93 / 100
<< 番外編 >>
優勝インタビューが甘いんですけど!(2)
しおりを挟む『月刊 剣道ニッポン 10月号』
今月号は、8月に京都武道センターで開催された『全国中学生剣道大会』の結果と詳細、優勝した 天野虎太郎選手のロングインタビューを全文掲載!
記者「天野選手、この度は優勝おめでとうございます」
天野「ありがとうございます。それと……お騒がせして申し訳ありませんでした」
*天野選手は試合終了後の会場で恋人と堂々とキスをするという大胆な行動で、観客や関係者を驚かせた。
記者「いやぁ~、驚きました。真面目で寡黙な印象のある天野選手が、まさか観衆の面前で堂々と公開ハグとキスを披露するとは!」
天野「公開……っ!いや……勢い余ってというか、感情が爆発して抑えられなかったというか……本当に申し訳なかったです」
記者「ですが、会場の空気は 概ね好意的で、拍手と声援に包まれていましたよ」
天野「それでも……神聖な武道場でああいう事をしたというのはやっぱり武士道に反する失礼な行為だったと思いますし、いくら試合後でテンションが上がっていたからって、アレは駄目でした。心から反省しています」
記者「それが分かっていても止められなかったと(笑)」
天野「……はい、あの試合は彼女のおかげで勝てたので……誰よりも先に感動を伝えたくて、つい……」
記者「仲が良いんですね。お付き合いは長いんですか?」
天野「はいっ!……あっ、いいえ……幼馴染なんで付き合い自体は長いんですが、試合に勝ったら彼女になってくれるって約束してて……」
記者「それで優勝して公開キスの流れになったんですね!そりゃあ試合にも気合いが入るわけだ」
天野「勿論どの試合の時も真剣に挑んでいるし、手を抜いたりふざけたりなんてしません。だけど今回は、彼女の存在がいつも以上に力を与えてくれたのは確かです」
記者「まさしく『愛の力』だと」
天野「そう、そうなんです!アイツ、料理が出来ないくせにお弁当なんか作っちゃって、テーピングまで覚えて来て……そうそう、この左足も、彼女がテーピングしてくれたんですよ!俺のために必死で練習してきたみたいで、巻き具合も絶妙で、バッチリだったんです!」
記者「そのテーピングを彼女が?そう言えば、試合中に足首を捻った時は最悪棄権になるかと心配しましたが、あの時はどんなお気持ちでしたか?」
天野「絶対に棄権はしたくなかったんですが、場外になった時は痛みがMAXで限界で……正直、もうダメだと思いました。だけどその時に彼女が『勇往邁進』の言葉をくれて……あれで立ち上がる事が出来ました。あと、皆さんの声援や拍手も心強かったですね。本当にありがたかったです」
記者「立ち上がった時の天野選手は本当に鬼気迫る迫力で、見ているこちらが息を呑む程でした。決勝戦の相手となった恩田選手とは昨年の決勝戦でも対戦されていますが、彼との因縁の対決は如何でしたか?」
天野「強かったです。本当に手強かった。昨年の試合で負けてから、ずっと彼との試合をシミュレートして来ましたが、どちらが勝ってもおかしくない闘いでした」
記者「天野選手は面、恩田選手は『面返し胴』が得意技と言うことで、やりにくかったということは無かったですか?」
天野「いや、どんな相手であれ、どんな技であれ、自分がそれよりも早く打ち込むだけの事です。そういう意味では、最初の1本が上手くキマったのが幸運でした」
記者「あの先制攻撃は本当にお見事でした。今回見ていて驚いたのは、天野選手が面のみで戦い抜いたという点です。こんな試合は前代未聞だと言えると思いますが、天野選手は最初から面のみと決めていたんでしょうか?」
天野「はい、決めていました。僕の得意技だという事もありますが……彼女に真っ直ぐに気持ちを届けたくて……」
記者「おおっ、ここでまた彼女の登場ですね。『勝利の女神』に捧げる一本……という事だったんでしょうか?」
天野「はい。こういうことを言うと、また叱られるかも知れないんですが……今回は彼女のために、どうしても勝ちたかった。ただ運が良かっただけだとか、中途半端な勝ちじゃ彼女に振り向いて貰う資格が無いような気がして……とにかく正面から正々堂々と、全力で勝ち取った勝利を彼女に捧げたかったんです」
記者「ゾッコンですね」
天野「ゾッコンです。めちゃくちゃ夢中です」
記者「ハハハッ、コレは優勝インタビューというよりも、婚約会見みたいになっちゃいましたが……」
天野「いつかソレもしたいです!だから、それまでにもっと精進して、もっと強くならないと……」
記者「それは今後の活躍が楽しみですね。高校ではインターハイもありますし、今後の益々のご活躍を期待しています」
天野「はい、期待に沿えるよう精進します!」
記者「最後に『剣道ニッポン』を読んで下さっているファンの皆さんに一言」
天野「はい……これからも真っ直ぐで美しい剣道を目指して鍛錬を続けて行きますので、よろしくお願いします」
記者「ついでに彼女さんにも一言いっちゃいますか?」
天野「いいんですか?それじゃ……◯ ◯、彼女になってくれてありがとう!大好きです!」
試合の3日後に行われたインタビューでは、捻挫した左足にテーピングをして現れた天野選手。痛々しい姿ながらも表情が明るかったのは、優勝後というだけではなく、出来たての彼女が毎日テーピングしてくれているのだと聞いて納得。
神聖な武道場でキスをしたことで賛否両論が巻き起こったのは記憶に新しいが、その是非はともかくとして、彼女の存在が天野選手の勝利に貢献したことは疑いようもないだろう。
又、その事を隠しも恥じもせず、真っ直ぐに目を見て答えてくれた態度には非常に好感が持て、彼女を気遣って名前を伏せるよう頼む姿は、男性である記者から見ても魅力的に映った。
世論の彼への評価が高いのも、好意的な意見が多いのも納得の好青年であった。
高校進学後も剣道を続けると宣言した天野選手のこれからの活躍を、記者としてもファンとしても、ずっと追いかけて行きたい。
1
あなたにおすすめの小説
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
伝える前に振られてしまった私の恋
喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
第二部:ジュディスの恋
王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。
周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。
「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」
誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。
第三章:王太子の想い
友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。
ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。
すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。
コベット国のふたりの王子たちの恋模様
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる