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「どうしよう! 今度こそエミーリアに嫌われた!」
でしょうね? あんな暴言を吐かれて恋い慕う乙女はいないと思うもの。だけど。
「あの。嫌われたくてあのように言ったのではないのですか?」
つい、我慢できずに聞いてしまいました。すると、
……泣いた。
「ご令嬢、申し訳ありませんが同乗願えますか」
やってしまったわ。殿下と名のつく方とは距離を置くつもりでしたのに。
それでも、さすがに王族を泣かせて逃げるわけにもいかず、仕方なく殿下の馬車に乗り込みました。
「どうして素直になれないんだろう。今度こそ、好きだと言いたかったのに……」
メソメソと泣いている殿下の言葉に疑問符しか浮かばないのは私がおかしいの?
阿呆殿下に呆れ返りながらも、そんな殿下をなぐさめるでもなく、ただじっと黙したまま寄り添っている男を眺めた。
殿下の泣き顔を隠すためか、自分の大きな体で遮っているため、私の目の前には、男の広い背中があって。
その大きな壁のような背中に、なぜかウズウズしてしまう。
だって、まるで壁様のような背中なのですもの。
「あの、私はいつまでここにいればよいのでしょうか」
そんな気持ちを隠しつつ、そろそろ帰りたいと促してみる。
「ご不便をおかけして申し訳ありません」
「そうですね。あなたも大変ですね? たぶん、このままでは婚約破棄されますもの」
たぶんこの発言は不敬罪だと思います。でも、ちょっと賭けに出たくなってしまいました。
「なっ⁉ どうしてそんなひどいことを言うのだ! 私はただ、彼女の美しさに素直になれないだけで」
「でも、ガッツリ傷付けていましたよね。あの発言のどこに愛がありましたか?」
「違う! でもだって、最近の彼女はどんどん綺麗になるから、だからっ」
「申し訳ありません。信じていただけないかもしれませんが、これでも殿下は幼い頃から婚約者の令嬢を大切にしてきたのです。ただ、最近女性としての美しさに開花されていく姿に、上手く順応できないようでして」
なるほど。そういえばお胸も育っていたし、少女から女性に変化していく姿に照れてしまって上手く言えず、あんな態度を? でも、ずっと仲がよくて最近態度が変わっただけなら、まだ許されるのでしょうか?
「とりあえず貴方様もどこぞの殿下と同じ『男の子にはよくある病』に罹っていらっしゃるのですね。御愁傷様でございます」
「……どこの殿下だ」
「そうですね。私を10年ほど冷遇してきた殿下でしょうか」
「冷遇?」
「はい。顔を合わせば、そんなドレスは着るな。流行りに振り回される阿呆か、お前の胸や背中など誰が見たいと思うんだ! と怒鳴られたり」
「え」
「なんだ、その化粧は。お前がそんなものを塗りたくったところで見苦しいだけだ、男を誘うようなその目を止めろ、お前は俺の横に控えていればいいんだ、と意味不明なことを言われたり?」
「お前の婚約者は随分アレだな?」
「いいえ? 婚約者でもなく、友人ですらありません。ただ、私を虐げるのが趣味なだけの人です」
「……なんと」
よし、あと一息だわ。
「でも、誰も助けてくれませんの。家族も使用人も『男の子特有の病』だというだけ。でも、そのせいで友達も婚約者もできず、私の話を聞いてくださるのは壁様だけでした」
「……かべさま……とは?」
んふふ、よくぞ聞いてくれました!
「そうですね、えっと。貴方のお背中をお借りしてもよいかしら?」
そっと広い背中に声を掛ける。
「……構いませんが」
さすが壁様に似ているだけあるわ! というか、第二の壁様なのかもしれません。残念ながら寮の壁は木目なのです。私の長年の友とはどうしても色合いが違うので、まだ親しくなれなくて。
目の前の広い背中に少しだけ額をくっつけた。
「ねえ、壁様。今日も殿下が私に酷いことを言ったわ。私の目は魔性だというの。俺を狂わせる気だな⁉ と、まるで魔女のように罵るのよ。酷いと思わない?
