燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 マルクスという名の戦士と他の二人の影が、アキリアと呼ばれた女戦士を取りかこむ。
 最初、リィウスは彼らが女戦士にとどめを刺すのかと思っていた。
 残忍ではあるが、敗北した剣闘士がその場で殺されることは珍しくない。戦いぶりが良ければ観客の慈悲の歓声によって、命を助けられることもあるが、今回はそういった反応は見られない。
 リィウスは、女戦士の悲鳴が耳に入ってくるのを予想して身を固くした。だが、小人たちの行動は、思っていたのとは違っていた。
「やめろ! なにをする!」
 脚を痛めて片膝ついている女戦士に、三人の小人がむらがる。
(なんと……)
 リィウスは思わず眉をひそめていた。
 傷ついて血を流している女戦士から、三人の小人たちは武衣を剥ぎとっていく。
「やめろ! よせ!」
 戦士になるだけあって、かなり気の強い女なのだろう。アキリアは傷を負っていても必死に抗った。 
 リィウスのすぐ隣で見ていた男がいやな笑い声をあげた。
「おお、やっぱりいい身体をしておるな」
 さらにその隣の男がつぶやく。
「アキリアといえば、今一番人気の女戦士だというのに……、あんな下郎どもには勿体ないな」
「まぁ、仕方ない」
 リィウスが呆然と見ているあいだにも、残酷で淫猥な見世物がつづいた。
「よ、よせ! はなせ!」
 アキリアは声も性格も戦士だけあって、どこか男性的だ。世間の話題にはうといリィウスも、ぼんやりと思い出した。美貌で男勝りの気性で売れている女戦士の名前が、たしかアキリアだと聞いたことがある。昼間の闘技場で戦ったのは、たいていは女相手で、稀に男とも戦ったが、決してひけは取らなかったと。
 だが、今、彼女は舞台とも呼ぶべき小さな闘技場で哀れな姿をさらしていた。
 小人たちは喜々として彼女の身につけているものを奪っていく。いくら相手が小柄な男たちとはいえ、三対一ではかなわない。しかも傷ついている脚をかばいながらの抵抗では、不利なのも当然だ。あっというまにアキリアはあられもない姿にされてしまった。
 闘技はすでに卑猥な見世物に墜ちていた。
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