前世が見えちゃうんですけど…だから、みんなを守ります(本編完結・番外編更新)

turarin

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突然、変な能力が目覚めてしまいました1

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  伯爵家の長女スーザンは健康優良児だった。
  薄茶色の癖っ毛と、カールした長い睫毛に囲まれたくりっとした群青色の瞳も、ぷっくぷっくのほっぺも、2段、3段と肉のシワがある手足も、舌足らずなのに怒って叫ぶ癇癪も、誰も腹が立たない程にそれはもう可愛くて、可愛くて、愛されていた。
  
 レジェンド伯爵である、父マークは3歳のスーザンを完全に目の中に入れていた。もうとにかく可愛くて可愛くて。普通はやらない、オムツの交換までも、叱られながらも手を出してしまうほどに。

  マークはやり手の伯爵であった。貴族が基本的に魔力を持つこの世界で、彼は珍しい土属性を持っていた。肥沃な大地を領地にもたらす土魔法はまさに天の恵みであった。土木関係の事業も順調に進んでいて、レジェンド伯爵領の勢いは留まるところを知らなかった。
  
 そして、彼は貴族には珍しい愛妻家でもあった。彼の妻ヘレンはしがない男爵家の娘であったが、薄茶色の癖っ毛と大きな群青色の瞳、元気そうに、いつも上がり気味の口元、細い肩。
 
 パーティーで見かけた時、心臓がドッキンとした。一般的には平均的な見た目なのだが、どうしても話しかけねばならないと焦った。実はモテモテのマークは、あんまりドキドキしない。金髪、緑眼、長身、そして次期伯爵である。普通に結婚したい男ナンバー10には入っている。アプローチも多かったし、まあ、適当に結婚しようかなと思っていた。

  が、しかしときめいてしまった。熱烈に口説き落としたヘレンは、貴族なのに料理上手で、時々厨房に入り、手料理を屋敷のものに振る舞ってくれる。微力ではあったが、これも珍しい光魔法の使い手でもあった。この力は父の豊富な魔力とともにスーザンに受け継がれた。

  勿論、ヘレンもスーザン溺愛である。弟のアントニオはまだ乳飲み子で、それはそれで可愛いが、幼児とも赤子とも言えない年頃の3歳児は語り尽くせない可愛さであったから。

  そのスーザンが、高熱を出し、1週間も寝付いてしまったのだから、もう屋敷中、上を下への大騒ぎになり、そして、真っ暗に沈んだ…医師を呼んでも、治癒師を呼んでも原因不明。みな絶望した。

  8日目の朝、スーザンが目覚めた。産まれた時からそばにいた乳母はホッとして涙が止まらなかった。

「お嬢様!良かった。乳母は心配しておりました。お嬢様に何かあったら…と」

  しかし、彼女の顔をじっと見つめたスーザンは、未だかつてない大声で絶叫し、号泣した。
 それは数十分続いた。驚いて両親や、医師、侍女等が駆けつけるが、その度にスーザンは人々の顔をじっと見つめ、さらにいっそう大声で泣き叫ぶのだった。

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