私にそんな魔力があるなら、二度と私に近づくな話し掛けるな私の人生に干渉するなと魔法を掛けるのに! それがだめなら毎日鳥の糞が頭に落ちればいいのに。いっそ逆まつげになって、毎日涙目になって私が見えなくなればいい」
ああ、久しぶりに文句が言えました。非常にスッキリするわ。
「……それは何をしているのだ」
「誰にも理解してもらえない苦しみを、毎日このように壁様に聞いてもらっていたのですわ」
あ、引いてますね。でも、壁様がいなかったらきっと今頃大惨事になっていましたから。
「それでもずっと我慢して、成人を迎えても変わらないと理解できたので家出しました。
さて。殿下も成人されていますよね? 婚約者様はいつまでその態度に我慢できると思います?」
ようやく私の言いたいことが理解できたようです。自分の照れ隠しが、もしかしたら婚約者をこんなふうに追い詰めているかもしれないと第三者視点になって分かったみたい。
「わ、私はどうしたら」
「素直になったらよろしいかと」
「だが……」
「ふむ。殿下は傷付いた婚約者より、ご自分のほうが大切なのですね?」
「違う!」
「違いません。結局は、ご自分のみっともない姿を晒すのが恥ずかしいだけでしょう? それならば早く手放して差し上げたらよろしいわ。そして、あなたが照れる必要のない女性を選び直せばよいでしょう」
くだらない。これだから自尊心の高い王子という生き物は面倒なのよ。
あ、イライラが溜まってしまったわ。
「……ねえ、聞いて壁様。自尊心が低いのも考えものだけど、好きな女性よりプライドのほうが上な男性ってどう思います?」
ついでとばかりに目の前の壁様に愚痴を言い出すと、
「すまない! 私が愚かなのは分かったからもう止めてくれ!」
殿下がようやく重い腰を上げたようだ。
「まあ。では、今すぐ告白しに参りましょうか」
「今から⁉」
「もちろんです。たぶん、明日になったらその勇気は消えていると思いますよ?」
鉄は熱いうちに打てと言うでしょう? 好機を逃すなど阿呆のすることですよ? 阿呆殿下。
「……そろそろ動いてもいいだろうか」
「あ、申し訳ございません。どうぞ、お座りになって?」
まるで自分の馬車かのように勧めてしまったわ。
そんな私をじっと見つめ、
「寂しいのか?」
……まあ。私が寂しい?……そうね、そうなのかも。
家を捨て、腹立たしい殿下の束縛から抜け出し、スッキリさっぱりしたつもりでしたが。
「唯一の友と離れて、寂しいのかもしれません」
すごいわ。やっぱり彼も壁様だから? 私ですら気づいていなかった私の気持ちに気付いてくれるなんて、やっぱり壁様はすごいのだわ。
それから、馬車を走らせ婚約者の家に行き、殿下はなんとか愛を伝えてギリギリセーフ。でも、彼女のお父上にしっかりと叱られたみたいです。
「本当にありがとう! 君のおかげた!」
すっかり殿下に懐かれたのが嬉しくありませんでしたが、エミーリア嬢がお友達になってくれたので許すことにいたしました。そして、
「何か望みはないか? 感謝の言葉だけでは足りないだろう!」
「では、たまに壁様をお貸しくださいませ♡」
うふふ、遠慮? そんな言葉は知りません。チャンスは逃さない質ですの。
「……君の愚痴を聞けばいいのか?」
「お嫌ですか?」
「令嬢と二人きりになるのはよくないだろう」
「司祭様への懺悔と同じようなものですわ」
「……では、扉は少し開けておく。それでもよければ」
「ありがとうございます!」
こうして私は、二代目壁様を手に入れたのでした。
でしょうね? あんな暴言を吐かれて恋い慕う乙女はいないと思うもの。だけど。
「あの。嫌われたくてあのように言ったのではないのですか?」
つい、我慢できずに聞いてしまいました。すると、
……泣いた。
「ご令嬢、申し訳ありませんが同乗願えますか」
やってしまったわ。殿下と名のつく方とは距離を置くつもりでしたのに。
それでも、さすがに王族を泣かせて逃げるわけにもいかず、仕方なく殿下の馬車に乗り込みました。
「どうして素直になれないんだろう。今度こそ、好きだと言いたかったのに……」
メソメソと泣いている殿下の言葉に疑問符しか浮かばないのは私がおかしいの?
阿呆殿下に呆れ返りながらも、そんな殿下をなぐさめるでもなく、ただじっと黙したまま寄り添っている男を眺めた。
殿下の泣き顔を隠すためか、自分の大きな体で遮っているため、私の目の前には、男の広い背中があって。
その大きな壁のような背中に、なぜかウズウズしてしまう。
だって、まるで壁様のような背中なのですもの。
「あの、私はいつまでここにいればよいのでしょうか」
そんな気持ちを隠しつつ、そろそろ帰りたいと促してみる。
「ご不便をおかけして申し訳ありません」
「そうですね。あなたも大変ですね? たぶん、このままでは婚約破棄されますもの」
たぶんこの発言は不敬罪だと思います。でも、ちょっと賭けに出たくなってしまいました。
「なっ⁉ どうしてそんなひどいことを言うのだ! 私はただ、彼女の美しさに素直になれないだけで」
「でも、ガッツリ傷付けていましたよね。あの発言のどこに愛がありましたか?」
「違う! でもだって、最近の彼女はどんどん綺麗になるから、だからっ」
「申し訳ありません。信じていただけないかもしれませんが、これでも殿下は幼い頃から婚約者の令嬢を大切にしてきたのです。ただ、最近女性としての美しさに開花されていく姿に、上手く順応できないようでして」
なるほど。そういえばお胸も育っていたし、少女から女性に変化していく姿に照れてしまって上手く言えず、あんな態度を? でも、ずっと仲がよくて最近態度が変わっただけなら、まだ許されるのでしょうか?
「とりあえず貴方様もどこぞの殿下と同じ『男の子にはよくある病』に罹っていらっしゃるのですね。御愁傷様でございます」
「……どこの殿下だ」
「そうですね。私を10年ほど冷遇してきた殿下でしょうか」
「冷遇?」
「はい。顔を合わせば、そんなドレスは着るな。流行りに振り回される阿呆か、お前の胸や背中など誰が見たいと思うんだ! と怒鳴られたり」
「え」
「なんだ、その化粧は。お前がそんなものを塗りたくったところで見苦しいだけだ、男を誘うようなその目を止めろ、お前は俺の横に控えていればいいんだ、と意味不明なことを言われたり?」
「お前の婚約者は随分アレだな?」
「いいえ? 婚約者でもなく、友人ですらありません。ただ、私を虐げるのが趣味なだけの人です」
「……なんと」
よし、あと一息だわ。
「でも、誰も助けてくれませんの。家族も使用人も『男の子特有の病』だというだけ。でも、そのせいで友達も婚約者もできず、私の話を聞いてくださるのは壁様だけでした」
「……かべさま……とは?」
んふふ、よくぞ聞いてくれました!
「そうですね、えっと。貴方のお背中をお借りしてもよいかしら?」
そっと広い背中に声を掛ける。
「……構いませんが」
さすが壁様に似ているだけあるわ! というか、第二の壁様なのかもしれません。残念ながら寮の壁は木目なのです。私の長年の友とはどうしても色合いが違うので、まだ親しくなれなくて。
目の前の広い背中に少しだけ額をくっつけた。
「ねえ、壁様。今日も殿下が私に酷いことを言ったわ。私の目は魔性だというの。俺を狂わせる気だな⁉ と、まるで魔女のように罵るのよ。酷いと思わない?
私にそんな魔力があるなら、二度と私に近づくな話し掛けるな私の人生に干渉するなと魔法を掛けるのに! それがだめなら毎日鳥の糞が頭に落ちればいいのに。いっそ逆まつげになって、毎日涙目になって私が見えなくなればいい」
ああ、久しぶりに文句が言えました。非常にスッキリするわ。
「……それは何をしているのだ」
「誰にも理解してもらえない苦しみを、毎日このように壁様に聞いてもらっていたのですわ」
あ、引いてますね。でも、壁様がいなかったらきっと今頃大惨事になっていましたから。
「それでもずっと我慢して、成人を迎えても変わらないと理解できたので家出しました。
さて。殿下も成人されていますよね? 婚約者様はいつまでその態度に我慢できると思います?」
ようやく私の言いたいことが理解できたようです。自分の照れ隠しが、もしかしたら婚約者をこんなふうに追い詰めているかもしれないと第三者視点になって分かったみたい。
「わ、私はどうしたら」
「素直になったらよろしいかと」
「だが……」
「ふむ。殿下は傷付いた婚約者より、ご自分のほうが大切なのですね?」
「違う!」
「違いません。結局は、ご自分のみっともない姿を晒すのが恥ずかしいだけでしょう? それならば早く手放して差し上げたらよろしいわ。そして、あなたが照れる必要のない女性を選び直せばよいでしょう」
くだらない。これだから自尊心の高い王子という生き物は面倒なのよ。
あ、イライラが溜まってしまったわ。
「……ねえ、聞いて壁様。自尊心が低いのも考えものだけど、好きな女性よりプライドのほうが上な男性ってどう思います?」
ついでとばかりに目の前の壁様に愚痴を言い出すと、
「すまない! 私が愚かなのは分かったからもう止めてくれ!」
殿下がようやく重い腰を上げたようだ。
「まあ。では、今すぐ告白しに参りましょうか」
「今から⁉」
「もちろんです。たぶん、明日になったらその勇気は消えていると思いますよ?」
鉄は熱いうちに打てと言うでしょう? 好機を逃すなど阿呆のすることですよ? 阿呆殿下。
「……そろそろ動いてもいいだろうか」
「あ、申し訳ございません。どうぞ、お座りになって?」
まるで自分の馬車かのように勧めてしまったわ。
そんな私をじっと見つめ、
「寂しいのか?」
……まあ。私が寂しい?……そうね、そうなのかも。
家を捨て、腹立たしい殿下の束縛から抜け出し、スッキリさっぱりしたつもりでしたが。
「唯一の友と離れて、寂しいのかもしれません」
すごいわ。やっぱり彼も壁様だから? 私ですら気づいていなかった私の気持ちに気付いてくれるなんて、やっぱり壁様はすごいのだわ。
それから、馬車を走らせ婚約者の家に行き、殿下はなんとか愛を伝えてギリギリセーフ。でも、彼女のお父上にしっかりと叱られたみたいです。
「本当にありがとう! 君のおかげた!」
すっかり殿下に懐かれたのが嬉しくありませんでしたが、エミーリア嬢がお友達になってくれたので許すことにいたしました。そして、
「何か望みはないか? 感謝の言葉だけでは足りないだろう!」
「では、たまに壁様をお貸しくださいませ♡」
うふふ、遠慮? そんな言葉は知りません。チャンスは逃さない質ですの。
「……君の愚痴を聞けばいいのか?」
「お嫌ですか?」
「令嬢と二人きりになるのはよくないだろう」
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「……では、扉は少し開けておく。それでもよければ」
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こうして私は、二代目壁様を手に入れたのでした。
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