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58、 コタロー、 崖っぷちに立たされる (1)
しおりを挟む「コタロー、 ちょっと顔を貸してもらえる? 」
クラスの仲間と中庭で弁当を食べ終わって教室に戻った途端、 京ちゃんから肩を叩かれた。
顔から怒りを隠そうともせず、 キッと下から睨みあげ、 親指で教室の外に出るよう促される。
「…… 分かった」
デジャブだ……。
そして俺は今回も、 今から何について説教されるのか、 おおよその見当がついている。
「ハハッ、 思いっきり9月と同じシチュエーションだな」
「ハハッ、 じゃないよ! 一体どういうこと? いつの間にコタローと色葉先輩が学校公認カップルになってるのよ! 」
前に呼び出された時と同じ渡り廊下で、 前以上に怖い顔をした京ちゃんに詰め寄られた。
「そんなの俺だって知りたいよ。 何をどうやったらそこまで好き勝手に解釈出来るのか…… 」
京ちゃんが目の前に突き出したスマホの画面には、『# コタ色 スナップショット』のハッシュタグで検索したSNSの書き込みがズラッと並んでいる。
内容は分かっている。 俺も前に見て愕然としたから。
そこには、 俺が色葉先輩と自転車置き場で喋っているところや武道場でタオルを渡されている瞬間、 滝高の文化祭で並んで歩いている姿などが、 いくつかの写真とともに面白おかしく書き立てられていた。
『コタ色』というのは、 『コタロー』と『色葉』をセットにした呼び名らしい。 アホかっ!
「そこに書かれてるのは全部デタラメだよ。 俺は色葉先輩とは付き合ってない」
「だけど、 この写真の状況になったのは本当なんだよね? 自転車置き場で顔を見合わせて笑ってるのは君だよね?! まさかこれが全て合成写真だとか言わないわよね? 」
「それは…… 」
今日の京ちゃんは容赦なく責めてくる。
そりゃあ、 こんな写真を撮られたのは俺に隙があったからなんだろうけど、 せめて弁解はさせて欲しい。
朝練を始めてしばらく経った頃、 なぜか道の途中で色葉先輩が待っているようになった。
俺が「おはようございます」と言って通り過ぎると、 後ろから一緒についてくる。
途中で特に何を話すわけでもない。
けれど、 駐輪場で話し掛けられたら無視をするわけにはいかないだろう?
朝練は俺が1人で勝手に足さばきと素振りをしてるだけだったのに、 「相手がいる方がいいでしょ? 」と、 何故か毎朝顔を出すようになった。
顧問の先生にどう話をつけたのか知らないけれど、 武道場のスペアキーまでゲットしている。
わざわざ職員室に鍵を取りに行く手間が省けた代わりに、 彼女に鍵を開けてもらわないといけなくなった。
滝山高校の文化祭だって、 最初は剣道部の仲間たちと一緒だったんだ。
みんなで滝高の武道場を見学に行った後、 剣道部顧問の濱口先生が推薦入学についてアドバイスをくれると言うので、 俺と色葉先輩だけが残って話を聞くことになった。
そのあとみんなに合流しようと移動している時に、 あちこちで写真を撮られたのは気付いていた。
「だからさ、 ぜんぶ不可抗力っていうか、 周りが勝手に勘違いしてるだけで…… 」
「色葉先輩を追いかけて滝高に行くっていうのは? 」
「そんなわけないじゃん! 希望の大学に行くにはレベル的にもあそこがいいかなって前から思ってたから、 推薦が取れるならその方が確実だと思って話を聞いただけ」
「1年生に告られて、 色葉先輩のために『好きな人がいる』って断ったって言うのは? 」
「ナニソレ、 どこ情報なの? 告られて断ったのは本当だし、 何度もしつこかったから『好きな子がいるから』とも言ったよ。 でも、 そこでどうして色葉先輩が出てくんの? みんなの想像力が逞しすぎて恐ろしいわ! 」
「それじゃあ、 『腐れ縁の幼馴染と別れて色葉先輩と付き合い出した』ってことは無いのね? 」
「はぁぁあっ? 今はそんな話になってんの?! 冗談じゃねえよ! そんなのがハナの耳に入ったら、 俺はもう生きてけねえよ! 」
ーーハナがスマホの機能を使いこなせていないアナログ人間で良かった……。
そう胸を撫で下ろしていたら、 京ちゃんから死刑宣告が下った。
「そんなあなたに残念なお知らせがあります。 昨日ハナがお菓子部に来て、『火のないところに煙は立たない』って言っていました」
ーー えっ、 マジか……。
俺終了のお知らせが耳元で聞こえたような気がした。
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