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74、 自信充電!
しおりを挟む「…… と言うことで、 我が校の剣道部から、 団体戦の5名と個人戦の天野虎太郎くんが県代表として全国大会に出場することになりました。 天野くんは去年の同大会で、 見事準優勝を果たしており…… 」
夏休み前の全校集会で、 校長先生が我が事のように自慢げに、 コタローのことを語っている。
まあ、 そうなるのも無理はない。
去年の準優勝でコタローの名は学生剣道界に知れ渡り、 剣道雑誌に学校名とともに大々的に取り上げられたのだから。
今年も8月に行われる全国大会の優勝候補として、 練習風景やインタビューと共に見開きで紹介されている。
うちの母親が、「ハナ、 コレを見てみなさいよ、 コタロー君がめちゃくちゃカッコよく載ってるから! 」と雑誌を買って見せてきたけれど、 そんなことは既に知っている。
だって私はその雑誌を発売日に買ってきて、 とっくに読み終わってるんだから……。
「ハナ、 もちろん行くでしょ? 」
隣に立っている京ちゃんから話しかけられて、 集会が終わっていることに気が付いた。
「あっ、 ごめん。 校長の話の途中から聞いてなかった」
「もうっ! だからね、 今年は学校がバスを出して、 3年生みんなで剣道部の応援に行くんだって」
「えっ、 嘘っ! 甲子園みたいじゃん! 」
「うちは野球部が弱いから、 校長にとっては剣道部の全国大会出場が甲子園みたいなもんなんでしょ。 特にコタローは優勝候補筆頭だし、 そりゃあ期待するでしょ」
ーー そっか…… コタローはすっかり全国区の有名人なんだ。
「なんか凄いよね、 コタローって。 文武両道で優しくてモテモテで…… 完璧すぎて参る」
「ハナ…… それっておノロケですか」
「えっ、 違う違うっ! 自分との差を改めて突きつけられてビビるって言うか、 私なんかでいいのかな? っていうか…… 」
その言葉を聞いた途端、 京ちゃんは眉を動かしてムッとした表情になった。
「ハナ、 それはダメ。 『私なんか』って言ったら、 ハナのことを大好きでいてくれるコタローにも御両親にも失礼だよ」
「でも…… 」
「ハナは可愛くて優しい良い子だよ。 長い付き合いの私が言うんだから間違いない」
「京ちゃん、 優しい」
「嘘やお世辞じゃないよ。 それにハナはさ、 コタローのために春から頑張ってきたじゃない。 いつも『メンドクサイ』が口癖だったハナが、 こんなに必死になるって凄いことだと思うよ。 私、 結構感動してるもん」
「そっか~、 私、 ちょっとはコタローに近づけてるのかな」
「うん、 めちゃくちゃ近付いてるし、 努力で言ったらもう肩を並べてるって。 それにさ、 コタローは私よりもずっとずっと長く、 ハナを隣で見てきてるんだよ。 そのコタローがハナじゃなきゃ嫌だって言ってるんだもの。 私以上にハナの魅力を分かってるんだよ。 自信を持ちなさいって! 」
「自信を持ちなさいって! 」
バシン!
「ヒャッ! 」
京ちゃんの言葉が終わってすぐ、 後ろから山びこみたいに同じセリフが聞こえてきて、 同時に両肩をバシン! と叩かれた。
「えっ、 何?! 」
振り向くとコタローが、 私の両肩に手を乗せてニコニコしている。
「…… なんだよコタロー、 痛いし重い!」
「ええ~っ! 自信が無いって言ってるから充電してやったのに、 俺だけ仲間外れにするなよ。 ほれ、 もっと充電してやるよ。 自信充電~! 」
両肩をグイグイ押して体重をかけてくる。
「重いっ! 充電いらんっ! 」
そんな私たちの様子を黙って見ていた京ちゃんが、 急に口を開いた。
「…… ねえコタロー、 私たちの会話、 どこから聞いてた? 」
ーーあっ!
京ちゃんの質問に、 私がドキッとした。
ーー そうだ、 最初から聞かれてたら……。
私の計画が、 台無しじゃないか……。
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