王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ

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馬車の修理を終え、出立の時となった。
愛しい番を抱き上げ馬車へと向かう。


「あ、あの!降ろしてください、自分で歩けますから!」


顔を真っ赤に染めて慌て出す。


「だめだよ。安心して身を任せておけばいい。
そんなに離れようとされると寂しいだろう?」

「でも!」


おやおや、逃げようとすれば追い詰めたくなるということを知らないのかな?

かぷっ
可愛らしい耳を軽く齧る。


「ひゃ!?か、か、かか噛んだ!?」

「言うことを聞かない悪い子にはお仕置きが必要かな?」

「…申し訳ありません…」


ぷるぷると涙ぐみながら震える姿に保護欲と嗜虐心がせめぎ合う。
だめだ、愛し過ぎて本当にどうしてくれよう…

愛したい、泣かせたい、口付けて、噛み付いてもっともっともっと私のことだけ感じさせたい。


あぁ、考えが顔に出ていたかな?
男爵が蒼白になりながらこちらを見ている。
…ダメだな。たとえ父親であろうとも私の番を思う気持ちが不快だ。


「…私の番を大切に育ててくれて感謝する。
報奨金と支度金、またこちらの領地への支援金などを後程送ろう」

「!…私は金銭のために娘を育ててきたのではありません…」


しまったな。大切な番の父君なのに、つい貶めるような言い方をしてしまった。
独占欲とはやっかいだ…


「…すまない。私はもう20年以上もの間番を探してきたのだ。やっと出逢えたのにそれを邪魔しようとされるのではとつい敵意を向けてしまった」


私が謝罪したことに驚いたのか内容に驚いたのか。
ぐっと唇を噛みしめ、言葉を飲み込む。


「…お父様。大丈夫です。お金のためだなんて思っていませんわ。愛されていましたもの。
このような……いえ。

お体に気をつけて。お兄様にもお別れできなくてごめんなさいと、必ず手紙を書くからと伝えてください。
…今までありがとうございました。大好きよ」


可憐な花のような笑顔。
その愛の言葉は私にだけ向けられるべきものなのに!





無言で馬車に乗り込む。

「あの、公爵様?もう降ろしていただいても…」

「…アデルバート」

「えっ?」

「私の名前だ。アデルバートと呼んでくれ」

「そんな!畏れ多いです!」

「なぜ?おまえは私の唯一で最愛だ。
なんならおまえだけの愛称をつけてくれてもいい。
さあ、どうする?」

「…アデルバート様、と呼ばせてください」

「うん、とりあえずはそれでいい。
楽しみは取っておくとしよう。
愛しい番。おいで」


逃げられる前に抱き寄せ口付ける。
軽く何度もついばむ。何かを言おうと口を開いた隙を狙って舌をねじ込んだ。
驚いて見開いた美しい瞳が私を真っ直ぐ見つめ、私の心を捉える。

逃げる舌を追いかけ絡ませ舌先を軽く喰む。


「っぷは!」


一度開放してあげると可愛らしい声を上げた。


「大人のキスははじめて?」

「~~あたりまえです!」

「よかった。手を出した奴がいたら殺してしまうところだったよ」

「!?」


もの慣れない様子に疑ってはいなかったが、素直に言ってくれてよかった。


「キスするときは鼻で息をするだよ、ね?もう一度」

「もうヤッ…!」

最後まで言わせずに再び口付ける。


あぁ、ささくれだっていた心が癒やされていく。
番と触れ合えて本当に幸せだ…








王城にて。


「陛下。コンラート公爵から伝令が届きました」

「なに?まだ視察中のはずだよな?」

「はい、緊急伝令になります」


何かあったのか?
部下から渡されたものを慌てて開く。


「まさか!」

「あなた、何があったの?」


普段取り乱すことのない王の態度に王妃も訝しむ。


「…アデルバートに番が見つかった」

「!」








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