27 / 84
第3章 侍女科
6 復習
しおりを挟む昼休憩中、皆と別れたルイーズは、調理室に来ていた。
目の前にある紅茶セットを前にして、紅茶の入れ方を復習している。
この数週間で、お茶会の全体的な流れについては学び終えたものの、紅茶の淹れ方にだけ、どうしても納得していないようだ。
(紅茶が飲みたいときには、お願いすればさっと出してくれるのよね。お願いするのは簡単だけど、手間暇かかっているのね)
「いつもありがとう、ローラ。美味しい紅茶が入れられるようになったら、ローラにも飲んでもらいたいわ」
ローラを思い出しているのだろう。ここにはいないローラに、お礼を伝えるルイーズ。
お湯を沸かし、ティーポットとティーカップに少量のお湯を入れ温めてからお湯を捨てる。ティーポットにティースプーン一杯の紅茶の葉を入れて、沸騰直後のお湯をティーポットに注いで蓋をしたら数分蒸す。そして、茶漉しを使って紅茶を注ぐ。茶葉の分量的に、一人分の紅茶を入れているのだろうか。
教わった手順通りに進めているのだろう。まだ不慣れな手つきだが、順調にこなしているのではないだろうか。
そんな時、調理室のドアを開け、マノン先生が入ってきた。
「ルイーズさん、練習ですか」
「マノン先生……。はい、紅茶を淹れる練習をしていました。
宜しければ、今から新しいものを入れ直しますので、飲んで頂けますか?」
「はい。でも、入れ直さなくて結構ですよ。今淹れた、そちらの紅茶をいただきます」
ソーサーの上にカップを乗せて、マノン先生の前に紅茶を差し出すルイーズ。
そのソーサーを左手に持ち、右手でティーカップのハンドルをつまみながら、口元に近づけ香りを確認する。紅茶を口に含んだマノン先生が、ルイーズを見ながら質問した。
「上手に淹れられていると思います。強いて言うならば、大きい茶葉を使った場合は、細かい茶葉を使った時より、蒸らし時間を少しだけ長く置いた方が良いですね。ルイーズさんは、他に気になる点はありますか?」
「いつも、我が家の侍女が淹れてくれた紅茶は、とても美味しいのです。教えていただいた通りに、茶葉も湯量も量ってから入れているのですが……」
「その侍女の方は、ルイーズさんの事をよく見ていらっしゃるのですね。主人の体調や好みが分からないと、出来ることではありません。さじ加減がとてもお上手な方なのでしょう。
今すぐに、その方と同じ水準に達するのは難しいです。今は基本をしっかりと身につけて、慣れることが大切ですよ」
「はい、ありがとうございました」
♦
その日の夜、ルイーズはローラに紅茶の淹れ方について尋ねていた。
「紅茶って奥が深いのね」
「そうですね。でもマノン先生のおっしゃる通り、今は基本が第一ですよ。貴族家によっては、ティーポットや茶葉の種類も違いますからね。今はしっかり練習して、基本をマスターして紅茶を淹れることに慣れてくれば、仕える方の好みに合ったものをお出しできるようになると思います」
「確かにそうよね。今は練習あるのみね」
「お嬢様なら大丈夫ですよ。紅茶の淹れ方に限らず、何事も丁寧に対応されていますから。」
「いつもありがとう、ローラ。私はローラの淹れてくれた紅茶が一番好きよ」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。今度はお嬢様の淹れた紅茶を飲ませてくださいね」
「もちろん、約束するわ」
淑女科上級生との合同授業まであと数日。ルイーズの復習は、毎日続くのだろう。
50
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
銀鷲と銀の腕章
河原巽
恋愛
生まれ持った髪色のせいで両親に疎まれ屋敷を飛び出した元子爵令嬢カレンは王城の食堂職員に何故か採用されてしまい、修道院で出会ったソフィアと共に働くことに。
仕事を通じて知り合った第二騎士団長カッツェ、副団長レグデンバーとの交流を経るうち、彼らとソフィアの間に微妙な関係が生まれていることに気付いてしまう。カレンは第三者として静観しているつもりだったけれど……実は大きな企みの渦中にしっかりと巻き込まれていた。
意思を持って生きることに不慣れな中、母との確執や初めて抱く感情に揺り動かされながら自分の存在を確立しようとする元令嬢のお話。恋愛の進行はゆっくりめです。
全48話、約18万字。毎日18時に4話ずつ更新。別サイトにも掲載しております。
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
薬師の能力を買われた嫁ぎ先は闇の仕事を請け負う一族でした
あねもね
恋愛
薬師として働くエリーゼ・バリエンホルムは貴族の娘。
しかし両親が亡くなって以降、叔父に家を追い出されていた。エリーゼは自分の生活と弟の学費を稼ぐために頑張っていたが、店の立ち退きを迫られる事態となる。同時期に、好意を寄せていたシメオン・ラウル・アランブール伯爵からプロポーズを申し込まれていたものの、その申し出を受けず、娼館に足を踏み入れることにした。
エリーゼが娼館にいることを知ったシメオンは、エリーゼを大金で身請けして屋敷に連れ帰る。けれどそこは闇の仕事を請け負う一族で、シメオンはエリーゼに毒薬作りを命じた。
薬師としての矜持を踏みにじられ、一度は泣き崩れたエリーゼだったが……。
――私は私の信念で戦う。決して誰にも屈しない。
【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!
風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」
第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。
夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!
彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります!
/「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。
基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。
婚約破棄を希望しておりますが、なぜかうまく行きません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のオニキスは大好きな婚約者、ブラインから冷遇されている事を気にして、婚約破棄を決意する。
意気揚々と父親に婚約破棄をお願いするが、あっさり断られるオニキス。それなら本人に、そう思いブラインに婚約破棄の話をするが
「婚約破棄は絶対にしない!」
と怒られてしまった。自分とは目も合わせない、口もろくにきかない、触れもないのに、どうして婚約破棄を承諾してもらえないのか、オニキスは理解に苦しむ。
さらに父親からも叱責され、一度は婚約破棄を諦めたオニキスだったが、前世の記憶を持つと言う伯爵令嬢、クロエに
「あなたは悪役令嬢で、私とブライン様は愛し合っている。いずれ私たちは結婚するのよ」
と聞かされる。やはり自分は愛されていなかったと確信したオニキスは、クロエに頼んでブラインとの穏便な婚約破棄の協力を依頼した。
クロエも悪役令嬢らしくないオニキスにイライラしており、自分に協力するなら、婚約破棄出来る様に協力すると約束する。
強力?な助っ人、クロエの協力を得たオニキスは、クロエの指示のもと、悪役令嬢を目指しつつ婚約破棄を目論むのだった。
一方ブラインは、ある体質のせいで大好きなオニキスに触れる事も顔を見る事も出来ずに悩んでいた。そうとは知らず婚約破棄を目指すオニキスに、ブラインは…
婚約破棄をしたい悪役令嬢?オニキスと、美しい見た目とは裏腹にド変態な王太子ブラインとのラブコメディーです。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる