45 / 100
45、 コタロー期待する
しおりを挟む「ねえコタロー、 やっぱり雑貨を見に行っちゃ駄目? 」
「…… ったく、 しょうがないな…… コイツらはロッカーに入れとこう。 氷と一緒に放り込んどけば大丈夫だろ」
「やった~! 」
ーー 『見に行っちゃ駄目?』って、 聞いた時点でもう行く気満々なくせに。 そんな上目遣いでお願いされたら駄目って言えるわけないだろっ! お前は小悪魔かっ!
「いいよ、 ほら、 雑貨ってどの店だよ」
「やった~! あのねぇ、 2階の新しいお店! 」
ああ俺って、 本当にコイツには甘々だ。
俺たちが小さい頃から良く通っているショッピングモールは、 学校から自転車で北東に12分程、 家からだと北西に12分程の距離……
つまり、 家と学校を結んだ三角形の頂点に位置しているので、 学校帰りの寄り道にはもってこいの場所だ。
2階建ての建物の1階部分には衣料品やアクセサリーのブティックの他に、 スーパーマーケットやレストラン街、 家電店などが併設されていて、 2階に上がると雑貨や本屋、 ゲームセンターに映画館まである。
ハナのことだ、 雑貨が見たいと言っても、 どうせ買い物途中で急に思いついただけで、 大して欲しいものがある訳ではないんだろう。
見たい店があるのなら、焼き肉パーティーの買い出しをする前に言ってくれよ…… とは思ったけれど、 ハナが欲しいものに興味はあるので、 とりあえずお付き合いする事にした。
ハナがエスカレーターで転びそうになったのを幸いに恋人繋ぎに成功した俺は、 絶対に離さないという意気込みでギュッと指を絡めていたけれど、 目的の雑貨屋に着いた途端、 「わっ、 可愛い! 」の声と共に、 あっけなく逃げられた。
ハナは真っ先にアクセサリーコーナーに走り、 ヘアゴムやシュシュを物色している。
そしていつものように、 めちゃくちゃ真剣に悩んでいる。
ーー ああ、 紺色のシュシュか茶色かで迷ってるのか。 両方買えば良さそうなもんだけど、 どうせお小遣いを使い込んで予算が厳しいんだろうな。
「ハナ、 どっちを買うの? 」
「う~ん、 紺色か茶色かで迷っててさ。 校則だと黒か紺か茶色でしょ? でも黒は嫌かな……って」
「両方買えば? 」
「お小遣いが残り少ないから、 ここで使い過ぎたくない」
俺が隣に立って聞いたら、 案の定予算の心配をしている。
「紺色にしとけば? 」
「えっ、コタローは紺がいいと思う? 」
「どっちもいいと思うけど、 とりあえず紺にしとけよ」
「ん? 良く分かんないけど、 まあいいや、 紺色にしとこっと」
「あっ、 私がレジに並んでる間、 コタローは勝手にいろいろ見ててね」
そう言い残して行ったので、 俺は適当に店内を見て回ることにした。
文房具コーナーでペンケースを触っていたら、 視線を感じてバッと顔を上げた。
レジの列に並んでるハナと目が合ったと思ったら、 パッと逸らされる。
ーー んんっ?
ペンケースを触る。 視線。 ハナと目が合って逸らされる。
それを無意味に3回くらい繰り返した。
念のため、 店内で移動してみた。 意味もなくぬいぐるみなんぞを触ってみる。 視線。 ハナと目が合う。 逸らされる。
ーー んんんっ?
これはなんか変だぞ。 何故だかめちゃくちゃ見られてる。
ハナの行動パターンは大抵把握してるはずなのに、 これは新しいやつだ。
頭の中にハテナマークを沢山浮かべながら落ち着かずにいたら、 買い物を済ませたハナが寄ってきて、 「ねえねえ、 コタローってイラックマのぬいぐるみが欲しいの? 」と聞いてきた?
「えっ、 別に欲しくないけど…… なんで? 」
「だってさっき触ってたじゃん、 イラックマ」
「ああ…… ただそこにあったから手に取っただけで…… どうして? 」
「ううん、 別に」
「買い物は終わった? この店はもういい? 」
店を出ようと足を外に向けたら、 腕を掴んで止められた。
「じゃあさ、 ペンケースが欲しいの? 」
「えっ、 なんで? 」
「さっき触ってたじゃん、 ペンケース」
「ああ…… 今使ってるやつのファスナーがバカになってきたから、 そろそろ買い替えどきかなって思って見てたんだけど…… 」
「どれ?! 」
食い気味で聞かれて、 ついでにさっきのペンケースコーナーに引っ張って連れて行かれた。
「どれ?! 」
「えっ? 」
「どれ? どの色? 黒色が好きだから黒いヤツがいいの? 」
「あっ…… ああ、 実はもういいなぁって思ってるのがあって、 インターネットで注文しようと思ってるんだけど…… 」
「えええっ?! 」
うわっ、 凄い勢いで驚かれて、 こっちが逆にビビるわっ!
そして俺の発言を受けてあからさまに凹んでいるハナを見て、 ふと思った。
ーー あれっ? コイツってもしかして、 俺に何かプレゼントしようと思ってないか? 誕生日か? 誕生日プレゼントなのかっ?!
そしてこの流れは、 サプライズを狙ってないか?
だけど変だ。
俺へのプレゼントだったら、 ハナはこんな風に探りを入れたりしないし、 ましてやサプライズなんて手の込んだことはしない。
自分が俺の部屋に置きたいものを独断で選ぶか、 もしくは一緒に買い物に来た時に、「コレでいいよね? 」で即決まりだ。
なんなんだ? なんでか今日は新しいパターンが多くて気持ち悪い。 ハナらしくない。
う~ん……。
ちょっと逆に探りを入れてみるか。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
伝える前に振られてしまった私の恋
喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
第二部:ジュディスの恋
王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。
周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。
「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」
誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。
第三章:王太子の想い
友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。
ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。
すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。
コベット国のふたりの王子たちの恋模様
つかれやすい殿下のために掃除婦として就くことになりました
樹里
恋愛
社交界デビューの日。
訳も分からずいきなり第一王子、エルベルト・フォンテーヌ殿下に挨拶を拒絶された子爵令嬢のロザンヌ・ダングルベール。
後日、謝罪をしたいとのことで王宮へと出向いたが、そこで知らされた殿下の秘密。
それによって、し・か・た・な・く彼の掃除婦として就いたことから始まるラブファンタジー。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる