溺愛されるのは幸せなこと

ましろ

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前編

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リュディガー伯爵夫妻は仲睦まじいと有名だ。
もともとは政略結婚のはずが、夫であるケヴィンがイレーネに一目惚れしたのだ。
結婚してから5年がたった今も、その溺愛は続いている。

「イレーネ!今日は一段と美しいね。どうしよう、夜会に行くのは止めようか。こんなに美しい君を誰にも見せたくない」
「ありがとう、ケヴィン。貴方も素敵よ」

確かにイレーネはとても美しい女性だ。甘い蜂蜜を思わせる様な柔らかく波打つ金髪に、エメラルドグリーンの蠱惑的な瞳。子供を二人も産んだとは思えない細身でありながらも、胸元は柔らかそうに誘惑する。
夫に愛され順風満帆でいながらも、何処か憂いを含んでいる様な危うい姿がより一層男性の目を引くのだ。

「今日はお義母様が子供達を独り占め出来るのを楽しみにしているのよ?私達が出掛けないとガッカリしてしまうわ」
「だって!」
「んっ」

一度拗ね出すとケヴィンの嫉妬は止まらなくなる。使用人が見ている前で見せつける様に妻の唇を奪う。

「やっ、だめ、紅がっ」
「っん。これで行けない?」
「~~っ!」

抱き締めていた手が背中を辿って太腿を撫でる。

「だめ。これ以上は怒るわよ」
「そんなに色っぽいドレスを着るから。やっぱり駄目だ。行くのを止めよう」
「ケヴィンっ!」

そう言うと、軽々と妻を抱きかかえてしまう。

「ミュンター家に使いを。妻が体調不良で行けなくなったと伝えてくれ」
「なっ!」
「私達が寝室に篭もれば子供達も出掛けたと信じるよ。母上に叱られることは無いさ」
「何を言ってるの?嫌よ、下ろして!」
「もう一人子供が増えたら母上達も喜ぶさ」
「!」

嬉しそうにそう囁くと、後はどれだけ妻が文句を言っても聞かずに寝室に連れ去ってしまう。

優しくベッドに下ろすと、イレーネは憤慨して起き上がろうとした。

「私は嫌だと言ったわ!今日はカリナにも会いたかったのに!」
「しーっ。私は例え女性であってもベッドの上で私以外の名前を出されると嫉妬する」
「そんなっ、ん~~~っ」

それ以上の抵抗は無駄だった。力で敵うわけも無く、嫌がっていても、その体は夫を受け入れる事にこの五年で慣れきっていた。妻の体にも溺れているケヴィンが毎日の様にその体を貪っているのだ。
だから、下着だけ剥ぎ取り、ろくに慣らしもせずに挿入されても何とか受け入れてしまう。多少の痛みや苦しさはあるけれど。

「あぁっ!」
「んっ、ほら、ちゃんと潤んでる」

もうそうなればケヴィンの思うままだ。イレーネも抵抗することを止め、ただ只管に啼くだけ。

「もう、あんなドレスは着ないで」
「ん、あ、あれ、は、今の、流行りでっあっ!」
「ふふっ、いいよ。今日はたくさん時間がある。久し振りに楽しもうね」

その言葉の通り、ケヴィンはありとあらゆる方法で妻を堪能した。指で、舌で、彼自身で。

「もう、いや、っゆるして……」
「じゃあ、あのドレスは着ない?これからは私に選ばせて」
「…、どうして…、あ?やっ!やめてっ」

ケヴィンは閨の度に快楽でもって攻め立て、自分の望みを叶えようとする困った男だ。どれだけ嫌でもそもそもの体力が違うし、彼自身は何度も休憩することが可能なのだ。イレーネはその間も彼の指で絶頂に押し上げられているが。

「それは嫌っ!やだやだっ」

ケヴィンはイレーネの体を知り尽くしている。如何やったら潮を噴くのかも。イレーネは兎角その行為を嫌がった。感じた証だと伝えようとも、粗相したように感じてしまうらしい。まるで幼子の様に泣いてしまうのだ。

「ん?私は可愛いから好きだよ」

分かっているくせに攻めるのを止めない。

「お願いっ!言うことを聞くからっ!!」
「よかった。やっと私の気持ちを分かってくれたんだね。愛してるよ、イレーネ」

溶ける様な笑顔を見せながら口付ける。深く、深く。その吐息さえ飲み込むかのように。

その後も、イレーネが疲れ果て眠りに落ちるまで、彼からの愛撫は続いた。




「……スプーンを返して」
「はい、あーん」
「………」

チュッ

「何をっ!」
「違った?」

どれだけ妻の機嫌が悪くても、それに苛立つこともなく、どちらかと言えば毛を逆立てた猫を愛でるかの様に楽しんでいる。そして、いつも折れるのはイレーネの方……

「……もう無理。もう我慢できないわ」
「え?」

そんな呪詛の様な地を這う声を初めて聞いたケヴィンは目を瞬かせた。

「ケーテ、パウルを呼んできて」
「奥様?」
「いいから、早くなさい」
「イレーネ?えっ、どうしたんだい?君のそんな姿を使用人とはいえ男に見せる気はないよ」

さすがのケヴィンも表情が険しくなるが、イレーネは答えない。

「奥様、連れてきましたが」
「パウル、入ってきたら即解雇だ」
「パウル、ケヴィンを拘束なさい」
「……承知しました。イレーネ様」
「なっ!パウルっ!!」

信じられないことに、パウルがケヴィンの腕を縛り上げた。騎士であるパウルに、体術で勝てる訳もなく、あっという間に縛り上げられ拘束される。

「ケヴィン。パウルは私が実家から連れてきた子よ。もう忘れたの?」

確かに、輿入れの際に連れて来た男だ。

「だが今はもう、私が主の筈だろう!」

そう叫んだケヴィンをイレーネは氷の如く冷たい視線で見つめながら宣った。

「なぜ?」
「え」
「どの辺りが貴方にそう思わせたのかしら。私のものは貴方のものなの?どうして?私のものは私のものよ。パウルも。私自身も!貴方のその傲慢極まりないところが本当に嫌だわ。
──私は実家に帰らせて頂きます」
「イレーネっ!?」

突然豹変したイレーネにケヴィンは目を白黒させながらも、里帰りと聞いては黙っていられない。

「駄目だ、そんなことは許さないっ!」
「ですから。何故私自身のことを貴方に指図されなければいけないの?
貴方はいつもそう。誰々と会っては駄目。何処どこに行っては駄目。この服は着るな。側を離れるな。………子供にすら嫉妬して、触れ合える時間を減らされて!それなのにもう一人欲しい?何の為に?
ああ、また授乳プレイを楽しみたいのかしら。
………気持ち悪いのよ、この変態がっ!!」

イレーネの言葉に、近くにいたケーテとパウルもドン引きしている。そしてケヴィンは顔面蒼白だ。

「とにかく。貴方の思いなど知りません。私は実家に帰ります。お義父様達には、今私が言ったことをそのままお伝えください。『妻は夫の身勝手な束縛と変態行為を嫌悪して家を出てしまいました。このままでは離婚の危機です』とね」
「………離婚?ありえない!」
「相変わらず人の話を聞かないのね。何でも自分の思い通りになると信じてる暴君様。それは幻想ですよ。
ケーテ、パウル。行くわよ」
「「はい、お嬢様」」
「待ってくれ!行くなっ!!」
「……うるさいわ。パウル。口を塞いでベッドにでも括り付けて」
「はい」

パウルは素直に言うことを聞き、テキパキと行動する。

ケヴィンは慌てて追い掛けようとしたが、後ろ手に両腕を縛られて、足をベッドに括り付けられたせいで、起き上がるのもままならず、そんな夫をちらりと見ると「様を見ろ」と酷薄に言い捨て、本当にイレーネは屋敷を出て行ってしまった。




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