17 / 100
17、 ピリ辛い1日 (3)
しおりを挟む「コタロー、 キスしよう」
「へっ?! 」
コタローが慌てて周囲をキョロキョロ見回す。
「今日のぶん…… チョコの対価を支払ってない。 だから今から…… 」
「バカっ! こっち来い! 」
コタローは私が言い終わらないうちに手首を掴んでヒョコヒョコ歩き出す。
そのまま武道場の裏に回って、 裏口のドアの前で立ち止まった。
「アホかお前は! あんな所で不用心なことを言うなよ! 」
「ごめん…… でも私、 チョコをもらったのに対価を払ってないし、 おまけに迷惑かけたし…… 」
「だから、 足は俺の不注意だからお前が気にすることないし、 こんなのは湿布を貼っとけば明日には治るし」
「でも…… 」
「お前も今日は喉がピリピリして大変だったろ。 もういいよ。 気にすんな」
「だけど…… 」
「『でも』とか『だけど』とか、 うるさいよ、 お前。 まあ、 お前がキスしたいっつーのなら拒みはしないけどな」
ハハッと笑った顔を私がジッと見つめていたら、 コタローが笑顔を引っ込めて黙り込む。
「お前は…… したいのかよ」
私がコクリと頷くと、 コタローは一瞬目を見開いて、 唾をゴクリと飲み込んだ。
「…… するよ、 キス」
「おっ…… おう」
「…… 屈んでよ」
「…………おう」
そっか、 いつもは言わなくてもコタローが勝手に屈んでくれてたから気にしてなかったけど……。
コタローがこんなに屈んでくれないと届かないほど、 私とコイツとの身長差はついちゃってるんだ……。
今更ながらそんなことに気付いて、 何故かちょっと取り残されたような、 切ないような気持ちになった。
いつもと同じようにそっと唇に当てるだけのキス。
だけどそこには、 いつもの対価とは別の、 違う感情があるような気がした。
これは感謝? 感動? 謝罪の気持ち? …… 自分でもよく分からない。
だけどこれは、 小4の時からずっとしてきたのとは違う、 初めて自分から自分の意思でした口づけだ。
コタローが裏口の前のコンクリートの階段に座ったから、 私も隣に並んで座った。
「…… ハナも、一緒に車に乗ってけよ。 明日の朝も車で送ってくし」
「うん…… そうする」
「風子さん、 遅いね」
「あっ、 部活が終わる時間で頼んであったから、 来るのまだだわ」
「…… そうなんだ」
「うん…… 」
「電話してみたら? 」
「うん…… まあ、 いいじゃん」
「うん…… まあ、 いいか」
「うん、 まだいいよ」
もう喉のピリピリはとっくにおさまったはずなのに、 何故か唇だけがピリピリしている気がした。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました
樹里
恋愛
社交界デビューの日。
訳も分からずいきなり第一王子、エルベルト・フォンテーヌ殿下に挨拶を拒絶された子爵令嬢のロザンヌ・ダングルベール。
後日、謝罪をしたいとのことで王宮へと出向いたが、そこで知らされた殿下の秘密。
それによって、し・か・た・な・く彼の掃除婦として就いたことから始まるラブファンタジー。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる