327 / 360
五
しおりを挟む
こんなときに、こんな話を聞いてどうなるのだろう、という想いがある一方で、カニディアの言葉に引き込まれてしまう。
「他にも、もちろん、病気や長年の持病を治したいという人に普通に薬を売ることもありますよ。手に入りにくい薬草はウリュクセスにたのめば何とかしてくれました。私たちがウリュクセスにたのまれて薬を調合することもあります」
持ちつ持たれつ、という関係のようだ。互いに相手が仕事上、便利な存在なのだ。
「新たな客を見つけるとき、私たちは神殿へ行くのです。そこでは、神々に健康と病の治癒をねがう人がかならずいるもので。そこで、私たちは金になりそうな客をさがすのです。あなたの想い人の弟と出会ったのも神殿だった」
「ナルキッソスのことか?」
なぜか、ディオメデスは首の後ろがうすら寒くなった。どんどん奇妙な話に引きずり込まれていく。だが、聞きつづければ、そこにひとつの答が見つかりそうな気がする。
「そうです。あなたの義母やタルペイアと出会ったのも神殿だった。彼女たちも、神殿に出入りする薬師や医師には注意しているのです。目当ての薬や、欲しいものを手に入れるためにね。あと、ご存知かもしれませんが、ときに神殿というところは、娼館にもなるのですよ」
「……だろうな」
そんな噂はよく聞く。勿論、見つかれば極刑だが、それでも人は禁を犯すことに異常な欲望を持つようだ。巫女という聖職にある特殊な立場の女性を抱くことに欲望を持つ男は少なくはなく、また若く美貌の神官もそういった対象にされやすい。
もっと昔や地方によっては、神殿の巫女が当然のように売春をしており、払われた金品は神への貢物として公然と祭壇にささげられたともいう。身を売る巫女は聖娼とみなされ、罰されることも蔑まれることもなく、むしろ彼女たちと通じた信者たちは、いっそう神の御利益を得られると信じられていた。だが、今のローマでは罪である。
「マルキアやタルペイアは神殿の裏の仕事に加担したり、巫女に仕事を斡旋したりしていた。巫女のみならず、神殿で若い神官や美貌の侍童が客を取らされることもあります。ナルキッソスもそんな男娼のひとりでした」
話の内容に違和感をおぼえてディオメデスは口をはさんだ。
「それはいつのことだ?」
「十年以上も前ですよ」
「他にも、もちろん、病気や長年の持病を治したいという人に普通に薬を売ることもありますよ。手に入りにくい薬草はウリュクセスにたのめば何とかしてくれました。私たちがウリュクセスにたのまれて薬を調合することもあります」
持ちつ持たれつ、という関係のようだ。互いに相手が仕事上、便利な存在なのだ。
「新たな客を見つけるとき、私たちは神殿へ行くのです。そこでは、神々に健康と病の治癒をねがう人がかならずいるもので。そこで、私たちは金になりそうな客をさがすのです。あなたの想い人の弟と出会ったのも神殿だった」
「ナルキッソスのことか?」
なぜか、ディオメデスは首の後ろがうすら寒くなった。どんどん奇妙な話に引きずり込まれていく。だが、聞きつづければ、そこにひとつの答が見つかりそうな気がする。
「そうです。あなたの義母やタルペイアと出会ったのも神殿だった。彼女たちも、神殿に出入りする薬師や医師には注意しているのです。目当ての薬や、欲しいものを手に入れるためにね。あと、ご存知かもしれませんが、ときに神殿というところは、娼館にもなるのですよ」
「……だろうな」
そんな噂はよく聞く。勿論、見つかれば極刑だが、それでも人は禁を犯すことに異常な欲望を持つようだ。巫女という聖職にある特殊な立場の女性を抱くことに欲望を持つ男は少なくはなく、また若く美貌の神官もそういった対象にされやすい。
もっと昔や地方によっては、神殿の巫女が当然のように売春をしており、払われた金品は神への貢物として公然と祭壇にささげられたともいう。身を売る巫女は聖娼とみなされ、罰されることも蔑まれることもなく、むしろ彼女たちと通じた信者たちは、いっそう神の御利益を得られると信じられていた。だが、今のローマでは罪である。
「マルキアやタルペイアは神殿の裏の仕事に加担したり、巫女に仕事を斡旋したりしていた。巫女のみならず、神殿で若い神官や美貌の侍童が客を取らされることもあります。ナルキッソスもそんな男娼のひとりでした」
話の内容に違和感をおぼえてディオメデスは口をはさんだ。
「それはいつのことだ?」
「十年以上も前ですよ」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる