俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ

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ナディージュ・シャリエ伯爵令嬢。

胡桃くるみ色の柔らかな髪にパッチリとしたペリドットグリーンの瞳を持つ愛らしい令嬢だが、20歳で未婚、婚約者もいないという、貴族としては行き遅れに差し掛かっている令嬢だ。
一応は17歳から3年間留学していたからというのが表向きの理由となっている。


そして現在───


「俺の妻になれ」
「嫌ですけど」

何故か王太子殿下に壁際まで追い詰められ、脅しのような告白に秒でお断りを入れていた。

そう。この、たとえ相手が王族であっても全く忖度そんたくせず自分の意見をはっきりと言ってしまう性格が災いして未だに婚約者すらいないのだ。

「おい、何で断るんだ」
「私のことはお気になさらず。王太子妃大歓迎という職務に前向きなご令嬢の中からお選びくださいませ」
「俺はお前がいい」
「残念ながら私の人生設計はすでに出来上がっておりまして、その中にバスチアン殿下の妻ならびに王太子妃で後の王妃。などという厄介な言葉は一切含まれておりませんの」

あまりの言葉に王太子殿下の口元が引きる。

「……王太子の妻にと望まれて厄介の一言で終わらせようとする令嬢はお前くらいだ」
「お褒めに預かり光栄にございます」
「褒めてないっ!」

豪奢な金髪にサファイアブルーの瞳。端正な顔立ちに引き締まった体躯。頭脳も明晰で令嬢達のみならず、国民人気も高いバスチアン王太子殿下のどアップをものともせず塩対応を繰り広げる姿に、謁見の間に現れた国王陛下も若干引いていた。

「……バスチアン。勝手に話を進めるのは止めなさい」
「そうですよ。か弱い令嬢を壁際まで追い詰めるとは何事ですか」
「母上。『か弱い』の正しい意味をご存知か。コイツは見た目詐欺のオリハルコン製の心臓の持ち主ですよ」

ナディージュはか弱くたおやかな風情なのだ。見た目は。
だが、一度ひとたび口を開けば歯に衣着せぬ豪胆な令嬢なので、間違ってもか弱いとは言えなかった。

「まあ、目が覚めてよかった。そんな詐欺師を妻にするなど国のためになりませんわ。
ささ、どうぞ。私のことは捨て置いてくださって構いませんので、カルノー公爵家にお向かいになって? オリアーヌ嬢が殿下のプロポーズをお待ちですわよ」
「オリアーヌ・カルノー嬢はまだ14歳だぞ」
「あら、幼妻は男の浪漫では?」
「俺はお前がいい」
「お断りいたします」

うふふ、と微笑みながら間髪入れずに断っている。

「そもそも、王太子妃を殿下のお好みで選ぶというのはどういう了見なのです?
公爵令嬢であれば、王太子妃としての下地もできているでしょうし、何よりもまだお若いです。今から王太子妃教育を始めても十分でしょうが、私はもう20歳ですよ? 今から王太子妃教育を受けろだなんて嫌がらせですか。
どうなのです、陛下」







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