前世が見えちゃうんですけど…だから、みんなを守ります(本編完結・番外編更新)

turarin

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番外編 ディーンとリリー3

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 長年にわたり繰り返されてきた隣国との争いの原因は水である。高い山を挟み南側にこちらのバンドール国、北側に隣国マゼンタ国があるが、大きな河川はバンドールを流れており、マゼンタ国は慢性的な水不足に悩まされている。乾燥した地で作物もなかなか育たず、致し方なく川のある地を望んでのいざこざだ。

 今回の和平案は、宰相府で練り上げられてきたものだ。バンドールは大きな河川は多いが、夏の大雨などで氾濫を起こすことも少なくない。治水事業には莫大な費用と時間と労力がかかる。それを2国共同で行い、最終的に水路を築きマゼンタ国まで水を引くという計画だ。マゼンタ国が豊かになれば交易も盛んになり、双方に利がある。

 但し一朝一夕では終わらない。そこをどうやって折り合いをつけるかが、交渉人の腕の見せどころであった。マゼンタ語も流暢なリリーは交渉団の責任者として、それを任されてきたのだ。

 話し合いは数日に及んだ。辺境伯と、嫡男、元王太子という立場で俯瞰的視点を期待され、ディーンも参加した。リリーの交渉力にディーンは見とれた。昔、国の行く末を2人で語り合った時の彼女が、成長した姿でそこにいた。無事に交渉が成立し、長期にわたる契約が締結された時、双方から大きな拍手がおきた。

 夜の打ち上げパーティーで、ディーンとリリーは久しぶりに同じテーブルに座った。話題は尽きなかった。和平交渉のこと、辺境伯騎士団のこと、宰相府での仕事やクリスのこと、果ては子供の頃の思い出まで。たくさん話して、たくさん笑った。

「何だか、初めて王宮の図書館で会った頃みたいだな。」
「不思議ね。私もそう思ってた。ずいぶん長い時間が経ったのね。そう言えば、ディーン、結婚してないの?」
「ああ…僕は結婚しないかもなあ…」
「そうなの?」
「リリーは?」
「うーん、今のところ考えられないかな。仕事が楽しくて。」
「そっか…自由を満喫してるね。君の10年を奪ったのは僕だからな…」
「あら、でもおかげで今があるのよ。こうしてマゼンタ語も話せるようになったしね。治水工事は先が長いから、これから何度も辺境伯領にくることになりそうね。」
「そうだな。楽しみにしてるよ。」
「ふふふ、そうね。」





 時薬でしょうか。こんなに普通に話せて……
 この2人がこの先どうなるかは神のみぞ知る……かな。

 ここまで、読んでいただいてありがとうございます😃
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