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浄化の旅2
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レジェンド伯爵の領邸から、約 5日程かけて瘴気溜まりの地域まで到着する予定だ。スーザンとメイリン、そして武道派ではないクリスは馬車に乗る。他のメンバーは護衛を兼ねて馬上の人となっている。
相変わらずピンクメイリンはうるさい。
「どうして、スーザンさんも来るんですかあ。みんなに守ってもらって、私が瘴気を浄化すれば済むことですよねぇ。ひょっとしてチャーリーさんと一緒に来たかっただけですかあ?
ねぇクリスさんもそう思いますよねぇ?」
何気にクリスの膝に乗ろうとして、肘で拒まれている。かろうじて頑張るクリス。スーザンはひたすら無言を貫く。ちょっと当たっているところもあるので、何とも答えがたい。
「無視ですか?私が元平民だからってぇ、そういう態度とるんですかぁ。ひどぉい。」
クリスだって無視をしているが…
「あ、そうだ。クリス様、私クッキー焼いてきました。1枚いかが?」
墨のような丸いものを差し出すメイリン。
はっとするスーザンであった。これって、巷に蔓延る課金アイテムってやつてはないだろうか?ほら?!よくある、魅了アイテム!!
「いや、甘いものは苦手なので、結構だ。」
そうか、この拒否がかろうじて頑張るクリスを支えていたのか。甘いものが嫌いで良かった。
肉欲皇太子もミートアルバートも、単なる欲望に負けたのではなかったのか…今後の方針が少し見えてくる。
ふと気づくと車外が騒がしい。瘴気溜まりが近づくにつれて魔物の襲撃が増えてくる。
なんだかんだ言っても、肉欲皇太子、いや、その形容詞は外してやろう。ディーンも火魔法のかなりの使い手であり、アルバート(ミートははずした)も剣のみならず最強の水魔法を持っている。水魔法を、氷の刃としても、剣にまとわせても使うことが出来るアルバートは、間違いなく次期騎士団長に相応しい。本来、一本気ないい男なのである。この2人と、闇魔法のチャーリーがいれば、魔物討伐は万全だろう。
ところが、一筋縄ではいかなかった。空から馬車目がけて、まっしぐらに突っ込んできたのは巨大なワイバーンであった。
馬車の屋根を突き破る巨大な爪。
次に頭を車内に入れてきたかと思うと、メイリンをじっと見る。狙いは聖女だ。本能でわかっている。牙が密集した大きな口を開け、今、まさに火を吐こうとした時、クリスが立ちはだかり風魔法を放った。吐き出す炎と、クリスの風魔法が均衡している。
「メイリン嬢、強化魔法を!!!」
叫ぶスーザン。
「聖なる神の名のもとに、慈悲を与え給え!力を!!」
キラキラと光がクリスにまとわりつき、最強の風魔法が発動する。ワイバーンは遥か遠くへ吹き飛ばされた。
相変わらずピンクメイリンはうるさい。
「どうして、スーザンさんも来るんですかあ。みんなに守ってもらって、私が瘴気を浄化すれば済むことですよねぇ。ひょっとしてチャーリーさんと一緒に来たかっただけですかあ?
ねぇクリスさんもそう思いますよねぇ?」
何気にクリスの膝に乗ろうとして、肘で拒まれている。かろうじて頑張るクリス。スーザンはひたすら無言を貫く。ちょっと当たっているところもあるので、何とも答えがたい。
「無視ですか?私が元平民だからってぇ、そういう態度とるんですかぁ。ひどぉい。」
クリスだって無視をしているが…
「あ、そうだ。クリス様、私クッキー焼いてきました。1枚いかが?」
墨のような丸いものを差し出すメイリン。
はっとするスーザンであった。これって、巷に蔓延る課金アイテムってやつてはないだろうか?ほら?!よくある、魅了アイテム!!
「いや、甘いものは苦手なので、結構だ。」
そうか、この拒否がかろうじて頑張るクリスを支えていたのか。甘いものが嫌いで良かった。
肉欲皇太子もミートアルバートも、単なる欲望に負けたのではなかったのか…今後の方針が少し見えてくる。
ふと気づくと車外が騒がしい。瘴気溜まりが近づくにつれて魔物の襲撃が増えてくる。
なんだかんだ言っても、肉欲皇太子、いや、その形容詞は外してやろう。ディーンも火魔法のかなりの使い手であり、アルバート(ミートははずした)も剣のみならず最強の水魔法を持っている。水魔法を、氷の刃としても、剣にまとわせても使うことが出来るアルバートは、間違いなく次期騎士団長に相応しい。本来、一本気ないい男なのである。この2人と、闇魔法のチャーリーがいれば、魔物討伐は万全だろう。
ところが、一筋縄ではいかなかった。空から馬車目がけて、まっしぐらに突っ込んできたのは巨大なワイバーンであった。
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次に頭を車内に入れてきたかと思うと、メイリンをじっと見る。狙いは聖女だ。本能でわかっている。牙が密集した大きな口を開け、今、まさに火を吐こうとした時、クリスが立ちはだかり風魔法を放った。吐き出す炎と、クリスの風魔法が均衡している。
「メイリン嬢、強化魔法を!!!」
叫ぶスーザン。
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