前世が見えちゃうんですけど…だから、みんなを守ります(本編完結・番外編更新)

turarin

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浄化の旅5

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  頭がガンガンして、気持悪くなる。涙を流しながら、クリスは全部思い出した。

 小さい頃、母と父が頻繁に夜中に喧嘩していた。布団の中で、泣いた。姉が隣の部屋から入ってきて、2人で布団の中で泣いた…

 そして、ある日から、母しかいなくなった。

「お父さんはもう1つのおうちに行ったの。もう帰ってこないのよ。」

 お母さんがニコニコしてて、もう喧嘩も無いならいいかなあと思った。大好きな大好きなお母さん。泣いたり、怒鳴ったりしてる声はもう聞きたくない。

 しかし、思うようにはいかない。母は壊れてしまった。まもなく母の入院生活が始まり、姉とともに母の実家に移った。姉は頑張っていた。

「私はお母さんみたいに絶対にならない。1人でちゃんと生きていくから。」

 父からの養育費、慰謝料プラス元々裕福な名家だったから、祖父母に手厚く愛され、育てられた。残念なことに、俺は容姿が父そっくりだった。母、或いは、娘を捨てて、壊した男とそっくりの俺。誰も悪く無かった。虐待もされないし、姉との差別も無い。ただ、無意識な愛情の差は明らかだった。

 姉が一流高校、大学を経て、有名企業に入社した頃、俺も受験をくぐり抜けて、姉と同じ高校に入学を果たした。そこで、智美先生に会った。運動も苦手で、ぼっちで、コミュ症な俺に智美先生はよく声をかけてくれた。人恋しい俺はすぐに智美先生に恋をした。

 ある夜、少し酔って上機嫌な姉が、祖父母と俺に言った。

「好きな人ができたの。絶対に結婚して幸せになるわ。私、お母さんとは違うもの。」

「ほほう、それは言い知らせだ。今度連れてきなさい。」

「そうね。でもちょっとトラブってるから、もう少し時間かかるかなあ」

「あなた、無理はやめなさいよ。」

「わかってる、わかってる。でも、すっごくすてきな人なの。愛してるの…」  

 何だか不安になった。
  
 その日から程なくして、姉の様子がおかしくなった。仕事はこなしているようだが、夜は寝ているのか、いつまでも電気がついている。
 せかせか不安そうで、イライラしていて、突発的に深夜に出かける事もあった。急に笑い、突然に怒り出す。
 おかしい…これはまずい。
 祖父母も俺も感じていたが、どうしていいか分からなかった。

 遂にあの夜がやってきた。 
 最高潮に様子のおかしい姉が

「出かけてくる。アタシ、絶対に結婚するから。」

 と、叫ぶように言い捨て、家を飛び出す。

「俺、様子見てくるよ」

「おう、頼む…」

 不安になった。俺は姉を追いかけた。

 そして、見たのだ。
 歩道橋の上の智美先生と姉と長身の男性を…

 全部思い出した。
 先生、ごめんなさい。ごめんなさい。
 おれが……おれが…
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