21 / 100
21、 そういうんじゃないから!
しおりを挟む「ねえ、 さっきの女子部員さんと約束があったんじゃないの? 」
門の方へ歩いていく剣道部のみんなを見送って、 後ろからゆっくり歩きながら、 気になっていたことを聞いてみた。
「えっ? 」
「だって、 ほら、 コタローが私と帰るって言って、 あの人が『分かったわ』って…… 」
「ああ…… 色葉先輩…… あの人、 色葉舞っていう3年生の先輩なんだけど、 俺の足を心配して、 家まで付き添うって言ってくれてたんだよ。 大丈夫だって断ったんだけどな」
「ふ~ん…… 私が来ちゃってごめんね。 ってか、 だったらあの先輩と帰れば良かったのに」
ーー あっ、 なんかまたモヤッとしてきた。
「帰らねえよ! 」
コタローが急に大声を出したので、 私はビクッとして思わず立ち止まった。
「なんでそうなるんだよ。 だから、 断ったって言ってんじゃん! 大体さ、 お前が勝手に消えるから…… そうだ、 お前、 さっきはなんで逃げたんだよ」
コタローが拗ねたような顔で見つめてきた。
「えっ?! …… 別に…… 逃げてないし」
「嘘つくな。 俺と目があった途端に全力で走り出しやがって」
「いや、 全力じゃないし…… 」
「お前なあ~、 全力か半力か知らねえけど、 理由も分からず背中を向けられたらこっちは凹むっつの」
「だって、 あれは…… 」
迎えに行ったらコタローがパイプ椅子に座っていて、 あの先輩が足を持ってテーピングしていて……。
ーー あれ? それで、 なんで私は逃げたんだ?
モヤモヤしたから…… 違うな。
イラッときたから…… 何に?
「えっと…… ああ、 あれだ。 コタローが生意気にニヤけてたから、 なんかムカついたんだ」
「はあ?! オレがいつニヤけたっていうんだよ」
「あの色葉先輩に足を触られてヘラヘラしてたじゃん」
「してね~し! …… って、 待って、 あれ、 お前にはそんな風に見えてたの?! 」
コタローがまた立ち止まって愕然とした顔をした。
「おい、 ハナ! あれは違うからな! あの人はただの部活の先輩で、 俺のテーピングが緩んでたのを見かねて直してくれただけで、 そういうんじゃないから! 」
私の両肩をガッシリ掴み、 必死の形相で訴えてくる。
「マジで違うからな! そういうんじゃないから! 信じろよ! 」
「コタローのことは信じてるけどさ…… そういうんじゃないって…… 何が? 」
「そういうって言うのは…… 」
コタローはそこで言葉を切って、 苦笑しながら私の髪をクシャッと乱暴に撫でた。
「まあいいや。 とにかく、 俺はお前と帰りたいんだよ。 だからもう、 勝手に逃げるなよ」
「…… うん」
ーー あっ、 なんか胸やけが治ったかも。
「あっ、 そうだ! 京ちゃんがロールケーキをくれたからあげるよ」
「ロールケーキ? 」
「うん、 抹茶とイチゴの2種類。 帰ったらコタローの部屋に行くから一緒に食べようよ」
「お前も食うんかよ」
「いや、 さっきまでは胸焼けがしてたから全然欲しくなかったんだけどさ、 なんか治ったっぽい」
「そんじゃ母さんに内緒でハチミツ入りの紅茶を淹れてやるよ」
「やった~! 」
「ハハッ、 ついでに塾で明日のチョコも選んでけよ」
うん、 そうそう、 この感じ。
やっぱりコタローと私は、 こんな感じがいい。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました
樹里
恋愛
社交界デビューの日。
訳も分からずいきなり第一王子、エルベルト・フォンテーヌ殿下に挨拶を拒絶された子爵令嬢のロザンヌ・ダングルベール。
後日、謝罪をしたいとのことで王宮へと出向いたが、そこで知らされた殿下の秘密。
それによって、し・か・た・な・く彼の掃除婦として就いたことから始まるラブファンタジー。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる