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彼女と夏休みの話 side J
しおりを挟む今日は久しぶりに学園の図書館に向かっている。
金属加工が得意な隣国との繋がりを模索するため、文化や風習について調べようと大学の図書館に行ったら、目当ての本が学園に貸し出されていた。できれば早く読みたいと訴えたら、入館の許可を取ってくれたのだ。
学園の廊下を歩く。卒業してまだ半年と経っていないはずなのにひどく懐かしく感じる。図書館につながる廊下に差しかかり中庭に目をやると、やけに目立つ集団がいた。
第三王子達、生徒会のメンバーだ。芝生に座り込んで遠目でも楽しそうに話しているのがわかる。それにしても学園内で芝生に座るなんて珍しいことをするなと眺めていると、集団のなかにバラ園で会ったピンクブロンドの女子生徒を見つけた。第三王子の婚約者である公爵令嬢の姿はない。
以前会ったときそうは見えなかったけど、もしかして生徒会役員なのかな?僕は考えるのはそれまでにして、図書館に向かうことにした。
今日は伯爵家のタウンハウスで彼女とお茶会だ。
初夏らしく少し暑い日だけど、通されたガゼボは爽やかな風が吹いてきて心地よかった。
目の前の彼女は僕が贈ったペパーミントグリーンのドレス姿だ。白い肌によく似合っている。最近は前にもまして身に着けるものを贈るようにしている。仕事のときは仕方がないけど、普段は可愛くいてほしいからね。
お茶を飲みながらお互いの近況などを話す。彼女は仕事の内容は話さないけど、年上の同僚達のことをよく話題にする。あまり興味はないんだけど。しばらく話すと彼女が切り出しだ。
「そろそろ夏休みでしょう?婚約してからまだふたりで領地に行けてないし、貴方と都合のあう時期に休暇の申請をしようかと思うのだけど……、どうかしら?」
彼女は婚約してから度々領地に行く話をするけど、夏休みにか……。夏休みは隣国からの留学生達と約束もあるし、サマーパーティーの準備もある。
婚約者の生まれ育った地に行く必要はわかるけど、ノーステリア領は遠いし、兄君が受け継ぐもので僕のものになるわけじゃない。
面倒だな。
「領地に行くとなると少なくとも1週間は欲しいよね。……実は今、新しい研究に加えて、学生と研究者の交流会の準備をしてるんだ。夏休みだけどそんなにまとめて時間がとるのは難しいかも知れない」
「そうなの……」
彼女が目に見えてがっかりした顔をする。けど無理を通してきたりはしないはず。
「ごめんね。ノーステリア領には行きたいとは思ってるんだけど、交流会とか関わる人が多いから時間が取りづらくて準備が大変なんだ」
「いえ。色々忙しいことは聞いていたし、まだ結婚まで時間があるからいいの。次はもっと早めに誘うことにするわね」
「そうしてくれると嬉しい。ありがとう」
よかった。納得してくれた。……きっと結婚したら、何度もこういう話をするんだろうな。
そんなことをボンヤリ考えていると、彼女が突然話題を変えた。
「知ってるかしら?最近学園に編入してきたピンクブロンドの女子生徒の噂」
反射的に、咲きかけのピンクのバラに囲まれて笑う女子生徒の姿を思い出す。
「最近、第三王子殿下達といるのを見かけた子がそうかな。噂は聞いたことないけど、どんな噂?」
王宮で働いている彼女の元にまで届くなんて、どんな噂なんだろう。
「……とても男性に人気があると聞いたわ。それで困ってる方も大勢いると」
そんなことか。魅力的な女の子が編入してきたから、恋人や婚約者が取られるんじゃないかと心配してる人が多いってことだね。
「ああ、確かに……。可愛らしい娘だったから、それでかな。僕は大学にいるから詳しくは分からないよ」
とりあえず僕はその噂には関係ないよと伝えておこう。すると彼女は少し考える仕草をして、上目遣いで呟くように言った。
「……気をつけてくださいね」
「大丈夫だよ」
彼女も心配するんだな。ヤキモチなんて初めてだ。少し嬉しい。
それにしても、そんなに話題になるあの女子生徒はどういう子なんだろう……。
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