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第5章 辺境の地へ
10 室内探索
しおりを挟む部屋に着いた三人は、ベッドの側に歩み寄ると、リリーの顔を覗き込んだ。朝よりもだいぶ落ち着いているようだ。皆の表情が安堵感に包まれた。
リリーが目を覚まさないように、足音を立てずに部屋の中を歩く。
「リオンさん、クローゼットの中を見ても良いですか?」
「ああ、全て見てもらって構わない」
リオンとリアムは、クローゼットの中にあるものを、一つ一つ確認している。そんな二人とは別行動のルイーズは、しきりにベッドの周りを見回している。
(赤い色は目立つから、すぐに見つけられると思ったのに……)
「リオンさん、少しよろしいですか?」
ルイーズの声かけに、リオン優しい口調で答える。
「どうした? 何かあったのか?」
「いえ、何もないから焦ってしまって……もし、今日見つからない場合は、妹さんに別室へ移ってもらいたいのです」
「そうだな、そうしよう」
リオンは、説明するために側近の三人を部屋へ呼んだ。
「このまま紹介されないのかと思ったぞ」
「本当だよね。僕はわざとそうしているのかと思ったよ」
「他の方々への挨拶は、既に済ませてある。もちろんリアムにもな」
側近の三人に責められるリオンが口を開こうとしたとき、レアが部屋に入ってきた。
「兄上、三人に聞いたぞ。ルーちゃんをまだ紹介していないらしいな」
妹からも責められたリオンは、四人に鋭い眼差しを向けた。レアは兄の態度に呆れながら、ルイーズに目を向け話しかけた。
「すまないな、ルーちゃん。最近の兄上は、心ここにあらずなんだ。許してやってくれ。じゃあ、早速皆を紹介する。左から、ブライスとシリルとクロードだ。皆、貴族家の二男で、貴族学院の出身だ。そして兄上と私の幼馴染なんだ。三人とも剣は強いから、何かあれば頼ってほしい。そして、こちらはブラン子爵家のルイーズ嬢だ。私の可愛い後輩だ。皆、よろしく頼む」
「よろしくね、ルーちゃん。僕はシリル。困ったことがあったら言ってね」
「ルイーズ嬢、ブライスだ。よろしく」
「ブラン子爵令嬢、クロードです。よろしくお願いします」
「ルイーズです。こちらこそ、よろしくお願いします」
三人は、ルイーズと順々に握手を交わしていく。握手を交わしたことのないルイーズは、戸惑ったがすぐに慣れたようだ。
「……お前たち…こちらは、ブラン子爵令嬢だ。呼び方は統一しろ」
「お前、何言ってんだ……。自分もルイーズ嬢って呼んでただろう」
ブライスに痛いところを突かれ、反論できないリオンは顔を横にそむけた。
「リオン、落ち着きなよ。らしくないよ」
リオンはシリルに宥められると息を吐いた。
「そういえば、何か用があったんじゃないのか」
クロードの指摘により、全員の視線がリオンに集まった。
「今日中に、リリーの部屋にあると思われる宝石を見つけたい。皆には、それを一緒に探してほしい。もし見つからない場合は、リリーを別室に移動させる。移動先はレアの部屋にしたいと思うんだが、レア、いいか?」
レアはリオンを見ると「もちろんだ」と言いながら頷いた。
「皆、宝石の詳細については聞いていると思うが、それ以外にもおかしいと感じるものがあれば、それには触れずにすぐに知らせてほしい。じゃあ、早速はじめてくれ」
リオンの言葉を合図に、皆が一斉に宝石を探し始めた。その様子を確認すると、リオンはクロードに視線を送り廊下に出た。
他の皆が机や本棚を探す中、ルイーズはどうしてもリリーの周辺が気になるようだ。眠っているリリーの隣には、少しだけ色褪せた白いくまのぬいぐるみが横たわっている。ルイーズは、そのぬいぐるみを手にすると、怪しいものがないか確認した。
廊下に出たリオンとクロードは、小声で何かを話しているようだ。
「ナタリーとは話せたか?」
「ああ、しかし…階段から転落した時の状況は何も覚えていなかった。だが、本人が言うには、この数か月の間ずっと体調が芳しくなかったようだ。体に痛みがあるわけでもなく、怠さと眩暈に悩まされていたそうだ」
「そうか…一番近くで世話をしていたナタリーが、影響を受けてしまったということか」
「今はその可能性が高いだろう。それから、侍女に関してだが、見慣れない顔が三人増えている。ロバートにも確認したが、記憶が曖昧だ」
「父上が遠征に出たのが一月前だ。このおかしな状況はそれ以前からなのか、それとも」
その時、部屋の中からリアムとレアの叫ぶ声が聞こえてきた。
「姉上!」
「ルーちゃん!」
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