど、今は数少ない同期としてそれなりに仲良くしている。

 いつも不機嫌そうに眉間にシワを寄せて、少々ぶっきら棒な話し方をするけど、はっきりとした物言いは面倒くさがりな私にはやりやすい。
 けどそれにしても、いきなりの話題に情報量が少なすぎる。ぴんくがでるぞ~って何さ。

「……『ピンク』とは?」

「何でも2年に編入した庶子の男爵令嬢が、次々と令息たちを陥落させてるらしい。それの髪色が珍しいピンクブロンドなんだと。当然令嬢たちには嫌われてて、それが来ると『ピンクが出た』って言うらしいぞ」

「それは、大変なことね……?」

 次々と陥落……。想像できない。

「異常だろ。第三王子を始めとした生徒会も陥落済みだと」

「えぇ!?まさか!」

 第三王子殿下は、確かに王族にしては身分に囚われない友好的な方だけど、その責務を理解して努力しているのを見ていた。公爵令嬢という婚約者がいるというのに、そんな、他の令嬢となんて……。

「当然周りも諌めようとしてるが、まったく会話にならないらしい。今では『ピンク』は話が通じない、関わりたくないって、俺の婚約者も気味悪がってる」

「…………婚約者、いたんですか?」

 思わず丁寧語になる。

「? まあな。相手はまだ学生だからな。仲は良いぞ」

 衝撃だ。この人の眉間のシワも愛するってことなんでしょうか……。お会いしてもないのに婚約者様に尊敬の念が湧いてくる。もしかして『ピンク』という呼び名は婚約者様がつけたのかしら……?

 エイデンの眉間を見ながら、無意識に自分の眉間にもシワが寄る。エイデンは何かを感じ取ったようだ。

「お前…………。いや、いい。とにかく気をつけろよ。お前の婚約者、大学とは言えまだ学園にいるんだろう?見目のいい男は特に狙われやすいらしいから釘でも刺しとけ」

「そうね。ありがとう」

 エイデンの微妙な情報にとりあえずお礼を言ってその場を離れた。



 執務室に戻ると室長に夏休みが欲しいかと聞かれた。王宮事務官は決まった長期の休みはないけど、年に何度かまとまった休みを申請することができる。
 もうそんな時期なのね……。学生のような長い夏休みはとれないけど、まだふたりで領地には行ってないのよね。

「そうですね。領地に婚約者と挨拶に行きたいので、できればいただきたいです。時期は相談してからでいいですか?」

「わかった。早めに頼む」

 次の休日うちに遊びにくる彼と話してみよう。


 彼と約束の日、少し暑いので風の通る庭のガゼボに席を用意した。
 私は彼から先日贈られたペパーミントグリーンの可愛らしいドレスを着ている。贈ってくるのだからこれが好みなのだろう、と素直な気持ちで着ることにしている。元々それほど拘りはないし。

 やって来た彼は、私の姿を見て「よく似合うよ」と褒めてくれた。よかった。
 お茶を飲みながらしばらくお互いの近況などを話す。……帰省のことも話さないと。

「そろそろ夏休みでしょう?婚約してからまだふたりで領地に行けてないし、貴方と都合のあう時期に休暇の申請をしようかと思うのだけど……、どうかしら?」

 彼の表情が曇って考える仕草をする。

「領地に行くとなると少なくとも1週間は欲しいよね。……実は今、新しい研究に加えて、学生と研究者の交流会の準備をしてるんだ。夏休みだけどそんなにまとめて時間がとるのは難しいかも知れない」

「そうなの……」

 がっかりしてしまう。そんな私の様子を見て彼は眉尻を下げた。

「ごめんね。ノーステリア領には行きたいとは思ってるんだけど、交流会とか関わる人が多いから時間が取りづらくて準備が大変なんだ」

「いえ。色々忙しいことは聞いていたし、まだ結婚まで時間があるからいいの。次はもっと早めに誘うことにするわね」

「そうしてくれると嬉しい。ありがとう」

 私が謝罪を受け入れると、ほっとしたように微笑んだ。

 ……そう言えば、

「知ってるかしら?最近学園に編入してきたピンクブロンドの女子生徒の噂」

 彼がピクリと反応した。知ってるのね。

「最近、第三王子殿下達といるのを見かけた子がそうかな。噂は聞いたことないけど、どんな噂?」

 本当に第三王子と一緒にいるのね……。どんなって、『ピンクが出た』なんて言えないわよね。私も見たわけではないし。

「……とても男性に人気があると聞いたわ。それで困ってる方も大勢いると」

「ああ、確かに……。可愛らしい娘だったから、それでかな。僕は大学にいるから詳しくは分からないよ」

 可愛いことは間違いないのね。それよりもエイデンの言う『釘を刺す』ってどうしたらいいのかしら……。

「…………気をつけてくださいね」

「大丈夫だよ」

 彼は少しだけ困った顔をした。


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