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8、コタローイラつく
しおりを挟む帰りの会が終わってハナのいる4年3組に呼びに行ったら、 机の上にランドセルはあるのに、 アイツの姿が見当たらない。
あれっ? と思って周囲を見渡したら、 廊下の向こうのほうから男と2人で喋りながら歩いてくるハナの姿が見えた。
ーー なんだ、 アイツ。
小走りで駆け寄ったら、 ハナの隣にいる男が俺に軽く会釈して、 それからハナに向かってニコッとしながら「またね」と言って教室に入って行った。
聞かなくても分かった。 あれが『優等生の熊井くん』に違いない。
だって見るからに爽やかな台詞をサラッと吐きそうな爽やかさだった。
「ハナ、 何してたの? 」
「先生に頼まれて職員室までプリントを持ってったの。 あっ、 さっきの子が委員長の熊井くん」
「ふ~ん…… 」
「あとね、 ほら! 先生からクラス委員のバッジをもらったんだ。 可愛くない? 」
名札につけた、 赤地に白字で『委員』と書かれている、 桜の花を模ったバッジを自慢げに見せてくる。
「コタローも学級委員長だったらさ、 一緒の委員会になれて委員会集会の日に会えたのにね」
ーー バカヤロウ! こっちはお前が放送委員になると思って、 先生から学級委員長になれって言われたのを断ったんだよ!
「くっそ…… 俺ばっか…… 」
「えっ? 」
「…… ううん、 なんでもない。 帰ろ」
「…… うん。 待って、 ランドセルを取ってくるね」
教室には熊井がいると思うと、 なんだかハナを行かせたくないと思った。
「いい、 俺が取って来てやるよ」
「ほんと? やった~! 私の机はね、 前から2列目の…… 」
「いい、 知ってる」
ーー お前の机は前から2列目の左から4番目だよ!
お前のランドセルくらい見たらすぐに分かるっつーの!
ついでに言えば、 お前のランドセルはこのまえ木の枝で引っ掛けた時の大きな傷が右側にあるから、 全く同じピンク色のがあっても見分けがつくんだよ!
若葉さんが、「あの子は物を雑に扱いすぎる! 」って嘆いてたぞ!
ちょっとは気を付けろよ!
ああ、 なんかイライラする。
ハナは何も悪くない。 一緒に放送委員になろうって約束してたわけじゃないし、 俺が勝手に学級委員長を断っただけだ。
もちろん熊井も全く悪くない。 アイツはただの面倒見がいい爽やかクンだ。
そう、 俺が勝手にイラついてるだけ。
んっ? それじゃ、 俺が悪いのか?
いや、 俺だって悪くないよな?
俺はただ…… ハナが俺から離れていくのが嫌で、 俺以外のヤツと楽しそうにしてるのがムカついて、 誰にも取られたくないだけで……。
そうなんだよ、 俺はハナを誰にも取られたくないんだよ。
ちょっとは気付けよ、 馬鹿ハナ!
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