前世が見えちゃうんですけど…だから、みんなを守ります(本編完結・番外編更新)

turarin

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浄化の旅6

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  前世を思い出し、散々涙を流し、後悔に苛まれたクリスだが、今は今。龍二ではなくクリスだということを再認識する。記憶は記憶である。今回も智美先生の言葉で、いや、スーザンの言葉で救われてしまった。
  メイリンの彼女への悪意はおかしい。何かあったら今度こそ守らねば。

 さて、瘴気溜まりへとやってきた。
 真っ黒の霧のようなものが、まるで実体があるかのようにかたまっている。
 浄化は聖女頼みである。

「わたし、がんばります。守ってくださいね」

「わかった…」

「………」

 皇太子からもアルバートからも、優しい答えは返ってこない。
 なんなのいったい!?気を取り直し、声を張り上げる。

「聖なる神の名のもとに慈悲を与えたまえ。浄化せよ!」

 キラキラした光が真っ黒い塊を包み込む。

 やった!

 誰もが思ったその時、ものすごい爆風、爆音とともに稲妻のような光が、黒い塊からあふれ出した。
 チャーリーは咄嗟に影で周囲に結界を作り、吹き飛ばされないように、皆を覆った。
 騎士達は皆剣を握り、魔法を放てるものは息を整えた。

 視界が開けてくると、目の前に想像を絶する大きさの魔物が現れた。黒い霧で覆われていて輪郭がはっきりしないのだが…たぶん魔物…らしい。赤い目が爛々と光っているのだけが見える。

 これは、無理だ……全員の諦め……沈黙…

「こんなの聞いてないわよ~~~!!助けて~~誰かあ!」

 と言うメイリンの絶叫のみが虚しく響く。

 そこに、

「苦しい……助けてくれ…痛いのだ。もう無理だ。飲まれてしまう。」

 全員の脳内に響く声、思念。

「………………」

「わかったわ!治してあげる」

 ずんずん黒い塊に近づくスーザン。

「スー!!!やめろ!!」

「スーザン嬢!!」

「あんた頭おかしいわよぉ!」

 塊に、触れる。意外にも、もふもふっとした。
 両手で魔力を流し始める。
 大きな傷が腹部にあり、絶え間なく血が流れ出している。そして、手や足先は瘴気に侵され、黒く染まり始めていた。 

 人は長く瘴気に触れると、体が黒く炭化し始め、治療しないと死に至る。知的な魔物や動物は完全に瘴気に侵されると、正気を失った後、死に至る。力のある魔物は通常瘴気になんて負けないのだが、負傷したり病に侵されていたりするとこんなことになってしまう。
 以前王都に飛来したブラックドラゴンは真っ黒い瘴気に覆われたまま、縦横無尽に暴れまわり、大災害を撒き散らした後、命を終えた。

 そんなことにはさせないと、治癒魔法をかけ続けるスーザン。

「瘴気の浄化、お願いします!」

「わかったわよ!
 聖なる神の名のもとに慈悲を与え給え!
 浄化!」
   
 スーザンの魔力がするすると魔物の体内を巡り始める。メイリンの浄化魔法も効いている。

「やった……」

 ああ、久々に気絶しちゃうなあ…
 意識を失った。





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